MLOPsエンジニアとは?仕事内容や必要なスキルを解説

近年、AIや機械学習の発展とともに、「MLOpsエンジニア」という職種が注目を集めています。しかし、具体的に何をする職種なのかを疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。さらに、MLOpsエンジニアを目指すために必要なスキルも気になる方もいると思います。
様々な企業で、AIを活用したプロジェクトが進められていますが、実はそのプロジェクトの多くが運用段階で失敗していると言われています。その最大の理由となっているのは、開発と運用がうまくいかないことです。MLOpsエンジニアはまさに、この「開発と運用の橋渡し」を担う、多くの企業で欠かせない役割を果たしています。
本記事では、MLOpsエンジニアの基本的な役割から、具体的な仕事内容、必要なスキル、さらに活躍する業界やキャリアパスに至るまで解説していきます。MLOpsのメリットや他のエンジニアとの違いなどにも触れながら、詳しく説明していきます。
記事を読み終える頃には、「MLOpsエンジニアとは何か」「どんなスキルを身につければよいのか」を理解できるはずです。
目次
MLOpsエンジニアとは
MLOps(Machine Learning Operations)エンジニアとは、機械学習(ML)モデルの開発から運用までを一貫して支えるエンジニアです。単にモデルを作るだけでなく、実際のサービスや業務で安定的に使い続けられる状態を構築・維持することが主な役割となります。
従来、機械学習の現場では「モデルを作る人」と「システムを運用する人」が別々でした。その結果、精度の高いモデルが完成しても、本番環境でうまく動かない、改善が行われないといった課題が頻発していました。MLOpsは、こうした課題を解決するために生まれた考え方です。
MLOpsの特徴やメリット
MLOpsの最大の特徴は、機械学習を作って終わりにしない点にあります。モデルの学習、デプロイ、監視、再学習といった一連の流れを仕組みとして整えることで、継続的な改善が可能になります。
-
主なメリットとして、
- モデルの再現性が高まり、属人化を防げる
- デプロイや更新作業を自動化でき、開発スピードが向上する
- 本番環境での精度劣化や異常を早期に検知できる
といったものが挙げられます。これによって、AIプロジェクト全体の成功確率を大きく高めることができます。
MLOpsが注目されている理由
MLOpsが注目されている背景には、AIの社会実装が本格化してきたことがあります。PoC(概念実証)止まりではなく、AIや機械学習を実際のビジネスに組み込む企業が増えたことで、運用できるAIが求められるようになりました。
また、モデルの数が増え、データも日々変化する中で、手作業による管理には限界があります。こうした状況から、機械学習と運用を体系的に結びつけるMLOpsの重要性が非常に高まっています。
MLOpsエンジニアと機械学習エンジニアの違い
機械学習エンジニアは、主にモデル設計やアルゴリズムの改善を重要視する職種です。一方でMLOpsエンジニアはモデルを安定的に運用し、価値を出し続けることにフォーカスします。
重要視しているものをそれぞれ簡単に整理すると、以下のようになります。
- 機械学習エンジニア: 精度、アルゴリズム
- MLOpsエンジニア: 運用、自動化、信頼性
役割は異なるものの、非常に関係の深い職種です。
MLOpsエンジニアは領域を横断するハブ的存在
MLOpsエンジニアは、データサイエンティスト、バックエンドエンジニア、インフラ担当など、複数の職種をつなぐハブのような役割を担っています。それぞれの専門領域を理解し、共通言語で橋渡しする能力が求められます。
そのため、技術力はもちろん、全体を俯瞰する視点も重要です。
MLOpsエンジニアの年収相場
MLOpsエンジニアは専門性が高く、需要に対して人材が不足しているため、比較的高い年収水準となっています。経験やスキルにもよりますが、年収600万円〜1000万円程度となる場合が多いです。
特に、クラウドやDevOpsの知識も持つ人材は、市場価値が高い傾向があります。
MLOpsエンジニアの主な仕事内容
MLOpsエンジニアの仕事は、機械学習モデルを作ることだけではありません。モデルが実際のサービスや業務の中で安定して動き、継続的に価値を生み出し続けられるように、開発から運用までの全工程に関わります。
