フリーランス

フリーランスとは?独立開業の基礎知識

組織や団体に所属せず、働く場所や労働時間、仕事内容などに自らが裁量を持つ「フリーランス」という働き方が浸透してきました。独立してフリーになると、会社員や公務員よりも高収入が期待できる一方、安定性には欠ける印象もあります。

このフリーランスとはよく聞く用語ですが、実際のところどんな意味をもつ言葉なのでしょうか。また、自営業や個人事業主とは異なるものなのでしょうか。

フリーランスとは

フリーランスは簡単に言えば、会社などに属さず個人で仕事を請け負って働く人のことです。自由職業やフリーランサーとも呼ばれ、己の技量をもとに独立した事業者として活動します。その起源は会社員よりも古く、芸能、芸術、スポーツ、技術、農林水産、医療、サービスなどの各分野において様々な職業のフリーランスが存在します。

フリーランスの意味

フリーランスという言葉が誕生したのは、中世ヨーロッパ時代のイギリスだとされています。英語表記は「freelance」で、直訳すると自由(free)な槍(lance)となり、王侯貴族に属さない兵士のことを表す言葉です。転じて現代では、会社や各種団体に所属せずにフリーで働く人を意味する用語として定着しています。

フリーランスと自営業の違い

フリーランスと混同されやすい言葉に「自営業」があります。この2つの言葉の違いはどの点にあるのでしょうか。フリーランスは自分の技能をもとに雇用されずに働く人のこと。対する「自営業」は、個人で事業を経営することを意味しています。そのため、フリーランスも広い意味では「自営業」といえます。一方で、「自営業」には、飲食店や美容院のオーナー、雑貨店やペットショップの経営者など、フリーランスに該当しない個人事業者も含まれるのです。

大まかに言うとフリーランスは自由業と、自営業は個人事業主と同義です。とはいえフリーランスや自営業者も税金対策などから法人化して一人会社を運営する場合もあります。そのように、両者ともほぼ同じくくりで扱われます。結果としてフリーランスと自営業には大きな違いはない、という認識でも問題ないでしょう。

個人事業主とは

個人事業主は個人で事業を行っている人のことであり、株式会社や合同会社などの法人と区別するための税制上の区分です。前述したようにフリーランスや自営業も個人事業主にあたります。個人事業主の具体的な例としては、小売店や飲食店などの経営者、マッサージ師、美容師、ライター、弁護士、税理士などの士業、医者、作家、芸術家、俳優、ミュージシャン、アナウンサー、漁師や猟師、そしてエンジニアや大工、デザイナー、カメラマン、コンサルタントなどが挙げられます。

法人と個人事業主との違い

個人事業主の中には法人を設立して経営を行っている人もいますが、法人と個人事業主は社会的にまったく別のものです。この両者は主に次の3つの点で違いがあります。個人事業主の方が経営的に有利なら個人事業主のままで、法人成り(法人化)した方が有利なら法人を設立するとよいでしょう。

納める税金について

法人と個人事業主とでは、収める税金の種類が異なります。個人事業主が収める税金には、「所得税」や「住民税」、「個人事業税」や「消費税」などがあります。対する法人の主な税金は「法人税」や「法人事業税」、「法人住民税」や「地方法人税」などです。経費として認められる範囲が狭いのが個人事業主であり、広いのが法人です。ただし法人は赤字の場合でも、法人税の均等割(毎年約7万円)が発生してしまいます。

経費の扱いや事務処理について

経費の扱いに関して両者に大きな違いはありませんが、ひとつ異なるのが自身への支払いです。個人事業主は給与として経費にはできません。対する法人の場合は役員報酬というかたちで、給与として経費にすることが可能なので有利です。事務処理については、個人事業主の方が簡単です。法人は、年末調整や社会保険の加入、法人税の申告などといったさまざまな事務処理を行わなければなりません。

社会的な信用度

社会的な信用度が高いのは、基本的に法人の方です。そのため仕事の受注や銀行融資など、多くの点において法人の方が有利です。また、法人でなければ取引しないというクライアントも存在します。将来的に事業を大きくしたいと考えているのなら、法人成りを検討するとよいでしょう。

フリーランスに多い仕事

フリーランスと名乗るのは自由です。そのためどんな仕事でも、理論上はフリーランスになることができます。とはいえフリーランスとして活動しやすい仕事(フリーランスに多い仕事)と、それほどでもない仕事の両方があることは事実です。フリーランスに多い仕事としては、次の5つが挙げられます。

