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2019/08/08

機械学習エンジニアとは?仕事内容、スキル、将来性を徹底解説

AI開発に携わる仕事としてAIエンジニアが人気を集めています。今回紹介する「機械学習エンジニア(MLエンジニア)」は、AIエンジニアに分類される職業のひとつです。企業からの需要が高く、将来的に年収アップを目指せるため、未経験からのキャリアチェンジや今後の転職・就職を考えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、機械学習エンジニアの仕事内容や年収、未経験からのキャリアパス、スキル要件、需要と将来性について説明します。

機械学習エンジニアとは

機械学習エンジニアは、AIに関連する職業のなかでもとくに機械学習(Machine Learning:ML)の実装や開発に携わる技術職です。機械学習では、反復的な学習により特定の処理や予測などを行うAIを開発します。その際に、AIを動かす処理をプログラムで組む必要があります。しかしながら、そのすべての処理をエンジニアがコードで指定するわけではありません。AIがデータを解析し識別や予測する処理はプログラムで詳細を指定するのではなく、AIに与えるデータとアルゴリズムにより調整を行います。

機械学習エンジニアの役割

機械学習エンジニアは、AIに解析させるデータの特徴を読み解きながら、目的に応じた機械学習のアルゴリズムを採用し、解析結果の評価や調整を繰り返すといった仕事に取り組みます。また、AI技術には「ディープラーニング(Deep Learning:DL)」と呼ばれる機械学習をさらに発展させた技術もあります。このディープラーニングを実装する際にも、機械学習エンジニアが活躍します。モデルやアルゴリズムに関わる仕事のほか、AIが動作するシステムの設計・構築、データの前処理・クレンジング、APIや基盤整備、追加機能の開発などを行います。

機械学習を利用した予測モデルや最適化、分類といった手法は、金融、保険、マーケティング、製造、流通・小売、サービス、医療など様々な業界で利用が始まっており、それらを実際のシステムやサービスに落とし込む人材として機械学習エンジニアの需要はますます高まっています。

人工知能と機械学習とディープラーニング

ここでは、あらためて「機械学習」と「人工知能(AI)」の関係性について説明します。機械学習エンジニアの仕事内容を理解するために、人工知能・機械学習・ディープラーニングという3つの用語の意味についても押さえておきましょう。まずAI、つまり人工知能とは「人間と似た思考や振る舞いを機械(コンピュータ)にさせようとする試み・技術」のことを指す言葉です。

次に、機械学習では、エンジニアがすべての動作をプログラムで明示的に指定するのではなく、人間が指針となるアルゴリズムとデータを与えコンピュータがデータを読み取ることで法則やパターンを見つけ出し、アルゴリズムをモデルとして発展させます。データから法則を学習したコンピュータは、未知のデータに対しても法則を適用することが出来るため、特定のタスクに対する処理が可能な人工知能(AI)の一部といえます。

そして、ディープラーニングは、人間の神経回路を模したニューラルネットワークを発展させて、人間の与える指針なしにコンピュータ自体がデータから学習していく技術のことです。データから学習するAIというコンセプトは機械学習と同様のため、ディープラーニングは機械学習のひとつとして位置付けられています。

まとめると、この3つは 人工知能(AI) > 機械学習 > ディープラーニング という入れ子の関係になっています。機械学習はAIのひとつといえますし、ディープラーニングは機械学習を発展したものです。そのため、AIは機械学習やディープラーニングも含む広い概念であり、統計学やモデリングのための理論なども、AI技術の一部といえます。

AIエンジニア・データサイエンティストとの違い

機械学習エンジニアと関連する職業に、「AIエンジニア」と「データサイエンティスト」があります。AIエンジニアはAIに携わるエンジニア全般を指す言葉のため、これまで紹介してきた機械学習エンジニアもAIエンジニアに含まれます。ただし、会社によってはAIの研究職を「AIエンジニア」、開発職を「機械学習エンジニア」と担当業務によって区別する場合もあります。