ここでは、MLOpsエンジニアの代表的な仕事内容を紹介します。
機械学習モデルの設計・開発・学習
MLOpsエンジニアは、機械学習モデルの設計や学習プロセスにも深く関与します。データの前処理方法や特徴量設計、アルゴリズム選定など、モデルの品質に直結する部分を理解した上で、運用を見据えた設計を行うことが重要です。
また、実験結果や学習条件を記録・管理し、後から再現できる状態を整えることもMLOpsの重要な役割の1つです。
機械学習プロジェクトの各工程を自動化するパイプライン構築
MLOpsエンジニアの中心業務が、機械学習パイプラインの構築と自動化です。データ取得から学習、テスト、デプロイまでの一連の流れを自動化することで、作業ミスを減らし、開発スピードを向上させます。
このような仕組みを整えることで、モデルの更新や改善を素早く安全に行えるようになります。
モデルやシステムの監視・管理・最適化
本番環境にデプロイされたモデルは、時間の経過とともに精度が低下することがあります。そのため、予測結果や入力データの変化を継続的に監視し、異常や精度劣化を早期に検知する仕組みが必要です。
MLOpsエンジニアは、こうした監視体制を整え、必要に応じて再学習や改善を行うことで、モデルの価値を維持します。
インフラ・クラウド環境の設計・構築・保守
MLOpsエンジニアは、モデルを動かすためのインフラにも関わります。クラウド環境を活用し、スケーラブルで安定したシステムを構築し、継続的に運用できる状態を整えることが求められます。
特に、学習時と推論時で異なるリソース要件を考慮しながら、コストと性能のバランスを取る設計力が重要になります。
MLOpsエンジニアに必要なスキルや経験
MLOpsエンジニアには、機械学習だけでなく、インフラやソフトウェア開発、チーム開発に関する幅広いスキルが求められます。
以下に、実務で特に必要とされるスキルや経験を分野ごとに解説します。
実務的な機械学習の基礎知識
MLOpsエンジニアには、機械学習の理論を理解しているだけでなく、実務で使えるレベルの知識が必要です。代表的なアルゴリズムの特徴や使い分け、学習データの偏りがモデルに与える影響などを把握しておくことが求められます。
特に、運用中に発生する精度劣化の原因を分析するためにも、機械学習の基礎理解は欠かせません。
社会人向けのAI教育講座【AIジョブキャンプ】
「AIジョブキャンプ」では、AIにおいて欠かせない機械学習を学べるオンライン講座を受講できます。 AIジョブキャンプは社会人向けの「AI教育講座」と業務委託の案件紹介をする「エージェント」サービスがセットになった無料の研修プログラムです。 機械学習の講座も現役のデータサイエンティストによるもので、充実した内容となっています。 将来的に独立を検討している人なども、スキルアップ支援としてAIジョブキャンプを活用できます。
Pythonなどのプログラミングスキル
MLOpsエンジニアの開発現場では、Pythonが主に使われています。モデル開発だけでなく、パイプライン構築や自動化処理、運用ツールの実装など、幅広い用途で利用されます。
Pythonに加えて、シェルスクリプトなどの基本的なスクリプト言語も扱えると実務で役立ちます。
クラウド(AWS、GCP、Azure)の基礎知識
多くのMLOps環境はクラウド上に構築されます。そのため、AWS、GCP、Azureといった主要なクラウドサービスの基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。
特に、コンピューティングリソースやストレージ、ネットワークに関する基礎知識は、モデルの運用設計に直結します。
DevOpsツールの基礎
MLOpsはDevOpsの考え方をベースにしています。CI/CDやコンテナ技術、構成管理ツールなど、DevOps領域の基本的な知識があると、パイプライン構築や運用自動化をスムーズに進められます。
モデルの運用の監視・トラッキングツール操作
MLOpsエンジニアは、モデルの学習状況や本番環境での挙動を可視化し、管理します。そのため、実験管理やモデル監視、メトリクスのトラッキングに関するツールの使用経験があると強みになります。
これにより、問題発生時の原因特定や改善がしやすくなります。
データエンジニアリングスキル