エンジニア

IT関連のシステムに関わるのがエンジニアの仕事。エンジニアに含まれる主な職種は、システムエンジニアやインフラエンジニア、フロントエンジニアやプログラマーなどです。どれも腕がものを言う仕事であり、高いスキルを有するフリーランスほど高収入が期待できます。また経験を積み重ねることによって、フリーランスプロダクトマネージャーなどへのキャリアアップを狙うことも可能です。

デザイナー

フリーランスのデザイナーで多いのが、webデザイナーやグラフィックデザイナーなどです。webデザイナーはクライアントの意図に沿ったwebサイトをデザインするのが仕事であり、ポスター広告やカタログ、企業ロゴなどをデザインするのがグラフィックデザイナーです。どちらも美的センスとともに、企業の意図をくみ取る能力が欠かせません。

クリエイター

クリエイターにくくられる職種は多岐にわたります。主なものとしてイラストレーターやアニメーター、ゲームディレクターやゲームプランナーなどを挙げることができます。いわゆる芸術家とは異なり、クライアントの要望に沿った制作物を仕上げるのがフリーランスクリエイターの役目です。

ライター

フリーランスライターに多い仕事が、webライターやブログライターです。企業と契約し、専属ライターとなって活動するほか、クラウドソーシングの仕事を請け負うこともあります。また、フリーのコピーライターやシナリオライターとして活躍している人もいます。フリーランスとして、比較的参入しやすい仕事とされているのがライターです。

編集者

書籍や雑誌、電子書籍などの編集を担当するのが編集者です。能力のある編集者の需要は高いのですが、編集はある程度の実務経験が必要とされる仕事。いきなりフリーランスになることは難しいため、出版社などで経験を積んだあとに独立を目指すのが一般的です。相応の編集スキルや人脈を有してからフリーランスになることを検討してみるとよいでしょう。

フリーランスが人気の理由

フリーランスが人気となっているのは、そうなるだけの理由がフリーランスにあるからです。その主な理由は次の3つです。

実力にあう収入が得られる

フリーランスの大きな魅力の1つが、実力次第で高収入が期待できるところです。フリーランスはあげた成果によって、報酬額が変化します。よい結果を残せば、それだけ次回以降の報酬交渉を有利に進めることができます。このように実力にあった収入が得られるのがフリーランスの特徴であり、人気の理由です。

働く場所や時間の融通が利く

リモートワークが普及してきたこともあり、自宅やネットカフェなどでの作業が可能な案件が増えています。また、成果物の納品さえ大丈夫ならば仕事をする時間は問わない、という案件も珍しくありません。このように働く場所と時間の融通が、ある程度効くのがフリーランスの魅力でありメリットです。フリーランスならば、ライフスタイルに合わせた仕事が可能です。

仕事に充実感がある

毎回が真剣勝負なのがフリーランスの醍醐味であり、やりがいとなる部分でもあります。クライアントが満足する仕事を行えば評価が上がりますし、「成し遂げた!」という達成感も得られます。組織の歯車ではなく、自分が組織そのものだからこそ味わえる充実感が、フリーランスにはあるのです。

フリーランスと似た言葉

フリーランス的な働き方を表す、フリーランスに似た言葉があります。雑誌やネット記事で使われることも多くなっており、覚えておいて損はありません。代表的なものは、次の6つの言葉です。

ギグワーカー

ギグワーカーとは、クラウドソーシングの案件などを単発、あるいは短期でこなす人々のことです。ギグワーカーのギグ(Gig)とは音楽用語で、短い演奏やセッションを表します。ネット経由で単発の案件を受注し、ギグワーカーとして副業を行う会社員も存在します。つまりフリーランスでなくとも、ギグワーカーにはなれるのです。

パラレルワーカー

パラレルは「平行」を意味する言葉で、パラレルワーカーとは平行していくつかの職にたずさわる人のことです。複数の仕事をこなすため、副業というよりも兼業に似た働き方だと言えるでしょう。パラレルワーカーで多いのがライターですが、投資家として活動する人も増えています。複数の組織と仕事をするため、収入源を分散できるのがメリットです。