データ分析職の代表であるデータサイエンティストは、一見するとAIと関係なさそうですが、機械学習エンジニアの仕事と不可分な点もあり、企業の募集する「データサイエンティスト」求人の多くは、仕事内容で見ると「機械学習エンジニア」といわれるほど同じに扱われる職業です。そのように、データサイエンティストのなかにも機械学習/ディープラーニングの専門家がおり「AIエンジニア」と呼ばれることがあります。

もともと、海外で「Machine Learning Engineer」という職種名が使われるようになり、日本でも「機械学習エンジニア」「MLエンジニア」という呼び名を使用する企業が増えてきていますが、職務定義は企業によりことなるため転職や就職の際は、求人情報や募集要件から仕事内容を確認して応募するようにしましょう。

機械学習エンジニアの年収

さまざまな業界から求人需要のある機械学習エンジニアは年収面でも優遇されています。Indeedの職種別平均給与によると国内の機械学習エンジニアの平均年収は626万円と一般的なITエンジニアよりも高い報酬になっています。AI開発の本場アメリカでは、さらに高収入で求人が募集されており、Glassdoorのデータによるとアメリカの機械学習エンジニアの年収はおよそ1400万円とされています。日本でも、人材の獲得競争が始まっており、希少なスキルを持つ人材はさらに高給が期待できる職業といえるでしょう。

未経験から機械学習エンジニアになれる?

エンジニア・プログラマーとしての実務経験がない未経験者が機械学習エンジニアになることは不可能ではありませんが、難易度は高いです。機械学習エンジニアに必要な技術は多岐に渡るうえ、AIのトレンドの変化が激しいからです。未経験者がプログラミングや数学知識の習得などと並行して、企業から需要があるトレンドに沿った技術を習得することは容易ではありません。周囲に機械学習エンジニアやそれに近い分野の技術者がおり、アドバイスを受けられる恵まれた環境になければ、機械学習エンジニアになるのは難しいといわれます。

逆に、アプリケーションやインフラ・データベースなどの開発経験をもつITエンジニアであれば、機械学習エンジニアへの転職やキャリアチェンジの可能性は高くなります。その場合は、機械学習エンジニアの中でも、基盤構築などのインフラ寄りの業務や運用・保守に関する仕事から始め、徐々により高度な業務へとステップアップしていきます。

ただし、現在AI人材が非常に不足しておりチャンスもあります。最低限の知識さえ持っていれば、駆け出しの機械学習エンジニアでも雇いたいと考えている企業が増えているからです。ポテンシャルの高さを証明できれば、企業の仕事を通じて経験を積みながら、機械学習エンジニアとして活躍できる道はあります。

機械学習エンジニアの仕事内容

実務経験が豊富な機械学習エンジニアは貴重な人材です。そのため、AI開発や機械学習関連プロジェクトの統括責任者として仕事に取り組むことも多いです。その場合には、専門的な技術とプロジェクトマネージャーとしてのスキルが求められます。また、プロジェクトの目標や方向性などを決める舵取り役として、AIやディープラーニング、ビッグデータなど広範囲に渡る知識も必要とされます。

以下では、機械学習エンジニアの業務内容を紹介します。

機械学習モデルの構築と検証

機械学習のアルゴリズムを選定し、モデルを作成する業務は、機械学習のワークフローのなかでデータ探索の次に位置する工程です。分析結果から選択したアルゴリズムが目的にあった手法なのか、未知の情報に対しても精度を出せるかなどの検証を行うことが必要です。精度の高いモデルを構築するためには、特徴量エンジニアリングやハイパーパラメータ調整などの試行錯誤が必要となります。また、プロジェクトマネージャーの役割を担う機械学習エンジニアにとって、上流工程における意思決定に際して、最新の手法を検証して実装するスキルは必須といえます。

