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CDOとは?なるには?CIOとの違い・役割・年収・キャリアパス・将来性

デジタル変革の担い手として注目される役職が「CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)」です。オンラインチャネルやデータ活用など情報戦略の重要性が高まるなか国内においてもCDOの登用事例が増えてきました。

この記事では、CDOの仕事内容や役割、CIOとの違い、年収相場、必要とされるスキル・経験・知識などを紹介します。転職や就職など目指す方法やキャリアパスについてもみていきましょう。

CDOとは

さまざまな業界においてデジタルの重要性が高まり続けています。経営課題として「ICT技術の導入」や「電子化の推進」「データ利用の拡大」などを掲げる企業も増えてきました。そのような全社レベルでのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進役となる役職が最高デジタル責任者(CDO)です。

欧米に本社機能を持つグローバル企業では、社内にエンジニアなどのテクノロジースタッフを抱える企業も多くCDOを設置する企業も珍しくありません。

最近では日本国内でも目にする機会が多くなってきたこのCDOという肩書は、実際のところどのような意味を持つのでしょうか。

最高デジタル責任者

CDOとは「Chief Digital Officer」の略で、最高デジタル責任者を意味する言葉です。企業のデジタル部門の総責任者として、CEOや社長などの片腕となって会社のために働きます。

また、デジタル部門だけに留まらず、経営的視点を持って会社全体のデジタル化に貢献するのもCDOの仕事です。

他にもあるCDOの意味

一般的な文脈で使われるCDOは「最高デジタル責任者」を指す言葉ですが、CDOという略称には別の意味もあるので覚えておきましょう。

最高データ責任者

最高データ責任者(Chief Data Officer)もまたCDOと表記されることの多い役職です。会社内で収集し、蓄積したデータの総監督が最高データ責任者です。

個人情報保護やセキュリティなどにも配慮しデータを適切に管理するとともにデータを活用・分析して会社の利益に役立てます。

ビッグデータやデータサイエンスが注目を集めるにしたがって、最高データ責任者への期待も高まってきています。

最高デザイン責任者

CDOが意味するもう1つの役職が、最高デザイン責任者(Chief Design Officer)です。社会が成熟化するなかでデザインの果たす役割が増しており企業内のデザイン全般を統括します。

顧客の求める価値に合わせ、自社の製品やサービスをデザインし適切なユーザー体験(UX)を実現するのが最高デザイン責任者の役割です。

ブランド・マネジメントを担当することもあり、仕事は広範囲に及びます。

CDOとCIOとの違い

CDOとよく混同されるものに、CIOがあります。CIOは「Chief Information Officer」の略語で、最高情報責任者を意味します。情報システム部門の責任者が務めることも多いです。

CIOの仕事は会社内のシステム関連の保守や運用とも関わり、守りのITと言われることもあります。

対して、CDOはデジタルを活用した戦略の立案やサービスの構築など外向けの仕事(攻めのIT)を担当します。

CDOの役割

CDOの具体的な役割は広範囲に及びます。それらの中でも特に重要性が高いのが、次の4つです。

デジタル戦略をまとめる

CDOはデジタルに関する総責任者ですが、デジタル部門だけを担当していれば良いというわけではありません。経営的視点から事業全般を把握し、経営方針や事業戦略に合わせて業務のデジタル化や全社のDX推進について企画や戦略立案をおこないます。

DXの実行に際しては、複数の部署を巻き込み全社的な取り組みとなることも多く、調整が必要な事柄もさまざまです。

そのため、他部署の責任者やメンバーとも連携して、場合によっては外部のコンサルタントやベンダーにも依頼しながら組織横断的にデジタル化を進めます。

事業で利用するデータを整備する

事業拡大のためにもデータ活用やデジタライゼーションは欠かせません。データを収集し、集計・グラフ化することでビジネス上の成果をより素早く正確に把握することができます。

例えば、投資対効果や需要予測、売上・販売金額、購買量など意思決定や投資判断に必要な情報を可視化することができると便利でしょう。そのような自社内に分散するデータを集約してデータ基盤を整えることもCDOのミッションです。

