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2019/07/08

データサイエンティストの需要と将来性

現代ではビッグデータを扱う職業「データサイエンティスト」の需要が急速に高まっています。その背景には一体どのような要因があるのでしょうか。また、データサイエンティストの人気は今後も衰えることなく将来にわたるトレンドとなるのでしょうか。この記事では、求人需要が高まる背景とともにデータサイエンティストの将来性にも言及します。

そもそもビッグデータとは、Webサイトの閲覧履歴やGPSの位置情報などの膨大で雑多なデータを指します。これらのデータは情報量が非常に大きく、分析に使用するにはそれなりの環境が必要です。先進的な企業では、ビッグデータの活用が進み、データを一元管理してビジネスに利用するシーンも増えてきました。しかしながら、多くの企業では利用目的や取得した場所毎にバラバラのフォーマットのままデータが散在しており、全く整理されていないような状況も散見されます。

データサイエンティストは統計学やコンピュータサイエンスなどの技法を駆使し、そうしたデータを整理・構造化していきます。また、分析環境が整った職場で活躍する場合は、数理統計モデルや機械学習などの技術を介して、企業の業務改善やビジネス上の課題解決に取り組みます。まずは、需要が高まる背景についてみていきましょう。

データサイエンティストの需要が高まる背景

まずは、データサイエンティストの需要が高まる背景について説明します。AI開発やビッグデータ分析などの受託企業のほか、大手企業やWebサービス/アプリなどの運営企業を中心にさまざまな会社や業界がデータサイエンティストの採用募集を行うようになっています。

AI開発やビッグデータ分析などの需要が拡大している

コンピューターに効率的に学習を積ませることのできるディープラーニング(Deep Learning)の技術が登場して以降、AI開発競争は世界的に過熱しています。しかし、ディープラーニングの精度を上げるためには教材となるビッグデータが必要となります。いかにして効率的にデータを収集するか、収集したデータを学習に最適な形にアウトプットできるかがAI開発の鍵を握るといっても過言ではないほどです。そのため、ビッグデータの取り扱いに長け、なおかつAI開発に携わることが可能なデータサイエンティストが求められているというわけです。

また、現代のビジネスは従来のように表面的かつ一面的なデータ分析をするだけでは十分ではなくなっています。多様化する需要やニーズに対応するためには、一見無秩序とも思える膨大なデータの中に潜んでいる傾向を明らかにすることができる機械学習や統計的な分析の手法が必要不可欠です。そうなると当然、それを扱えるデータサイエンティストの需要は高まることになります。

経験豊富なデータサイエンティストは少ないため、獲得競争が過熱している

IT業界は慢性的な人手不足です。特に、企業が是が非でも確保したいスキルセットや実務経験を備えた人材はその絶対数が限られています。日本国内の求人需要に限っても、データサイエンティストだけで数万人が不足しているといわれているほどです。そのため、企業間での獲得競争は過熱しています。具体的には、他の会社の人材をヘッドハンティングしたり、一定数の人材をまとめて確保するために会社ごと買収したりといった具合です。しかし、もともと日本にはデータサイエンティスト自体の数が圧倒的に少ないため、そうした手法にも限界があります。所詮は限られたパイの取り合いであり、業界全体の需要の高さに対して供給は少ないままということになってしまうのです。

数理統計やITなどの高度な知識が必要で育成に時間がかかる

人材が少ないのであれば育てればいいというのは誰しもが考えるところです。実際、大学や専門学校との連携を強化して人材を確保しようという取り組みはなされています。しかし、その教育機関もアメリカなどと違い、年間何万人もの学生を育成するといった体制は整ってはいません。データサイエンティストに特化した教育を受けられる学校も全国に数校を数えるのみです。それなら、採用した会社がそれぞれ教育をおこなうしかないという話になりますが、社内でデータサイエンスに精通した人材を育成する仕組みもまだまだ進んでいないというのが現状です。

しかも、データサイエンティストのスキルを身につけるには数理統計やITなどの高度な知識が必要であり、育成には通常のITエンジニア以上に時間がかかります。いずれにしても、一朝一夕で解決できる問題ではないのです。

データサイエンティストの需要が高い分野

データサイエンティストが求められているのはIT業界だけではありません。金融・保険、製造業、小売・物流、サービスなど、さまざまな業界がそのスキルを必要としているのです。中でも、マーケティングに大きな力を割いている広告会社やコンサルティングファーム、グローバル企業、上場企業などで高いニーズを誇っています。ただし、求人募集の内容は職場によりさまざまです。大規模データを分析しユーザーが潜在的に求めているものを浮き彫りにしていくアナリティクス業務が主体の場合もあれば、機械学習モデルの作成が主な仕事の場合もあります。

また、行政の分野においても、行政サービスを効果的かつ効率的に実施するためにデータサイエンティストのスキルが求められています。中央官庁や自治体などがおこなう各種の調査がどれだけ有効に活用できるかはデータサイエンティストの手腕が大きくかかわっているのです。さらに、判定の難しい病状をビックデータから解析するなど、医療の分野などでもデータサイエンティストの活躍が期待されています。

データサイエンティストがなくなると言われる理由

データサイエンティストの需要はますます高まるばかりですが、その一方で、「データサイエンティストはいずれ不要になる」などといった声も聞かれるようになっています。なぜ、そうした意見がでるようになったのか、その理由について探っていきます。

