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VPoEとは?CTOとの違い・仕事内容・年収・導入企業・キャリアパス・将来性

最近注目されるエンジニアの職務に「VPoE(VP of Engineering)」があります。CTOが技術の責任者であるのに対して、VPoEはマネジメントの責任者です。チームメンバーの採用や評価などを通してエンジニア組織の成長と開発体制作りに貢献します。

この記事では、VPoEの役割や年収、CTOとの違い、キャリアパス、将来性などについて紹介します。未経験から挑戦する方法や転職・就職についてもみていきましょう。

VPoEとは?CTOとの違い

エンジニアにも、様々な役割があります。規模が大きく複雑な工程が必要になるプロジェクトほど、役割の異なるエンジニアがプロジェクトメンバーに加わることになるものです。

エンジニア達を束ねる責任者ともいえるのがVPoE(Vice President of Engineering)ですが、技術部門の最高責任者としてはCTO(Chief Technology Officer)の存在もあります。

VPoEとCTOでどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。

VPoE(Vice President of Engineering)の役割

VPoEは、マネジメント責任者としてエンジニアリング組織や技術部門を統括する役目を持っています。最終的な目的はプロジェクトの成功やサービスの発展ですが、エンジニアの採用や育成に責任を持つトップとして組織の運営にたずさわります。

具体的にどのようなことをするのか、以下で紹介します。

VPoEとは

VPoEは、いわばエンジニア組織を構築するチームビルダーです。エンジニアの採用・育成・評価・配置などに責任を持ち、効率的なチームビルディングをリードしていきます。

面接など採用に関わる細かい業務や仕事の評価はチームメンバーがおこなうとしても、採用・教育・評価の方針を決定したり問題発生時に責任をとるのはVPoEです。

エンジニアの配置や体制によってプロジェクトが成長するか否かがかかっていますから、チーム内のメンバーには常に目を配っておく必要があります。

エンジニアチームの成長を実現する

VPoEという役割が普及するようになったのは、エンジニアチームを活性化させてより効率的に事業の成長を達成するためです。質の良いエンジニアをチームに参加させることでサービスの発展が期待できますし、より高い成長率を求めるには、いかにチームメンバーを効果的に連携して動かすかがポイントになってきます。

VPoEは1人1人のエンジニアの適性や志向を見定めて適材適所に配置します。駆け出しや新人にも必要な教育を実施して才能を発揮させることで、チームに最大限の貢献をさせる責任があるのです。

他部署のリーダーとの連携

プロジェクトには、複数の部署が関わっています。目的達成のために他部署のリーダーと連携するのも、VPoEの役割です。エンジニアチームのメンバーには、それぞれの課題があります。

課題に取り組むにあたって他部署と協力することもありますが、メンバーが個別に他部署と交渉するのでは非効率でトラブルの発生にもつながりかねません。

そこでVPoEが代表して他部署のリーダーと交渉し、プロジェクト全体が前進するように働きかけるのです。

CTO(Chief Technology Officer)の役割

VPoEの登場によって、CTOの役割にも変化が見られています。従来のCTOは技術とエンジニア組織の両方の責任者を兼ねるケースが多かったのですが、VPoEがエンジニア部門の責任を担当するようになりCTOの責任は軽減されてきているのです。

CTOは技術責任者

VPoEがエンジニア組織の責任者であるのに対して、CTOは技術に関する最高責任者です。技術戦略や方針決定に責任を持ち、組織やサービスが成長するよう働きかけます。VPoEは人専門、CTOは技術専門と区別するとわかりやすいです。

チームビルディングに関するタスクを引き受けるVPoEにはマネジメント力が求められますが、技術の責任者であるCTOには技術力が求められます。そのため、CTOにはプレイヤーとしても高い水準の実績が必要なのです。

経営視点での技術的な意思決定

技術的な意思決定をするのがCTOの役割ですが、その視点は経営面を重視していることも大切です。利益をもたらしてくれる技術の発展はもちろんのこと、コストのバランスにも配慮した技術戦略をおこなわなければなりません。

そのため、CTOには技術力に加え戦略的な目線や経営を優位にすすめるという視点が必要でしょう。効率のよい技術をマネジメントするのが、CTOにかかっている責任です。

VPoEがいるとCTOは技術領域に集中できる

CTOの仕事内容は、技術戦略や方針を立てることから開発手法・フローを考えることまで幅広いのが特徴です。各種技術の選定をおこなうにあたって、最新技術を調査する必要も出てきます。

開発環境を整えたり、品質管理をするのも仕事のため、エンジニアチームの面倒まで見なければならないのはかなりの負担です。

VPoEが存在することによってCTOの負担は減り、本来の技術領域に集中できます。それにより、プロジェクトの発展にも期待が持てるのです。

VPoEの年収

VPoEはエンジニアマネジメントの最高責任者ですから、年収にも期待できます。一般的なエンジニアの平均年収に比べると、2倍を上回る年収が平均的です。働くプロジェクトの規模によっても差が出てきますが、エンジニアの平均年収が400万円としたら800万円以上は相場と見てよいでしょう。

