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テックリードとは?なるには?リードエンジニアの役割・仕事・スキル・年収・将来性

リードエンジニアやテクニカルリードとも呼ばれ、優れた技術でエンジニアチームを引っ張る役職に「テックリード(Tech Lead)」があります。DXと呼ばれるデジタル変革の必要性が高まるなか、ソフトウェア開発をおこなうエンジニア組織を中心に求人需要が急増しています。

この記事では、テックリードの役割や仕事内容、必要なスキル、平均年収、将来性など紹介します。それに加え、未経験からの転職方法やキャリアパスについても解説します。

テックリードとは

テックリード(Tech Lead、TL)とは、プロジェクトやプロダクトにおける技術面でのリーダーのことです。「リードエンジニア」「テクニカルリード」と呼ばれる場合もあり、一般的に技術が秀でているエンジニアがつく役職です。ソフトウェアの開発を進める時は、チームで行う場合が多いです。そして、そのチームを牽引するテックリードは、「リーダー」「組織の窓口」となりシステムの開発に貢献するのです。

リーダーとしてのテックリード(リードエンジニア)

テックリードはチーム内での技術リーダーとして、チームが書くコードの品質を担保するための指示やテクニカルな事柄について助言をおこないます。メンバーの様子や能力をみて適切な仕事を割り当てる、開発フローを整備し技術的なビジョンを示すなど、エンジニアリングの生産性向上をサポートする場合も多いです。チーム内で作業の遅れや不安なことがあれば、テックリードが解決するための対策や行動を取ります。

組織の窓口としてのテックリード

エンジニアチームのリーダーとして、他部署や別のチームなど組織同士をつなぐ窓口になることも期待されます。エンジニア以外のビジネス部門とも調整や話し合いもおこなうため、コミュニケーションや意見交換などでは、技術をわかりやすく伝える工夫が必要です。開発の仕事だけでなく、組織の窓口としても活躍しているのです。

テックリードの役割

テックリードには、どのような役割があるのでしょうか。具体的には、「コード品質の向上」「チームの生産性」「アーキテクチャ・設計」などです。これから、テックリードの役割について解説します。

コード品質の向上

テックリードはチームで作るソフトウェアに対して、あるいはメンバーが書くコードの品質に対して責任を負います。高品質なコードを書けると開発のスピードが向上し十分な納期を確保できるだけでなく、メンテナンスの手間が削減されシステムの安定稼働や継続性にも寄与するのです。

コードの可読性が高いとセキュリティやパフォーマンスを担保することにもつながります。開発チームのメンバー同士がコードに対する認識を統一するには、テックリードが主体となり一貫性のあるコードを作っていく必要があります。

チームの生産性を高める

テックリードにはチームの生産性を向上させる役割もあります。エンジニアチームのメンバーが業務しやすい環境を作り、改善点がある時には対策を考えるのです。また、ミーティングへの参加や事前確認をおこないビジョンを共有すると、実装開始後の待ち時間や手戻りを減らせるでしょう。事前に「技術的に可能か」「実装難易度が高すぎないか」「既存機能と似ていないか」などを調べ、効率良くチームが働ける環境を作っていきます。

アーキテクチャ・設計

アーキテクチャや設計は、テックリードを含めたさまざまなエンジニアが行います。その際、チーム内が納得して行える環境を整備するのがテックリードの役割です。最終的に決定したことは、テックリードが責任を持ちます。

テックリードと他の職種・役職との違い

テックリードはエンジニアの技術リーダーを指しますが、他の職種や役職との違いはどこにあるのでしょうか。ここでは、「サービスリード」「ITアーキテクト」「エンジニアリングマネージャー(EM)」との違いについて説明します。

サービスリードとの違い

サービスリードは、開発したプロダクトについて「ユーザーは満足しているか」を判断して改善や改修の要望をリードする役割です。技術面のリーダーであるテックリードと協調して、より満足度の高いサービスの提供に努めます。テックリードはサービスリードから渡された満足度調査や意見書などを参考に、次回の開発内容や構築工程をチーム内で連携します。つまり、サービスリードは、テックリードへ改善点のアドバイスや要望を伝える役割ともいえるでしょう。