機械学習システム・サービスの設計・開発

機械学習エンジニアのメイン業務として、機械学習を利用したサービス開発や機能改善などの仕事があります。例えば、Webサービスの運営事業者では、顧客データやサイトの訪問ログなどの情報を保有しているため、それらを利用したレコメンデーションや不正ユーザーの検知などに取り組みます。また、開発者向けの機械学習サービスとして、GoogleのTensorFlowやCloud ML Engineなどがあります。これらを設計・開発できるようなエンジニアは非常に高度な専門家といえるでしょう。

機械学習の基盤構築や運用・保守

機械学習に利用するデータは、業種によってさまざまです。EC事業の場合は、ウェブサイトに掲載する商品情報や顧客の注文履歴、アクセスログなどが主な情報になるかもしれません。データウェアハウスなど分析基盤に情報を集約する企業もあるでしょう。また、機械学習を実行するためにはデータ解析や計算処理を行う実行環境が必要です。その際に開発者や利用者と共有して開発できる環境にすることが重要です。たとえばWeb APIとして呼び出せるようにクラウドを用意して引き渡す設計にしたり、バッチ処理のコードを書いて運用やデプロイを自動化するなどです。そのようなインフラや運用・保守についても機械学習エンジニアの仕事のひとつです。

論文や最新技術の調査、研究

AIに関する技術は日々進化しています。そのため、発表された論文に目を通したり、最新技術を調査・研究したりすることも必要です。「arXiv.org」や「人工知能学会論文誌」などのサイトでは機械学習エンジニア向けの記事が多く掲載されています。好奇心やリサーチ力が機械学習エンジニアには求められます。

機械学習エンジニアに必要なスキル

即戦力として採用されることの多い機械学習エンジニアは、業務上でAIを扱うために必要な数理統計の知識を備えている必要があります。未経験から目指す場合もAIの開発で標準的な言語であるPythonや機械学習ライブラリの他に、一般的なシステム開発やデータベース、クラウドなどのエンジニアリングに関するスキルを身につけましょう。

一般的なシステム開発・プログラミングスキル

機械学習やデータ解析でよく利用されるPython(パイソン)のプログラミングは業務で必須となります。また、機械学習エンジニアは、AIに関するアプリケーション開発にも関わるため、Python以外のC/C++やJavaなどの言語を使用して開発を行えることが望ましいです。SEやプログラマーから転職する場合は、システムの設計・開発・運用という一連の流れを経験していると有利といえます。

ライブラリや開発環境などを利用して機械学習を扱えるスキル

scikit-learnやTensorFlowなどの機械学習ライブラリを使いこなせるのは、Pythonでのコーディングスキルと同様に機械学習エンジニアにとって必要な能力です。画像処理や自然言語処理など目的に応じたライブラリやフレームワークが存在します。それらの特徴やメリット・デメリットを把握したうえで適切に使用することができれば、始めからコーディングするよりはるかに効率よく開発を進められるからです。機械学習でよく用いられる開発環境のJupyter NotebookとAnacondaの使い方は最低限マスターしておくとよいでしょう。

データベース・分散処理・クラウドに関するスキル

機械学習ではデータを利用するため、データ基盤やデータベースに関する知識も必要です。解析に適したデータ構造を設計するデータモデリングや必要に応じたデータを抽出・集計できるスキルが役に立ちます。データ操作に関して最低限、テーブル結合やビュー、サブクエリなどSQLを使える知識が必要です。

また、ビッグデータを扱う場合、負荷を分散したり、処理時間を短縮させたりするための分散処理に関するインフラ技術も求められます。AWS、GCPなどのクラウドを利用する機会も多いです。

コンピューターサイエンス、統計、数学の知識

機械学習エンジニアには、コンピューターサイエンスのほか、統計、数学の知識が欠かせません。数学は微分積分学・線形代数学など学生から学ぶ知識が基本となっています。それに加え、機械学習を活用するためにパターン認識、予測、精度などの評価手法や確率分布、確率モデルなどの統計の基本を押さえておきましょう。これらはOJTで教えてもらえるものではないため、必要に応じて独学も必要です。