因みにCTOの年収相場はVPoEの給与水準を上回る会社が多く、大企業では数千万円クラスの年収ということもあるようです。

VPoEが注目を集める理由・背景

CTOが兼任することも多かった役割は、なぜVPoEにとって代わりつつあるのでしょうか。VPoEが注目を集めている理由について、見ていきましょう。

組織のあり方の変化

従来の会社組織の形は、上長をトップに据えたピラミッドのような段階構造です。その中で決められたスケジュールや手法を守ることにより、成長を果たしてきたのです。ところが社会では顧客ニーズが多様化し、従来の方法で成長できるとは限らなくなってきています。

顧客ニーズのスピーディーな移り変わりに敏感に対応し、こまめに検証・仮説を繰り返して最善策を見つけなければなりません。そのために必要なのが、自立型組織です。自立型組織では、上長の指示・命令なしでも個人が主体的に動くことができます。

リーダーシップの変化

自立型組織のトップには、従来の管理役以上にチームと個人がどのように行動すべきか方向性を示す役割が求められています。どのように行動すべきかといっても、単純に命令を下すだけでは従来と変わりありません。

自立型組織では、リーダーがチーム全体の責任を持ちながらもメンバー1人1人が活躍できる組織運営をリードする必要があるのです。このようにリーダーシップの概念が変化したことも、VPoEの重要性に影響しています。

VPoE(Vice President of Engineering)の仕事内容

ここでは、VPoEが仕事上でどのようにエンジニアのマネジメントをするのか具体的に紹介します。

エンジニアが活躍する環境をつくる

エンジニアが活躍するためには、働きやすい環境を作らなければなりません。エンジニアにとっての働きやすい環境とは何かから考え、実際の仕組みや制度として形にして定着させるまでがVPoEの仕事です。業務を効率よくおこなうためのツール導入、マシンスペック、服装や勤務時間なども環境を整えることに含まれます。

成長ややりがいを感じられることも重要ですから、勉強会の設定や良いリーダーにつけて学習の機会を与えることもマネジメントの1つ。メンバーが達成感を得られるように、目標設定のサポートをするのもVPoEがおこなえる環境づくりです。

メンバーに役割と責任を与える

エンジニア組織を効率よく運営するには、ひとりひとりのメンバー自身にも、責任を果たすことの大切さを教えなければなりません。

チームの役割とメンバー個々の役割を明確にし、プロとして成果を出してもらうように導くのがVPoEの仕事です。環境を整えるだけではなく、メンバーとの対話を通して組織作りに貢献することもミッションに含まれます。

1on1など定期的に面談を実施してメンバーの意識とチームの目的の整合性を保つことは与えられた環境のなかでも責任を持って仕事に取り組むことにつながります。そのように、エンジニアの潜在能力やモチベーションを引き出し最大限の力を発揮させるのも、VPoEの重要な役割といえるでしょう。

エンジニアの成長を支える

個々のメンバーが成長することがエンジニア組織の成長につながります。そのため、エンジニアの成長を助けることも、VPoEの仕事のひとつです。書籍の購入やテクノロジーイベントへの参加推奨など教育機会を提供するとともに、指針となる方向性の提示やメンタリングを実施します。

メンバーが抱える課題や悩みをリーダーが汲み取れるよう、定期的な機会を設けることも大切です。課題の解決を手助けすることで、エンジニアが伸び悩む心配はなくなるでしょう。リーダーがヒアリングしたメンバーの状況からVPoEが客観的な評価をすることも、エンジニア自らが課題に立ち向かって成長を目指す姿勢につながります。

VPoEを導入する企業・会社組織

VPoEを導入している組織について紹介します。それぞれの成長にVPoEの導入がいかに影響しているか、人物像など参考にしてみてください。

株式会社メルカリ

メルカリといえば、日本最大級のフリマアプリを運営する企業です。そのサービスは海外にも展開され、偉大なミッションを着々と進行させています。組織内でエンジニア個人が強みを活かせる環境をVPoEとCTOとの分業体制で整えているからこそ、国内最高レベルの開発力を持ち続けていられるのでしょう。

メルカリでVPoEに就任していた是澤太志氏は、次に紹介する株式会社SpeeeでもVPoEの経験を積んだ人物です。もともとリードエンジニアをしていた経験を活かし、10社以上のIT企業でマネジメント職に就いたといいます。

株式会社Speee

株式会社Speeeは、広告配信や不動産売却支援などのサービスで知られる企業です。アドテクノロジーは広告業界でもエンジニアリングが重要な分野です。広告会社のエンジニアといえば労働時間が長くなりがちな職業ですが、Speeeではフレックスタイムの導入により自由に働きやすい組織になっています。

エンジニア同士がお互いを評価しあうシステムも、各人の成長につながっている試みの1つです。そのような体制でVPoEを務めるのが、専門執行役員も兼任する大場光一郎氏です。

株式会社ROBOT PAYMENT

ROBOT PAYMENTは、クレジットカードなどの決済代行や決済サービス、請求管理ロボを提供する会社です。ROBOT PAYMENTには2020年1月からCTO/VPoEとして和賀勝彦氏がジョインしています。和賀勝彦氏は、ヤフー株式会社でYahoo! DMP技術営業部門統括や株式会社カオナビのCTOを歴任した人物です。

