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フリーランスの始め方|準備方法・開業手順から仕事獲得まで徹底解説

フリーランスになるのであれば、開業に向けた準備などに取り組まなければなりません。しかし、具体的にどうすればよいのかわからないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。この記事では、フリーランスの始め方をステップに分けて詳しく解説しています。フリーランスとして独立を検討中の人は、ぜひ「事前準備」「開業手続」「環境整備」「仕事獲得」など、気になるポイントをチェックしてみてください。

フリーランスを始める前に

インターネットの普及や副業の普及などで、会社に属さず働くことが身近になり、フリーランスとして独立する人も増えています。フリーランスは働き方や契約形態も会社員とは異なる点が多く、フリーランスとして活動をするのであれば、第一にその違いを理解しておくことが大切です。では、フリーランスを始める前に知っておきたい基礎知識や用語について見ていきましょう。

フリーランスの定義

フリーランスとは、企業や組織に属さず個人で仕事を請け負う働き方を指します。依頼された仕事を自分の経験や技術を生かして行い、対価として報酬を得る契約形態をとります。フリーランスは仕事をするほど収入は増えますし、仕事の内容も選べますが、業務を完結させるまでの工程はすべて自己責任で遂行することが求められます。

個人事業主とは

フリーランスと個人事業主は同一視されがちですが、厳密には異なるものです。フリーランスは働き方の一形態を指す言葉になりますが、個人事業主は働き方ではなく「税法上の区分」を意味します。個人事業主は、税務署に開業届を提出して、個人として事業を営んでいる人のことを指します。あくまでフリーラスは働き方の一形態ですので、必ずしも個人事業主であるというわけではありません。そのため個人事業主から法人化した場合も、働き方として「フリーランス」と呼ぶことはあります。

業務委託契約とは

フリーランスで働く方は、業務委託契約を結んで仕事を行うことがよくあります。業務委託契約とは、企業などから業務を依頼され、その業務を行うことで報酬を得る働き方を言います。業務委託契約は、実際には法律用語ではなく、民法における「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つを総称した言葉となっています。

請負契約

請負契約は、業務を行い「成果物」を完成することで報酬を得る契約方法です。例えば建築工事であったり、ソフトウェアの開発といった内容は、請負契約の形を取ることが多いとされています。請負契約では成果物を完成させることが請負人の義務となるので、成果物に欠陥があった場合は、依頼主から修正を求められたり、場合によっては損害賠償を請求されることもあります。請負契約を結ぶ場合は、契約内容をよく確認するなどの注意が必要です。なお請負契約の場合、その契約書は、印紙税額一覧表の第2号文書「請負に関する契約書」に該当します。契約の金額に応じた印紙税が必要となることも覚えておきましょう。

委任契約・準委任契約

契約・準委任契約は、指定した事務の「業務の遂行」を目的にした契約方法です。請負契約と違い、成果物の完成は求められない点が大きな違いです。そのため、業務を行った労働時間や工数に対して報酬が支払われる形となります。なお、「委任契約」と「準委任契約」の差は、法律行為の有無により分けられます。弁護士などへの業務依頼は「委任契約」で、法律に関係しないシステム運用業務やコンサルティング業務などは「準委任契約」となります。

フリーランスの始め方:事前準備

ここからは、フリーランスの始め方について解説していきます。まずはフリーランスとして活動を始める前に行っておきたい事前準備について詳しく見ていきましょう。

稼げる能力、経験を身につける

フリーランスとして成功するには、特定の分野で他の人と差別化ができるようなスキルや経験を持っているかどうかが重要となります。会社員としての本業や、本業以外の時間に行う副業を通して技術や経験を深めたり、場合によってはスクールに通うなどして、継続して収入が得られるスキルを身につけることが大切です。

クレジットカードや住居の審査を済ませる

残念ながらフリーランスは、会社員など企業に雇用されている人に比べ、社会的な信用が得にくいのが現状です。そのため、クレジットカードや住宅ローンの審査に通らない場合があります。フリーランスになった後から困らないためにも、このような審査が伴うものについては可能な限り事前に済ませておきましょう。特にクレジットカードについては、プライベートのものとは別に事業用のものを持っておくと会計管理がスムーズになりますので、事前に発行しておくことをおすすめします。

保育園・学童などの利用を確認する

保育園や学童を利用するお子さんがいて、現在会社員として働いている場合は、フリーランスになっても利用を継続できるか、利用時間が短縮されないかなどの確認もしておきましょう。市区町村によっては、フリーランスの場合は保育園や学童の利用に制限がかかる場合があります。自治体に利用条件を確認するとともに、不明点はヒアリングしておくと安心です。

独立後の収支をシミュレーションする

フリーランスは業務を行った分だけ収入が得られますが、会社員と違い、経費は自分持ちになります。主な経費として、事務所家賃や水道光熱費、通信費や旅費交通費などが挙げられます。が、それらを収入から差し引いた中から、生活費や税金、社会保険料などを賄う必要があります。独立前に、収支のシミュレーションをしておくと、月々どれだけの収入を得る必要があるか理解でき、営業するうえでも役立つでしょう。