目標達成のキーとなる指標を発見したらモニタリングできるようデータを収集・整備・反映することでビジネスの拡大に貢献します。

データ主導の企業文化をつくる

デジタル時代に企業が生き残るためには、データの活用が欠かせません。しかし、従来の企業の中にはデジタルやデータの重要性を軽視し、変化することを拒む人たちが存在する場合も少なくありません。

そういった場合に新しい時代に対応することを目指し、データ主導の企業文化を育成することもCDOの大切な役割の1つです。

すでにあるデータを加工して利用するだけでなく、必要なデータを収集する仕組みを作るところから企画をおこなうなどマーケティングや新規事業などの知見も求められることがあります。

DXを推進する

デジタル変革のリーダーとして、どのようなデジタル化をおこなうかの具体案を描き全社につたえるエバンジェリストの役割も担います。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現できた際の理想となる状態をイメージして、そこから逆算したロードマップを作成し、それに沿って施策や行動をマネジメントしながら社内の改革を推進する必要があります。

研究段階をへて実証実験やテストなどを繰り返してから世に出る技術もあるため、施策の中には失敗に終わることもあるでしょう。CDOは経営の観点から投資判断をおこない、実行の責任を負います。

CDOを設置する企業

欧米ではCDOを設置する企業が増加傾向にあり、CDOに対する需要が伸びています。日本国内でも設置する企業が増えてきていますが、中でも積極的にCDOを活用し、注目を集めているのが次の3社です。

日本ロレアル

日本ロレアルは、日本で最初にCDOを設置した企業として知られています。日本ロレアルは化粧品の会社で、デジタル時代に合ったカスタマーファーストの実現に向けてCDOを活用し、デジタルメディアへの投資などを積極的に行っています。

SOMPOホールディングス

損保事業で知られるSOMPOホールディングスは、従来の保険会社のスタイルから変化するためにCDOを設置しています。「SOMPO Digital Lab」を設立し、ビッグデータを活用するなどして「安心・安全・健康のテーマパーク」の実現を目指しています。

NTTグループ

NTTは、DXによる業務の効率化や新たな付加価値サービスを提供するために各グループ会社にCDOを設置しています。5G導入などにスピーディーに対応し、環境の変化に合わせたデジタル戦略を策定することがCDOの仕事です。

CDOが必要な理由

欧米に限らず、日本でもCDOの設置が進んでいます。将来的なキャリアパスとして「CDO(最高デジタル責任者)」を目指すのなら、国内でもCDOの設置が進む理由をしっかりと掴んでおくことが大事です。

IT部門に期待される役割が変化している

会社内でITに関わる部門と言えば、情報システム部門(IT部門)です。CDOの設置が進む背景として、このIT部門に求められる役割の変化が挙げられます。従来の情報システム部門では、主に安定稼働を目的に社内システムの導入や保守・運用をおこなってきました。

しかしながら、全社的にデジタル化を進めるためにはそのような守りの視点だけでは不十分です。デジタル変革に対応するにはマーケティングや経営などの目線から全社的なDXを検討し企画する必要があるからです。

これまでIT導入の責任者としてCIOが担っていた役割と比べCDOの果たす役割はより広範囲となります。また、全社的なデジタル化を進めるためには他部門との折衝や調整も必要となってきます。

デジタルとともに組織変革の必要性が高まっている

デジタル化の波は、多くの企業に影響を与えています。旧態依然とした企業のままでは生き残るのが難しい時代であり、時代の流れに乗り遅れないためには会社組織のスムーズな変革が必要です。

デジタル部門の総責任者であると同時に、より大きな権限を持つCDOを設置することで全社的な変革が可能となります。一般的に経営企画や事業部門に比べ、情報システム部門は権限が弱いことが多いです。

そのようなことから他の部門を巻き込んで事業を進めるためには、より強い権限を持つリーダーが必要とされるのです。

デジタルマーケティングへの期待

オンラインでの販売や顧客開拓などセールス・マーケティングでのデジタル活用が進んでおり、新規事業や新たな収益源を考える際にデジタルを無視することはできなくなりました。

そのため、インターネット広告やSNS、YouTubeなどのプロモーションチャネル、CRM・SFAなどのマーケティングツール、データ利活用などデジタルマーケティングの知見を持つCDOが求められる傾向にあります。