機械学習・深層学習やアルゴリズムに関する知識

画像認識や自然言語処理など、AIにはいろいろな目的があります。これらの目的を達成するために、共通して必要になるのが、機械学習・深層学習についての理解です。機械学習や深層学習特有の不確実性などについての知識を学ぶ必要があります。また、決定木などの基本的なアルゴリズムから、パーセプトロン・ロジスティック回帰、ニューラルネットワークなど代表的なアルゴリズムの使い方も求められます。

機械学習エンジニアのキャリアパス

機械学習エンジニアに求められるスキル要件のレベルは高いですが、その分人材としての希少価値も高く将来有望な職業といえます。以下で機械学習エンジニアになるためのキャリアパスについて紹介します。

機械学習エンジニアになるための第一歩は、企業に就職して実務経験を積むことです。そのために独学からスタートしてもよいでしょう。まずは機械学習ライブラリを利用して簡単な処理を実行してみたり、Kaggleに挑戦することをおすすめします。

未経験からの転職確率を上げる方法としては、AIの分野に特化したカリキュラムを用意しているプログラミングスクールに通うこともおすすめです。機械学習エンジニアに必須のスキルに絞って学べるので効率的です。ただし、プログラミングスクールで一通り技術を習得しても、機械学習エンジニアとして採用される人は、現在のところ少ないといえます。

そのため、最初はITエンジニアや、データベースの設計などからはじめて、機械学習エンジニアを目指す人も多いようです。また、広告・金融・医療・製造など、分野によって求められる解決方法や技術が異なるのも、機械学習エンジニアという仕事の特徴です。業種ごとに専門的な知識も身に付けていくと、機械学習エンジニアとして採用されやすいといわれています。

機械学習エンジニアの需要と将来性

機械学習エンジニアの需要

今後、ますますAIの需要は増していきます。ビッグデータをはじめとする膨大なデータは、もはや人間が簡単に扱える量ではなくなっており、AIが欠かせないからです。機械学習エンジニアの需要が急速に高まってきたのも、こうした背景があります。将来においても、機械学習に限らずAI開発の経験がある人材や先端技術を保有するエンジニア・プログラマーに対する需要は高まっていくだろうと予想されています。プログラム言語別のエンジニアの年収では、機械学習エンジニアの標準言語といわれるPythonが3位にランクインしています。そこで、高収入の機械学習エンジニアが平均年収を押し上げているのではないか、ともいわれています。

機械学習エンジニアはまだ人数が少ないため、キャリアパスや先輩エンジニアのロールが明確に定義されていません。そのため、将来に不安を持つ人がいることも事実です。しかしながら、不確定なことが多いため未経験からこの業界に参入するチャンスがあることも事実です。数年前のインターネットやWeb黎明期の業界のようにフロンティアスピリットを持つ人材にとっては夢がある市場といえるでしょう。

機械学習エンジニアの将来性

機械学習エンジニアの将来性は非常に有望視されている一方で、AIの発達や人材の育成により淘汰されてしまう予測もあります。そのため、この先長期にわたって仕事やキャリアを考えるうえでスキルアップや技術の習得は欠かせません。たとえば、Google公認のデータエンジニアの資格を取得していれば、機械学習エンジニアとしてのスキルをアピールでき、就職やステップアップのための転職に有利です。また大規模な顧客データを分析する場合には、分散処理技術も不可欠です。こうした、今後需要が高まるであろう資格やつぶしのきく技術を習得する方法も生存戦略のひとつです。

また、機械学習エンジニアとして実務経験を積んだのちにフリーランスやコンサルタントとして独立するキャリアパスも存在します。自由な働き方やさらなる年収向上を目指す場合は、正社員だけではなくそのようなキャリアプランも選ぶことができます。

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