当面の生活資金を貯金しておく

最初から会社員ほどの安定収入を確保できるフリーランスは少数派です。そのため、フリーランスになる前にある程度の生活資金を確保しておくと、ライフスタイルが変化した中でも精神的な安定が得られます。少なくとも1か月から2か月分の生活費を貯金しておきましょう。本業の収入のほかにも、フリーランスになる前に副業をしてそこから貯金する方法もおすすめです。副業収入であれば貯金もしやすく、またフリーランスになるための経験にもなります。

フリーランスの始め方:開業手続

ここからは、実際にフリーランスとして独立・開業するにあたり、必要な手続きについてまとめています。社会保障や行政上必要な内容もありますので、漏れがないようしっかりチェックしましょう。

開業届の提出

開業届は、事業を開始した日から1か月以内に税務署に提出するよう定められています。提出期限が過ぎても罰則はありませんが、すでに収入が得られる見込みがある方は、早めに提出するようにしましょう。開業届を出しておくと、確定申告で青色申告特別控除を利用できたり、屋号付きの銀行口座を開設できるなどのメリットがあります。

青色申告承認申請書の提出

開業届とともに提出したいのが、青色申告承認申請書です。この2つの届け出をしたうえで確定申告を行うと、最大で65万円の青色申告特別控除が受けられます。青色申告をする場合は日々の取引を定められた方式で記帳する必要がありますが、この節税効果の高さはフリーランスにとって大きなメリットにもなります。青色申告承認申請書の提出期限は開業から2か月以内となっており、提出が遅れると青色申告の開始が1年遅れてしまいます。開業届と同様に税務署に出す書類なので、セットで提出すると手間が省けます。

個人事業開始申告書の提出

開業届や青色申告承認申請書提出などの手続きを行う際には、合わせて個人事業開始申告書(事業開始等申告書)も各都道府県の税事務所へ提出します。個人事業主は地方税である個人事業税を課税されるため、こうした届出が必要となります。なお、開業届は国税である所得税に関連するものとなっていますので、その違いは理解しておきましょう。ちなみに、住民税については税務署に開業届を提出していれば、別途市役所等への報告は不要です。

厚生年金から国民年金に切り替え

会社員からフリーランスになる方は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。退職日が確認できる書類と年金手帳、本人確認やマイナンバーが確認できる書類を住所のある市区町村役場に持っていき、手続きをします。手続きの期限は、退職日の翌日から14日以内となっています。

健康保険から国民健康保険に切り替え

個人事業主は、国民健康保険に加入する必要があります。そのため、健康保険も国民健康保険に切り替えます。新たに国民健康保険に加入するには、健康保険等資格喪失証明書、本人確認書類、マイナンバーが確認できる書類、保険料を支払う口座のキャッシュカードなどを、市区町村役場に持参すると手続きができます。なお、会社員からフリーランスに転身した方は、これまで会社で加入していた社会保険を任意継続できる場合があります。任意継続は、退職日まで2か月以上継続して社会保険に加入していた方が対象です。任意継続保険は上限が設けられており、在職中の標準報酬月額が28万円以上の方の場合、国民健康保険よりも保険料が安くなります。

フリーランスの始め方:環境整備

フリーランスになるにあたり、仕事を円滑に進めるための環境整備も行っておくべきです。具体的にどのようなことをしておけばよいか、詳しく見ていきましょう。

事業用の銀行口座を作る

フリーランスになるのであれば、個人の銀行口座とは別に、事業用の銀行口座を作ることが推奨されます。事業用の銀行口座を持つメリットは、キャッシュフローが明確になり、日々の経理作業や確定申告が行いやすくなることにあります。事業用銀行口座に関連して、可能であれば事業用のクレジットカードを作るのもおすすめです。クレジット払いの方が経費支払いが容易になるケースがあるほか、請求書で明細を確認できるので経理作業の効率化につながります。

ホームページやブログを作成する

ホームページやブログを作成すると仕事の獲得や新たな人脈作りに役立つので、結果として仕事に集中する助けになります。どちらのツールも、営業に結び付くポートフォリオとして活用したり、名刺を作る場合にURLを載せ、自分の経験や実績を知ってもらうきっかけにできます。

仕事部屋や事務用品を整える

フリーランスになると、ほとんどの人が自宅で仕事に関する作業を行うことになります。快適な仕事部屋を確保すると業務効率が上がりますし、プライベートとの線引きもできます。インターネットが必須の仕事をする方は、速度や容量が十分見込めるネット環境を整える必要もあるでしょう。加えて、切手や封筒、印鑑といった備品や消耗品類も用意しておくと必要なときに困りません。

各種書類のひな型を用意する

フリーランスになると、あらゆる書類の発行をしなければなりません。見積書や請求書、また納品書など、あらかじめひな型を用意しておけば、必要なときにスピーディーに発行できます。金銭の授受を円滑に行うためにも、こうした準備を怠らないようにしましょう。