また、コロナ過をうけて様々な分野の企業で、オンライン施策が推進されています。会社をあげてDXに取り組むためには、デジタルに詳しい指導者を設置する必要があります。そういった役割に相応しい役職として、CDOが注目を集めているのです。DXやデジタル化の推進が必要とされている限り、CDOの設置は増えていくことが予想されます。

CDOのキャリアと年収

CDOはやりがいのある仕事ですが、CDOを目指す場合に気になるのはCDOのキャリアと年収ではないでしょうか。ここでは、一例をご紹介します。

CDOの年収

CDOが担う役割は重要性を増しており、年収もそれに比例して増える傾向にあります。会社の規模にも左右されますが、CDOの年収で1,000万円は決して高い金額ではありません。大手企業の場合には、年収が3,000万円を超えることもあります。

また、外資系企業や海外企業のCDOポジションのように経営メンバーとして会社の利益に大きく貢献する仕事であれば、年俸額は日本円で数億円相当になることもあるでしょう。

CDOに求められる経験

CDOは高い需要が見込まれている役職ですが、それなりの実績や経歴がない限りは簡単にはなれません。CDOに求められている経験としては、主に次の3つが挙げられます。

インターネット・デジタル変革

CDOはデジタル部門の総責任者であるため、インターネットを利用した事業刷新や大規模なITプロジェクトを成功に導いた経験が必要です。事業会社のなかで責任者として複数の部門を巻き込み、テクノロジー導入やデータ活用をリードした立場の人材は理想的です。

コンサルファームや受託企業側の上級管理職、スタートアップ・ベンチャーで経営メンバーとして事業の運営経験など、CDOとしても十分な能力を備えると見なされる経験を積んでおくことが大事です。全社的なDXを推進するためには、理想を語るだけでなく実現する力がものを言うからです。

マーケティング・ビジネスサイドの知見

顧客と継続的な関係を構築するCRMや営業を効率化するSFA・MA(マーケティングオートメーション)など事業部門でのデジタル推進や製造・物流・購買などビジネス部門での業務知識をいかしたICT導入の経験は評価されます。

CDOに求められる人材要件は企業のフェーズや組織体制により変化します。経営的視点からデジタルシフトや新規事業を手掛けるようなケースでは、会社の売上を上げることがより重要な目標の1つとなります。

そのため、デジタルマーケティングやオフラインとオンラインを統合した施策の実施経験がある方がCDOになるには有利です。積極的にマーケティングの経験を積み、会社の利益アップに役立つスキルを伸ばしましょう。

事業再生・戦略転換の推進

消費者のニーズが多様化し、経済が高度化・複雑化するなか情報戦略やデジタルへの対応が企業活動に及ぼす影響も大きくなっています。情報戦略に乗り遅れることで経営危機や経営破綻に陥ることもあり得るのです。そのような企業での財務改善や組織再編などのターンアラウンド(事業再生)経験は、経営層としてのキャリアに有効でしょう。

世界的なテクノロジーの進化により、変化の激しい時代となっています。そういった世の中の波に乗るためには、大幅な戦略の転換が必要になる場合もあります。CDOは企業のデジタル化を進めるのが役割ですから、全社的な方針転換や改革を行った経験があれば大きな実績と見なされます。

CDOになる前の経歴例

CDOになるためには様々な経験が必要ですが、CDOになった人たちは実際にどのような経歴を辿っているのでしょうか。

事業責任者

あるCDOは、企業の事業責任者という経歴を持っています。エンジニアサイドやビジネスサイドで様々な経験を積んだ後に事業責任者となり、業績やメンバーに責任を持ってその事業を推進したという経歴はCDOとなるための大きなアピールポイントとなり得ます。

経営企画

企業の経営企画において全社的なDX推進に関与した後、CDOに転身したという人もいます。CDOには経営的視点が欠かせません。経営企画に関わることはビジネスにおける俯瞰的な視点を養うのに効果的です。経営企画に参加するチャンスがあるのなら、積極的に加わりましょう。

コンサルティングファーム

CDOの中には、コンサルタントから転身したという人も存在します。CDOの仕事には、経営層に対してデジタル面での長期計画の立案や投資に関するアドバイスも含まれます。そのため、コンサルティングファームでの経営戦略やIT戦略に関するコンサルティング経験を積むのは有効な方法です。