機械学習モデルの品質は、データの品質に大きく依存します。そのため、データの収集、加工、管理に関するデータエンジニアリングの知識も重要です。
データパイプラインの設計やデータの前処理を理解しておくことで、より安定した運用が可能になります。
ウェブアプリケーション開発の経験
機械学習モデルは、Webアプリケーションの一部として利用されることが多いです。そのため、Webアプリケーションの基本的な構造や動作を理解していると、実装や運用がスムーズになります。
フロントエンドの深い知識までは求められないケースが多いですが、全体像を把握しておくことは重要です。
APIサーバー開発の経験
モデルを外部システムから利用するために、APIとして提供することは非常に多いです。そのため、APIサーバーの設計や開発経験があると、MLOpsエンジニアとしての適性が高まります。
性能や安定性を意識した設計が求められ、そういった経験があるとさらに重宝されます。
ドメイン知識への理解
MLOpsエンジニアは、技術だけでなく、業務ドメインへの理解も重要です。どのような課題を解決するためのモデルなのかを理解することで、適切な運用設計が可能になります。
チーム開発の経験
MLOpsエンジニアは、単独で作業することは少なく、複数の職種と連携します。そのため、チーム開発の経験があることは大きな強みです。
コードレビューや仕様調整などを複数人で行った経験が、開発と運用の橋渡しをする上で活かすことができます。
コミュニケーション能力
MLOpsエンジニアは、技術的な内容をわかりやすく共有する役割も担います。専門分野が異なるメンバーと連携するためにはコミュニケーション能力は欠かせません。
技術系のスキルと同じくらい重要なスキルです。
MLOpsエンジニアが持っていると役立つ資格
MLOpsエンジニアとして働くうえで、資格は必須ではありません。しかし、知識の体系的な理解を証明したり、未経験分野を補強したりする手段として、資格が役立つ場面は多いです。
ここでは、MLOpsエンジニアを目指す人が持っていると評価されやすい代表的な資格を紹介します。
G検定
G検定は、AIやディープラーニングに関する基礎知識を幅広く問う資格です。機械学習の技術的な詳細だけでなく、活用事例や倫理、法律といった周辺知識も含まれている点が特徴です。
MLOpsエンジニアにとってG検定はAI全体を俯瞰的に理解していることを示すものです。特にこれから機械学習分野に本格的に取り組みたい人にとって基礎固めとして有効です。
E資格
E資格は、ディープラーニングの理論や実装に関する知識を問う、より技術寄りの資格です。モデル構造や学習手法に関する理解が求められるため、難易度は高めとなっています。
MLOpsエンジニアにとっては、モデルの挙動や精度劣化を深く理解するための土台として役立ちます。機械学習エンジニア寄りのスキルを強化したい場合に、有効な資格と言えます。
AWS Certified Machine Learning – Specialty
AWS Certified Machine Learning – Specialtyは、AWS上での機械学習システム構築・運用に関する専門資格です。データの前処理からモデルのデプロイ、運用・監視までを含むため、MLOpsとの親和性が非常に高い資格です。
クラウド環境でMLOpsを実践する企業は多く、この資格を持っていることで、即戦力としての評価を受けやすくなります。
MLOpsエンジニアが活躍する業界
MLOpsエンジニアは、特定の業界に限定される職種ではありません。機械学習モデルを本番環境で安定的に運用したい企業であれば、どの分野でも必要とされています。
その中でも特にMLOpsエンジニアの需要が高い代表的な業界を紹介します。
小売・Eコマース
小売業界やEコマース分野では、需要予測やレコメンド、在庫最適化などに機械学習が活用されています。これらのモデルはデータの変化が激しく、継続的な改善と安定運用が欠かせません。
そのため、モデルの更新や精度監視を自動化できるMLOpsエンジニアは、ビジネスの成果に直結する存在として重宝されます。
医療・ヘルスケア
医療・ヘルスケア分野では、画像診断支援や疾患予測など、高い精度と信頼性が求められます。モデルの挙動を常に監視し、安全に運用する体制が必要なため、MLOpsの考え方は非常に重要です。
特に、モデルの再現性やログ管理といった点で、MLOpsエンジニアの役割は大きくなっています。
金融・保険