AI技術の進化で仕事が減る

AIの進歩は目覚ましいものがあります。既存のデータの分類はもちろん、それに基づいてある程度の未来予測もできるようになっています。たとえば、膨大な数の顧客の購入履歴を分析することで、今後必要となる商品の在庫数を予測するといった具合です。また、医療の分野では医師が気付かなかった患者の症状をAIが指摘するという形で診断支援をおこなうという試みも実施されています。現段階ではあくまでも限定的な活用にすぎず、AIの予測や指摘がすべて正しいというわけでもありません。しかし、今後、人間の判断力を完全に凌駕するAIが登場する可能性は否定できないところです。また、機械学習を使った予測モデルなどの適用を専門技術なしに適用できるAIプラットフォームの普及により現在データサイエンティストが行っている業務が不要になるという考え方もあります。

そうなったときには、もはやデータサイエンティストは必要ないというわけです。たとえそこまでいかなくとも、AIの精度が高まるにつれてデータサイエンティストの活躍の場が減っていくという事態は十分に考えられます。

役割の細分化や専門化により職種名が変わる

データサイエンティストはその定義自体が曖昧です。データサイエンティストという名が広く知られるようになったのは2009年頃からですが、言葉だけが独り歩きし、期待感が異様に高まっていったきらいがあります。そのため、「データサイエンティストを雇用すればさまざまな問題が解消すると思っていたのに、実際はそんなことはなかった」という、雇用者の願望と人材の持つスキルの不一致が問題視されるようになってきました。この不一致を解消するために必要なのが役割の再分化や専門化です。データサイエンティストと混同されやすい職種として「機械学習エンジニア」「データエンジニア」「データアナリスト」などの職種がありますが、徐々に区分や役割分担が明確になってきています。

そして、その過程でデータサイエンティストという名前も実情に相応しいものに変わっていくと考えられています。つまり、そうなった場合は、もはや旧来のデータサイエンティストという呼び名や肩書は不要だというわけです。

人材育成が加速し、人余りの状況に

データサイエンティストの数は、需要の高さと比べて圧倒的に少ないのは事実です。そのため、日本においても人材育成の機運が高まっています。実際、複数の学部でデータサイエンス学部が創設され、データサイエンティストの検定・認定制度化を視野に入れたデータサイエンティスト協会が立ちあげられるなどといった動きもあります。ただ、人材育成の急速な加速は人余りの状況を作り出してしまいがちです。そもそも、データサイエンティストの数が足りないというのは、期待されたスキルを有していない人が多かったからにすぎず、真に有能なデータサイエンティストが増えればそれほど多くの数はいらないともいわれています。

そして、それが本当であれば、人材育成がうまく軌道に乗って有能な人材が社会に輩出された時点で、少なくとも、スキルの低い既存のデータサイエンティストは淘汰されることになります。

データサイエンティストの将来性

AIの進化や人材育成の加速化などから将来性が危惧されているデータサイエンティストですが、実際はどうなのでしょうか。考えられる可能性とデータサイエンティストとして生き残るには何が必要なのかについて解説をしていきます。

AIが発展してもモデル作成や開発の仕事は残る

AIによるデータ活用の技術は日々発展し、分野によってはもはや人間では太刀打ちできないものもあるのは事実です。その典型例が、膨大なデータの集積及び分析の作業です。また、それに基づいた予測や最適化に関してもどんどん精度が高まってきています。しかし、だからといって、専門家の人間が不要になるというわけではありません。優れたAIでも業界の慣習やデータに含まれない情報をもとにモデル作成をしたり、新たな理論を考案したりといったことは苦手です。また、将来的にもAIがそういった苦手分野を克服し、すぐに人間のスキルを超えるということはないでしょう。

AIが発展してもモデル作成や開発の仕事は残ると考えられ、そこにデータサイエンティストとして生き残る道があります。

データサイエンスに加え、業界知識やビジネス課題を解決できる人材は重宝される

今後はデータの集積や分析しかできないデータサイエンティストは淘汰されていくでしょう。なぜなら、そういったことだけならば、AIだけで十分だという時代がおそらくやってくるからです。しかし、データサイエンスに加えて、業界の知識を十分に積んでいれば話は別です。AIは、分析ができても業界の現状を踏まえた上で課題を解決する方法を提言したりはしません。したがって、それができる人材であれば、どの業界にいっても重宝されるはずです。

ただ、現状ではそのような人材は限られています。そのため、将来的には脱落していくデータサイエンティストと生き残ってさらに飛躍をしていくデータサイエンティストの2つにわかれる未来が予想されます。

今後も求められる人材になるために

膨大なデータをいかに活かすかがビジネスの鍵を握る時代において、データサイエンティストの必要性はますます高まっています。しかし、その言葉が独り歩きして理想と現実の間に齟齬が生まれているのは事実ですし、データサイエンティストと同様の役割を期待されているAIの発達も目を見張るものがあります。このままでは、おそらく多くのデータサイエンティストが淘汰されることになるでしょう。その中で、今後も求められる人材になるためには、まずAIの得意分野と苦手分野をよく理解することが大切です。

そのうえで、AIの得意分野はAIにまかせ、AIの苦手なところを補うようにすれば、多くの企業から求められるデータサイエンティストになれる可能性は高くなるでしょう。つまり、AIと競い合うのではなく、AIを使いこなせる人材になるのです。そのためには常にアンテナを張り巡らせ、技術的な知見を身につけようとする学習意欲が欠かせません。同時に、単なる技術屋に留まることなく、コミュニケーション能力を身につけることも成功のためには重要です。ビジネス側の人間と円滑なコミュニケーションを取ることができれば、得難い人材として重宝されるようになるはずです。

必要なスキルを磨き、データサイエンティストとしてステップアップをしていける道を確立していきましょう。

WriterAI drops編集部
AIを仕事にするためのキャリアノウハウ、機械学習・AIに関するTopics、フリーランス向けお役立ち情報を投稿します。

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