ITアーキテクトとの違い

テックリードとITアーキテクトの違いとして、プロジェクトにおける役割の違いがあげられます。あくまでエンジニアチームの一員として開発を行いながらアーキテクチャの設計や技術選定をおこなうテックリードに対して、ITアーキテクトは、ITシステムの企画や設計がメインの業務なのです。ITアーキテクトは、システムの上流を定義する役割として、目的に最適なシステム構成などを考えます。ITアーキテクトが策定した仕様や要件のもとで、業務を遂行するテックリードも少なくないでしょう。

エンジニアリングマネージャーとの違い

エンジニアリングマネージャー(EM)は、エンジニアのチームをマネジメントしている人のことです。テックリードの業務内容とも重なる部分は大きいですが、エンジニアリングマネージャーはより人的な管理を担当します。例えば、チーム内に入るメンバー決めや役職決めなどをして、事業の成功や経営視点からマネジメントをおこないます。テックリードになる人はエンジニアリングマネージャーから指名される場合も多く、エンジニアリングマネージャーが決めたチーム内で仕事をしていくのです。

テックリードの業務内容

実際にテックリードはどのような業務をしているのでしょうか。例えば、「設計」「意思決定・優先順位決め」「チーム内でのメンター・相談役」「コードを書く」などです。これから、テックリードの業務内容について紹介します。

設計

チームのメンバーが理解できるように、技術におけるビジョンを示すための設計をします。例えば、影響の出やすいライブラリ・フレームワークの選定や言語の選択など、メンバーが業務しやすくなるための設計が大切です。

意思決定、優先順位決め

基本的に意思決定はメンバーで行いますが、最終的な判断や優先順位を決めるのはテックリードです。メンバーと話し合いながら、テックリードが主体になって意思決定や優先順位決めを進めていきます。それらの責任もテックリードが負うため、適切な決定をするための知識や経験が必要です。

チーム内でのメンター、相談役

チーム内で不満やトラブルがある時には、メンターとして相談役になります。メンバー同士のトラブルや業務に対する不満を聞き、解決するためのアドバイスや行動を取るのです。もし、業務に対する不満がある時には、他の部署やチーム・マネージャーなどに意見を伝え、改善に向けて動きます。

コードを書く

コードを書くのもテックリードの重要な業務です。チームにおける技術面でのリーダーになるため、主体となってコードを書いていきます。コードの方針や品質についても考え、適切なコードが作れるチームを目指します。

テックリードに必要なスキル

テックリードを目指す場合、必要なスキルを理解しているといいでしょう。これから、必要なスキルとして「テクニカルデザイン」「コードレビュー」「見積もり」についての説明をします。

テクニカルデザイン

テクニカルデザインとは、企画や立案を含むプロダクトに対し、技術かつ専門的な工夫をすることです。そのスキルがあれば、チーム内で作るプロダクトが成功しやすくなります。テクニカルデザインのスキルを得るためには、デザインやプログラミングなどの知識や技術を習得しているといいでしょう。テクニカルデザイナーとして専門的に働いている人からアドバイスしてもらうのも手段です。

コードレビュー

コードレビューを行い、プロダクトに問題がないか確かめるスキルも大切です。コードレビューの読み進め方も理解できているといいでしょう。コードレビューに対するスキルを身に付けるためには、他の開発者が作ったメソッドを読む方法があります。

見積り

タスクに関する見積りを出せるスキルも大切です。タスクの工程数を適切に計算し、どのような流れで行うかを設計します。また、タスクの複雑さなどを見積り、チームのメンバーに適切な業務を割り当てることも重要です。

テックリードになるには

テックリードになるためには、どのような流れを踏めばいいのでしょうか。これから、テックリードになる方法や流れを説明します。

エンジニアとして就職・転職する

エンジニアチームのメンバーからテックリードになるには、優れた開発スキルと幅広い技術知識を持っているとマネジメント層に認められる必要があります。すでにエンジニアとして働いている場合は、業務内や業務後の時間を活用してエンジニア能力やITスキルの向上につとめましょう。テックリードは一般的なエンジニアよりも技術面で優れている必要があるため、初心者が最初からテックリードとして採用されることはほぼありません。未経験からテックリードを目指す場合も、まずはシステムエンジニアやプログラマーとして就職する必要があります。そのため、最初はソフトウェアエンジニアとして、知識や経験を積むことが大切です。