ヤフー株式会社

約2800名のエンジニアが在籍し、国内有数の規模でエンジニア組織を運営するヤフー株式会社でも2018年より役職としてVPoEが配置されています。ヤフーでは、本部長にあたる職責を持つ人材がVPoEを担い、デザイナーを含むエンジニア組織のマネジメント全般に責任をもっています。技術に関する責任者は「テクニカルディレクター」として役割が設けられています。

Repro株式会社

モバイルアプリのマーケティングツールでグローバルな成長を遂げているのが、Repro株式会社です。世界66ヶ国7,300以上のアプリへの導入を支えているVPoE三木明氏は、自称ジョブホッパー。求人欄で気軽にコミュニケーションしてきてほしいと訴える姿勢は、VPoEの鑑ともいえるかもしれません。ジョブホッパーと称する由来は、営業職やスタートアップの立ち上げ、エンジニアマネージャーなどの幅広い経歴にあります。

Reproでは共同創業者でもありますが、コミュニケーションスキルがVPoEに役立つ能力だと気付かせてくれる人物です。

株式会社アカツキ

株式会社アカツキのミッションは、世界をカラフルに輝かせること。アカツキが開発したゲームやライブエクスペリエンス事業に触れ、心がときめく体験をした人もいるでしょう。

アカツキでVPoEに就いているのは、日立研究所からアカツキのエンジニアに転職した湯前慶大氏です。VPoEをしながらもゲーム開発の最適化手法を追求するプロジェクトマネージャーを務め、多彩な活躍をするVPoEの1人として注目されています。

ラクスル株式会社

激安ネット印刷で知られるラクスル株式会社では、悩まないエンジニア組織づくりを目指しています。サービス自体が新しい挑戦なだけに、エンジニアは型にはまっていない課題に取り組まなければなりません。そんなエンジニアをリードするVPoEを積極導入しているのも、ラクスルの新しい取り組みです。

大手IT企業で働いてきたキャリアを持つエンジニアが難しくて面白い開発をし続けるために、新しい技術に興味を持ち続けられるVPoEが求められています。

VPoEになるには

実際にVPoEを導入している企業を見てみると、多彩な実績やキャリアを持っている人が多いことがわかります。だからといって、自身のキャリアと比較して自信をなくすことはありません。VPoEになるにはどうすればよいのか、紹介します。

エンジニアキャリアを積みマネジメント力を磨く

今回紹介したVPoEを務める人物の多くが、エンジニアとして順調にキャリアを積むことでVPoEへと到達しています。エンジニアのマネジメントを担当するのがVPoEですから、エンジニアの苦労や悩みを自身で体験しておくことはためになります。エンジニアを続けることでチームリーダーとなり、マネジメント力を磨いていくのもよいでしょう。

VPoE候補を募集する求人に応募する

VPoEの存在が注目され、エンジニア組織に導入しようとする企業が増えてきています。Repro株式会社のように、採用担当でもあるVPoEが気軽に問い合わせてほしいと呼びかけている例もあります。キャリアや実績不足ではないかと迷っても、VPoE候補の求人に応募してみることで見えてくる実情もあるでしょう。

中途採用やキャリア採用などの転職活動はそのポジションにどのような人物が求められているのかを募集企業から直接聞けるチャンスです。

自分で起業する

VPoEを募集している企業にいまひとつ魅力を感じられない、採用情報を探しているだけでは時間がかかると思ったら、自分で起業してしまう手もあります。スタートアップ企業の立ち上げに関わった経験を活かしてエンジニアから経営ポジションへの転身を果たしたり、会社の創業メンバーとしてVPoEを務めているという人もいるくらいです。

これからのVPoE、将来性

IT業界ではエンジニアの不足が続いていますが、はたして将来性のある職業なのかと気になっている人もいるでしょう。VPoEの将来性についても、触れておきます。

開発体制のあり方は多様化が進む

エンジニアの需要は、従来からの開発体制からさらに発展したスタイルになるのではないかと考えられています。開発を社外に委託していた企業がエンジニアを社内に置くようになったり、外資系企業の進出が盛んになるなど、エンジニアの需要が高まるだけでなくリモートワークのように多様な環境で働くエンジニアが増えてくることでしょう。

エンジニアが魅力と感じる環境作りと文化の醸成

VPoEには、エンジニアを採用するだけでなく定着させる使命もあります。しかし、これと決まった手法があるわけではなく、エンジニアが魅力を感じられる環境をいかに作るかが課題となるでしょう。作った環境をしっかり定着させて、社内の文化とする必要もあります。

文化を社外へ発信してブランディング

社内で作られた文化は、社外に発信することでブランディングされます。ブランディングされた企業の文化が採用候補者に魅力的に映れば、優秀で有望な人材を確保しやすくなるでしょう。採用の段階から、VPoEが組織に果たす責任は始まっているのです。チームビルダーとしてVPoEの働きに期待する企業は、増えていくでしょう。

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