ノマドワーカー

ノマドワーカーのノマドとは「遊牧民」のこと。その言葉のとおり特定のオフィスをもたず、ネットの使えるさまざまな場所で仕事を行うのがノマドワーカーです。インターネット環境が豊富な現代だからこそ、実現した働き方だとも言えます。フリーランスはもちろん、会社員のノマドワーカーも存在します。

SOHO/在宅ワーカー

SOHOは「Small Office Home Office」の略で、インターネットを活用し、自宅や小さなオフィスで仕事をする人のことです。また、その仕事場や物件を指すこともあります。フリーランスはクライアントに常駐して働くこともありますが、SOHOはありません。小さいながらもオフィスを構え、基本的にそこで働くのがSOHOです。

フリーター

フリーターとはフリーアルバイターのことです。企業などと雇用契約を結び、パートやアルバイトとして働くのがフリーターの特徴です。フリーランスはどの組織にも属さない働き方なので、フリーターとは明確に異なります。比較的自由度が高いのがフリーターの魅力です。

自由業

自由業とは特定の企業や組織に属さず、自分の裁量で仕事を選び、働く人のことです。「フリーランスと自営業の違い」の項目で述べたように、自由業とフリーランスは同義です。また自由業と自営業との間に、明確な法律的違いはありません。

フリーランスになる準備と手続き

フリーランスになる準備と手続きを、あらかじめ知っておくことはとても大事です。というのは、準備しておくべきことや手続きをつかんでおかないと、いざフリーランスになったときに慌てる場合があるからです。具体的な準備や手続きは、次のようになっています。

独立前にやるべきこと

フリーランスには、独立前にしておくべきことがいくつか存在します。次の3つが代表的なものなので、しっかりと対策を講じておきましょう。

クレジットカード、ローンの審査

クレジットカードやローンの審査を通るには一定の継続した収入が必要です。フリーランスは一般的に収入が安定しないというイメージがあり、クレジットカードやローンの審査が通りにくい傾向があります。そのためローンなどを申し込む予定がある場合には、継続した収入が見込める会社員時代にしておくのが肝心です。

独立する分野での実績作り

フリーランスが仕事を得るためには、その分野での実績が欠かせません。実績がない状態では、案件の獲得や報酬交渉の面で不利となります。そのため最初からある程度の軌道に乗れるよう、独立する前に数年間は正社員として会社に勤務するなど実績を作り上げておくのが大事です。

副業から始めてみる

いきなり独立しフリーランスになる前に、副業から始めてみるのは賢明な方法です。というのは、副業を行うことで実績を積み重ねることができますし、ある程度の人脈を形成できる場合もあるからです。また、副業はスキルアップにも役立ちます。

健康保険と年金の切り替え

会社員とフリーランスでは、健康保険と年金が違います。フリーランスになったと同時に、両方とも切り替えておかなければなりません。

健康保険

フリーランスになったのならば、健康保険を国民健康保険に切り替える必要があります。健康保険には2年間の任意継続制度があり、場合によっては国民健康保険に即加入するよりも有利なことがあります。切り替える前に、各保険組合に相談してみるのもよいでしょう。

国民年金

フリーランスになったら厚生年金から国民年金へ切り替えます。手続きを行う場所は、住んでいる自治体の国民年金窓口です。退職を証明できる書類や年金手帳、身分証明書や印鑑が必要となるので、準備しておきましょう。

青色申告の手続き

確定申告時に青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除を受けられます。ただし青色申告を選択するためには、次の2点を税務署に提出しなければなりません。

開業届

フリーランス(個人事業主)は、法律により「開業届」を提出する義務があります。この法律には罰則がないため、後から提出することも事実上可能ですが、青色申告をするためにも期間内(事業開始後1か月以内)に提出することをおすすめします。用紙は各税務署か、国税局のHPで手に入れることが可能です。

青色申告承認申請書

青色申告をするためには、開業届とともに「青色申告承認申請書」の提出も必要です。この用紙も開業届と同様の手段で入手できるので、一緒に手に入れておくとよいでしょう。なおこの書類の提出期間は、事業開始後2ヶ月以内です。

独立してフリーランスになった後に

フリーランスとして独立後、何をすればよいのか分からないという人もいるのではないでしょうか。最初にしておきたいのは、次の3つです。

事業用口座の作成

開業届には屋号を記入する欄があり、開業届の写しを銀行に持参することで、屋号で事業用口座を作れます。屋号の口座は事業を行っている証となるため、社会的信用度が上がります。確定申告などもスムーズになるので、作成しておくとよいでしょう。