技術でエンジニアチームをリードする

テックリードはエンジニアのリーダーとして、技術面でメンバーをリードできる必要があります。積極的にスキルを鍛え、チーム内でも重要な業務を担当する役割を目指しましょう。OSS活動の実績が認められる場合や転職などで異なる環境での開発業務が評価されるシーンもあるでしょう。いずれにせよテクノロジーを探求してチームをリードできる立場になると、テックリードになれる可能性が高まります。技術やコミュニケーション能力など、さまざまな面からリーダーに向いているかどうかが判断されるのです。

設計やコードレビューのスキルを磨く

設計やコードレビューについてのスキルが必要になるテックリードになりたいなら、それらの知識や経験を積むことが大切です。現在の職場にテックリードがいるなら、その仕事を見習いながら業務上のサポートができるようにスキルを身につけていくといいでしょう。スキルを磨くためには、経験を積むだけでなく、書籍を読んだり講習会に参加したりするのも手段です。

テックリードの年収

テックリードの年収に関する相場の目安は、約500万円~600万円です。リードという呼び名がつく以上通常のエンジニアよりは給与が高くなる傾向にあります。ただし、賃金の相場は企業ごとに異なる場合があり、テックリードとしての明確な平均年収は出ていません。しかし、ソフトウェアエンジニアの年収が500万円前後で、テックリードとしての手当が入ると、それより高くなります。また、マネージャーの平均年収は670万円ぐらいになるため、それよりも少ない金額と考えられているのです。

テックリードのキャリアパス

テックリードのキャリアパスには、「CTO」「VP of Engineering」「エンジニアリングマネージャー」などがあります。これから、キャリアパスの詳細について説明します。

CTO

CTOは企業内における「最高技術責任者」です。エンジニアとしての技術が認められ、チームだけでなく組織も引っ張る役割になります。CTOになると企業の上層部や役員であるボードメンバーに分類され、メンバー採用やビジネス戦略・予算など、さまざまな事業経営の意思決定にも参加することが特徴です。テックリードになった人の多くは、キャリアパスとしてCTOを目指しています。

VP of Engineering

VP of Engineering(VPoE)は、エンジニアの組織を成功させるためのチームビルダーです。組織の課題に取り組んだり、メンバー内の問題を解決したりします。また、マネジメントや採用・育成など、メンバーに寄り添うことが多いです。他部署のリーダーと話し合い、上層部との連携や話し合いにも参加します。そのため、CTOと仕事内容や立ち位置は似ています。VPoEとCTOの両方を配置する企業もあり、その場合は、各自の仕事を分担して、業務上の負担や責任を減らしているのです。

エンジニアリングマネージャー

テックリードとして技術面でのリーダーをした後は、エンジニア部門全体のマネジメントができるエンジニアリングマネージャー(EM)を目指します。エンジニアリングマネージャーは、組織内で人数が少ないため、就けるのは数人です。さまざまな知識と経験が必要で、テックリードとして働いた経験を活かせます。

テックリードの将来性

テックリードを目指す場合、将来性についても理解しているといいでしょう。需要が高い職種とされる理由や今後の将来性について解説します。

開発規模の拡大や多様化に伴い需要が高まる

ITなどの進化に伴い、開発するプロダクトの数や種類・開発の規模が大きくなっています。また、アプリやソフトウェアなど、多様化するニーズに応えるためには、多くの組織やチームが必要です。テックリードはチームに1人設定します。つまり、組織やチームが多ければ多くなるほど、テックリードも必要です。よって、需要が高まっている仕事とされています。

テックリードはキャリアパス形成において有効

CTOやエンジニアリングマネージャーなど、指示を出す立場にいる人はテックリードを経験しています。テックリードになれば、さまざまなキャリア形成で有効になるのです。また、技術面だけでなく、コミュニケーション能力が上がり、人脈も拡大します。よって、キャリアパスで他の職種に就いた時にも役立つでしょう。

やりがいのあるポジションとして認知が広がる

役職に就いているという認識から、やりがいを感じられるのもテックリードのメリットです。重要なポジションとしての認知も広がり、目指す人も増えています。また、マネージャーとは異なり、実際に設計や見積り・コードを書くなど、持っている技術を活かせることが特徴です。よって、やりがいのある仕事をリーダーとして行えます。

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