金融・保険業界では、不正検知や信用スコアリング、リスク評価などに機械学習が活用されています。これらのシステムは停止や誤作動が大きな影響を与えるため、安定した運用が必須です。
MLOpsエンジニアは、モデルの変更履歴やパフォーマンスを管理し、信頼性の高いAI運用を支えています。
製造業
製造業では、設備の異常検知や品質検査、需要予測などで機械学習が導入されています。現場のデータを継続的に取り込みながらモデルを改善していく必要があるため、MLOpsの仕組みが効果を発揮します。
システムと現場をつなぐ役割として、MLOpsエンジニアの需要は今後もさらに高まっていくでしょう。
MLOpsエンジニアのキャリアパス
MLOpsエンジニアは、技術的な専門性と横断的な視点を持つ職種であるため、将来的なキャリアの選択肢が幅広い点が特徴です。経験を積むことで、より高度な技術職だけでなく、マネジメントや事業側に関わるポジションへ進むことも可能です。
代表的なキャリアパスを紹介していきます。
シニアMLOpsエンジニアやテックリード
MLOpsエンジニアとして経験を積むと、シニアエンジニアやテックリードとして活躍する道があります。このポジションでは、個人の技術力だけでなく、設計方針の決定や技術選定、チーム全体の技術的な意思決定を担います。
複雑なMLOps基盤を設計・改善できる人材は希少であり、専門性を深めたい人に向いているキャリアです。
データアーキテクトやAIインフラ責任者
MLOpsエンジニアは、データ基盤やインフラにも深く関わるため、データアーキテクトやAIインフラ責任者へとキャリアを広げるケースもあります。
この役割では、データの流れやシステム全体の構造を設計し、長期的にスケールする基盤を構築します。技術を俯瞰して捉え、全体最適を考えるのが得意な人に適したキャリアパスです。
プロジェクトマネージャーやAI事業責任者
技術とビジネスの両方を理解しているMLOpsエンジニアは、プロジェクトマネージャーやAI事業責任者へ進む道もあります。AIプロジェクト全体を統括し、技術的な制約を踏まえた現実的な判断ができる点が強みです。
AIをどう事業価値につなげるかを考える立場に関わりたい人にとって、有力な選択肢と言えるでしょう。
AI市場の拡大とMLOpsエンジニアの将来性
近年、AIや機械学習の活用は一部の先進企業だけでなく、多くの業界へと広がっています。業務効率化や意思決定の高度化を目的に、AIを本番環境で運用することが急増していることが、その背景にあります。
こうした流れの中で、AIを「作る」だけでなく、「使い続ける」ための仕組みを支えるMLOpsエンジニアの重要性は、今後さらに高まっていくと考えられます。AI市場が拡大するほど、扱うモデルやデータは増え、運用の複雑さも増していきます。その結果、属人的な運用では限界を迎え、MLOpsの考え方や専門人材が不可欠になります。
また、MLOpsエンジニアは機械学習、インフラ、DevOps、ビジネス理解といった複数のスキルを横断的に求められる職種です。このような人材は育成に時間がかかるため、需要に対して供給が追いつきにくい状態が続くと考えられます。
そのため、MLOpsエンジニアは今後も市場価値が高く、長期的に安定したキャリアを築きやすい職種の1つと言えるでしょう。
まとめ
MLOpsエンジニアは、機械学習モデルの開発と運用をつなぐ重要な役割を担う職種です。AIを本番環境で活用する企業が増える中で、作って終わりではないAI運用を実現するために、その需要は年々高まっています。
本記事では、MLOpsエンジニアの役割や仕事内容、必要なスキル、活躍する業界、キャリアパス、そして将来性まで幅広く解説しました。MLOpsは機械学習だけでなく、インフラやDevOps、ビジネス理解など複数の領域を横断するため、簡単な職種ではありません。しかし、その分だけ専門性が高く、市場価値の高いエンジニアを目指せる分野でもあります。
これから機械学習のエンジニアを目指す人や、AI領域でのキャリアに悩んでいる人にとって、MLOpsエンジニアは選択肢の1つです。興味のある方は、まずは紹介したような基礎的な機械学習やクラウドの知識から身につけ、少しずつ運用経験を積み、MLOpsエンジニアにチャレンジしてみてください。

AIを仕事にするためのキャリアノウハウ、機械学習・AIに関するTopics、フリーランス向けお役立ち情報を投稿します。

フリーランス求人を探す