会計ソフトの準備

会計ソフトがあれば会計管理を簡単に行えます。普段の管理が楽になりますし、確定申告を円滑に進めるのにも役立ちます。税理士に依頼するよりも予算的に安くすみますし、普段は会計ソフトにまかせ、確定申告などのときだけ税理士に依頼するのもよい方法です。

小規模企業共済

小規模企業共済に加入することで、退職時に共済金を受け取れます。実質退職金のようなものであり、老後の備えに役立ちます。また、掛金が所得控除の対象となるため、節税効果が見込めるのもおすすめとなるポイントです。

フリーランスの税金

フリーランスは個人事業主に含まれるので、個人事業主と同じ税金がかかります。主な税金の内容は次のとおりです。

所得税

フリーランスの「所得税」は、1月1日から12月31日までの年間所得に、一定の税率をかけて算出します。所得とは収入から経費を引いたもののこと。所得税は課税される所得の額により、税率が異なります。最低税率は5%で、最高税率は45%です(2020年現在)。

住民税

居住している地域に支払う税金が「住民税」です。住民税には「法人住民税」と「個人住民税」があり、フリーランスが支払うのは個人住民税です。この税金は申告する必要がありません。ほとんどの自治体は同じ税率を採用していますが、違う自治体もあるので詳しいことは住んでいる自治体に尋ねましょう。

個人事業税

「個人事業税」は、一定額(290万円)以上の売上がある個人事業主にのみ課せられる税金です。税率は3%~5%で、業種によって異なります。また、作家や漫画家など一部の業種は、納税義務がないので支払う必要がありません。ちなみにフリーランスに多いデザイン業は税率5%です。

消費税

年間売上が1,000万円を超えた場合、フリーランスも「消費税」を支払う義務が生じます。とはいえ1,000万円を超えたからといって、即消費税が発生するわけではありません。開業後2年以内は、無条件で納税が免除されます。また消費税を納める場合には、申請書を作成する必要があります。

フリーランスの仕事探し

フリーランスの仕事は、積極的に探しにいく必要があります。ただ待っているだけでは、仕事を得るのは困難です。仕事を探す効果的な方法としては、主に次の3つがあります。

フリーランスエージェント

フリーランスエージェントに登録することで、個人では探せないような案件を紹介してもらえるようになります。また、エージェントが間に入ってくれるので、契約や事務処理がスムーズに進みます。履歴書の作成や、面接の仕方などをレクチャーしてもらえることがあるのも、エージェントのメリットです。

クラウドソーシング

ネット環境とパソコンがあれば仕事ができるのがクラウドソーシング。クラウドソーシングは仕事の受注が比較的容易なので、フリーランスに向いています。空いた時間を有効活用できますし、スキルにあった仕事を選択できるのもメリットです。その反面、単価が安いことがある点には注意が必要です。

直接営業

社会人時代のコネがあるのなら、直接営業をするのも1つの手です。また、友人や契約したことのあるクライアントに、紹介してもらうという方法もあります。求人案内やHPなどをチェックして、飛び込みで営業するのもよいでしょう。

収入アップのために

フリーランスになったからといって、それだけで収入がアップするわけではありません。収入を増やすための努力が必要です。収入をアップするためには、次の3つのことを心掛けるとよいでしょう。

営業力をつける

フリーランスには、自分のスキルや実績を相手に売り込み、有利な契約を手に入れるための営業力が欠かせません。セミナーや勉強会、本や動画などを活用し、営業力をアップさせましょう。コミュニケーションスキルも必要なので、同時に高めておくことも肝心です。

実績を作り評判をあげる

堅実に仕事を行い、実績を作り評判をあげることは案件の獲得につながります。また豊富な実績やよい評判があれば、報酬の交渉を有利に進めることも可能です。案件を増やすとともに単価をあげることは収入アップの王道なので、地道に実績を積み重ね評判をあげましょう。

人脈を作る

案件を安定的に獲得するためには、窓口を増やしておくのが肝心です。そのために有効で必要なのが、人脈を作ることです。また人脈があれば、困ったときに相談に乗ってもらえます。収入アップのためのアドバイスを得ることもできるでしょう。交流会やセミナーなどに積極的に参加し、人脈を広げるよう努めましょう。

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