会計ソフトや帳簿の準備

フリーランスに確定申告の作業は必須です。確定申告に向けた日々の帳簿づくりも行わなければなりませんが、会計ソフトを使うとミスを軽減し、効率よく経理作業ができます。確定申告に対応した会計ソフトを利用すると、帳簿や申告書作成の時間短縮につながります。

フリーランスの始め方:仕事獲得

フリーランスは会社員とは違い、待っていても仕事が入ってくることはありません。積極的に仕事を取りにいく姿勢が大事になります。具体的にどうやって仕事を獲得していくのか、フリーランスが仕事を獲得する方法について見ていきます。

以前の職場や知人からの紹介

以前の職場や知人から仕事を紹介してもらうというケースは、フリーランスにおいてはよく見られるケースです。以前の職場で自分が行っていた業務をそのまま業務委託として引き継ぐといったパターンであれば、業務内容への理解もあるため取り組みやすいでしょう。また、かつての同僚や友人、知人などからの紹介も大切です。特にフリーランスになりたての頃であれば、実績を積み上げていくことが重要です。そのためにも前職の職場や取引先と良好な関係を持ち、自分のスキルをアピールしておくことも必要なことだと言えます。

ブログやホームページ、SNSからの引き合い

仕事の発注先をインターネットやSNSで検索して探すケースも増えています。自分の業務経験や成果物を紹介するブログやホームページを持っていると、意外なところから引き合いが来ることもあります。営業用のSNSアカウントを作成し、定期的に発信することで、新たな受注先獲得につながったケースも少なくありません。

コミュニティや交流会で営業する

フリーランス同士のコミュニティや業界の交流会などに参加すると、トレンドとなる情報が得られるほか、横のつながりを持つことができます。一人だとできない仕事でも、得意分野を持ち寄ると請け負える業務があるかもしれません。イベント参加の際は名刺を用意すると、コミュニケーションがスムーズにいき、営業しやすくなります。

クラウドソーシングで探す

クラウドソーシングサービスに登録すると、自分で探すよりも多くの仕事に出会えます。同じサービスを通じて何度か仕事をすると、それが業務実績としてクライアントに公開されます。クオリティを評価する仕組みもあるので、質の良い仕事をすれば新たなクライアントとつながりを持てるかもしれません。

エージェントを利用する

独立して働く人が多くなったことで、IT系を中心にフリーランス向けのエージェントの数が増えています。エージェントは多くの企業とパイプがあるので、仕事を獲得できるチャンスが広がります。エージェントは仕事の紹介だけでなく、条件交渉や確定申告などのサポートを行うところもあるので、上手に活用したいサービスです。

企業への営業活動

電話で仕事の発注をお願いしたり、アポイントを取って発注先に赴くなどの方法で、企業に直接営業する方法もあります。営業職に就いたことがない人にはハードルが高いですが、ダイレクトに企業から仕事を請け負うと、クラウドソーシングやエージェントの取り分であるマージンをカットできるので、手元に入る収入が増える可能性があります。

フリーランスを始めた後に

フリーランスになると、継続して仕事を得る努力など、やるべきことが増えます。また、会社員時代には意識しなかった社会的な責任を果たしていく必要もあります。ここからは、フリーランスとして活動を始めた後におさえておきたいポイントについて見ていきます。

お金の管理と確定申告は必須

フリーランスになるデメリットの一つが、収入が安定しないことです。収入が多い時に資金をプールし、生活資金や納税分を確保するなど、会社員以上にお金の管理や計画性が大切になります。また、フリーランスになると確定申告の作業は毎年必ず行わなければなりません。企業に所属して働いていると、給与計算や年末調整は管理部門が担当するので税金を納付しているイメージがなかったかもしれませんが、フリーランスになると税金の計算から納付まですべて自分で行わなければなりません。確定申告に苦手意識がある方は、日々の帳簿づけを簡単に行える会計ソフトの導入がおすすめです。

専門分野の学びを続ける

世の中のニーズは変化し、技術革新も進んでいます。現状のスキル維持に加え、専門性を磨くことにも取り組みましょう。学びを続けることでスキルアップにもなり、結果的に安定した受注にも繋がるでしょう。フリーランスは定年がないので、ニーズの高い専門性を磨くと、年齢に関係なく仕事が続けられる可能性が高まります。

営業の機会を増やす

営業の経験がない方は、自ら仕事を獲得したり自分をアピールしたりすることに苦手意識があるかもしれません。しかし、フリーランスは自分で仕事を獲得しなければ収入が途絶えてしまいます。そうした事態にならないためにも、営業の機会を意識的に増やすことは大切なポイントです。対面や電話での営業以外にも、ホームページやブログを作成したりSNSで発信するなどでも、自分を知ってもらう機会を増やせます。営業面での苦手分野を徐々に克服しつつ、営業機会やチャネルを増やすと安定して仕事を獲得できるようになるでしょう。

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