CDOを採用するには

企業からのCDOの需要が多いのに対し、候補者の供給は少ないのが現状です。そのため、優秀なCDOは引く手あまたとなり、採用することは簡単ではありません。優れたCDOとは、複数の豊かな経験と経営者的な感覚を有した存在です。そういった人材を探し、CDOが働きやすいよう、会社内の体制を整えておくことが大事です。また、報酬の面でも十分に配慮する必要があります。

CDOになるには

CDOになるためには経験と知識が必要不可欠ですが、大事なのはそれだけではありません。CDOのタイプの違いを把握し、仕事に役立つスキルを磨いておきましょう。

CDOのタイプ

CDOのタイプは1つではありません。CDOになる前に担当した業務や経験によって、主に次の3つに分類することが可能です。

顧客経験のエキスパート

マーケティングや広告関連に強く、ブランディング能力が高いのがこのタイプです。顧客経験のエキスパートとして、ECやプロダクトなどに最新のデジタルを活用します。また、クリエイティブな人材が多いのがこのタイプの特徴です。

CIO・テクノロジー

情報処理やITテクノロジーに強いのがこのタイプです。IT部門の責任者的役割を担うのはCIOですが、このタイプはCIOの上位の役職となり、更に上の観点から会社のデジタル化を進めます。

事業革新

会社の既存のビジネスモデルを一新し、事業革新を進めるのがこのタイプです。会社に新しい風を吹き込み、場合によってはビジネスを破壊することもあります。このタイプで多いのが、コンサルタント経験者やスタートアップ企業の出身者です。

CDOのスキル

CDOの仕事に役立つ主なスキルは次の5つです。できるだけスキルアップに励み、能力を高めておくのが肝心です。

リーダーシップ

CDOは、CEOや社長のもとで働くことの多い役職です。デジタル部門だけではなく、組織横断的に能力を発揮します。そのため、各部門をまとめ上げるリーダーシップが欠かせません。DXを円滑に推進するためにも、リーダーシップスキルを日頃から養っておきましょう。

戦略策定

CDOは、DXを進めることで会社に利益をもたらすのが役割です。デジタル環境は変化が激しいため、時代の方向性を見極めて戦略を策定する能力が必要となります。また、場合によっては戦略を変更しなければならないこともあるため、戦略策定能力とともに調整能力を磨いておくのも大事です。

実行力

経営目標は、達成しなければ何にもなりません。目まぐるしく変化する状況であっても、目標に向かって的確な指示を与え、結果を導き出す実行力がCDOには不可欠です。

柔軟性

進歩が早いのがデジタル分野の特徴です。そのため、デジタル分野には新しい考え方を有する若い人材が増えており、従来とは違うタイプの人材を扱うための柔軟性がCDOには欠かせなくなってきています。若い世代とも理解しあえるよう、頭は常に柔らかくしておきましょう。

関係構築

CDOは、会社のトップから現場の担当者まで幅広い層と関係を持ちます。場合によっては、異なる立場の人々に挟まれることもあるでしょう。様々な社員との関係を保ち、摩擦を減らして影響力を発揮するには関係構築スキルが必須です。

CDOの将来性

DXの担い手として関心を集めているCDOですが、CDOの将来性はどうなっているのでしょうか。また、将来的にCDOが必要ではなくなる日が来るのでしょうか。

急速なデジタル化が新たな牽引役を求める

世界的に急速なデジタル化が進んでいます。加速する流れに対応するための新たな牽引役を多くの企業が求めており、その役割を担うのがCDOです。そのため、CDOの将来性は比較的明るいと言えるでしょう。

攻めのIT責任者としての期待は高い

DXを円滑に進めるのには、守りのIT責任者と共に外側に向かって力を発揮する攻めのIT責任者が必要です。攻めのIT責任者と言えばCDOであり、CDOに対する期待は高まるばかりです。

CDOが不要になる日は来る?

CDOの役割は期間限定とも言われます。それは責任者としてデジタル化を達成するというミッションによるものです。つまり、円滑にDXを推進した先の話です。DXを成し遂げるという目標が設定される限りCDOが不要になることはありません。

これは逆に言えば、天下統一を果たしたあとの兵法家のような立場といえます。DXが達成できればCDOは不要になりうるということです。とはいえ、デジタル化は一朝一夕にはできません。CDOが不要になる日はそんなに早くは来ないだろうと考えられます。

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