キャリア

2021/10/29

ITコンサルタントとSEの違い

ITプロジェクトの上流工程に欠かせない職業として「SE(システムエンジニア)」と「ITコンサルタント」があります。SIerやコンサルティングファームで活躍するポジションですが、業務範囲や役割にはどのような違いがあるのでしょうか。

この記事では、そんなITコンサルタントとSEの違いについて解説します。仕事内容、スキル、就職先、キャリアパスなど様々な面から比較してみましょう。

役割の違い

まずは、SEとITコンサルタントの役割について比較していきましょう。簡単に言うと、顧客の要望やビジネス上の要件に基づいて適切なシステムの開発を行うのがSEの役割です。一方、IT技術の活用やデジタル化の支援を通じて、クライアントが抱える経営課題を解決することがITコンサルタントの役割です。

SE

SEは、情報システム・IT分野における、モノづくりに携わるポジションと捉えることができます。システム要件を仕様書や設計書にまとめ、ニーズに合ったシステムを構築し、ソリューションを提供していく役割が求められます。質の高い仕事をこなすためにも、最新のIT技術に関する動向の把握、資格取得など、継続的なスキルアップへの姿勢は不可欠です。

技術職として自身のITスキルや知識を十分に活かすのはもちろんですが、それはあくまでクライアントのビジネスやシステム開発に貢献するものでなければなりません。また、SEは顧客の要望を取りまとめ、さらに下流工程を担当するプログラマーへと開発を依頼する立場でもあります。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、全社的なIT導入の推進や戦略立案など最上流工程を担当します。クライアントの経営方針や業務改革の検討段階から話し合いに参加することも少なくありません。業務分析をおこないシステム導入によるコスト削減や売上向上などの企画立案、アクションプランの策定などを行います。

組織構造の改革や経営の意思決定にも関わるコンサルタントとして、ITリテラシーやデジタル技術の知識に止まらず、ビジネスセンスや最新の社会情勢への理解も併せ持っていることが望ましいです。また、事業やビジネスとIT技術をリンクする立場でもあり、舵取り役としてプロジェクトマネジメントにおいても要となる存在です。

仕事内容の違い

SEは、上流から示された業務要件を基に、システム要件定義を行う段階から開発に参画するのが一般的です。一方、ITコンサルタントは、コンセプト・スコープ定義、業務要件定義など、プロジェクトの最も初期段階から関わるという点で違いがあります。以下、より具体的な相違点について確認していきます。

SE

SEは、要件定義を皮切りに、システムの基本・詳細設計、開発スケジュールの作成及びプログラミング、テストフェーズのハンドリング、システム運用保守のサポートなどを主な業務内容とします。普段の仕事では、クライアントの業務担当者(システムユーザー)ともコミュニケーションを取り、最新情報や進捗状況の共有、ツールの効果的な活用方法を適切に提案することなども求められます。

事前に定めたシステム要件の範囲内で、「どんな製品やアプリケーションの利用が最適か」「どういったプログラムを書けば、システムの有用性を最大化できるか」といった観点から問題解決に当たる立場です。また、より具体的な作業を依頼するプログラマーに対しては、プログラムの納期やコードの品質が担保されるよう、責任を持って促さなければなりません。

ITコンサルタント

ITコンサルタントは、導入目的や期待する効果、検証する内容などITプロジェクトの骨組みを決定する上で中心的な存在です。そして、プロジェクト進行中は、経営・業務側の課題を抽出してITで解決するための橋渡し役にならなければなりません。SEほどシステム開発の細部には関わりませんが、より広範をカバーすべき立場にあり、システム全体を俯瞰する姿勢が求められます。すなわち、デジタル化による業務改善を推進するリーダー役として、常に一歩先を見据え、計画実行・危機管理などに率先して取り組む必要があるということです。

具体的には、情報システムの導入に関する企画立案をはじめ、企業のあるべき姿と現状を比較するロードマップの作成、業務プロセスとシステムとの差異の把握、IT資産価値の評価(ITデューデリジェンス)、ビジネス戦略への助言やソリューション設計などが、ITコンサルタントの業務内容となります。業務時に相対するポジションも、情報システムやIT部門だけでなく、経営企画や事業部門がメインとなるケースが見られます。それらの担当では、コミュニケーション時の視野がシステムユーザーとは異なるので、必然的にITコンサルタントも事業運営の視点を養っておく必要があります。

スキルの違い

SEとITコンサルタントの有するスキルは、双方が全く別物というわけではなく、部分的には重なり合っていると捉えることもできます。例えば、SEとして数年の勤務経験を経て、ITコンサルタントに転職したケースでは、具体的な開発スキルに長けたITコンサルタントとして活躍することになります。また、SEであっても、クライアントと細部を擦り合わせる機会は少なくなく、現状把握力やビジネスに活きるコミュニケーションスキルがあった方が有用なのは確かです。

ただし、普段の業務で比重が置かれるスキルには、両者間で一定の違いがあるのは事実です。一般的に、SEは「モノづくり」のエキスパートとしてシステム設計・実装スキルが重視され、ITコンサルタントでは、ビジネススキルや分析・提言能力が重視される傾向にあります。

SE

SEに求められるスキルについては、データベースやネットワークなどシステム知識、アーキテクチャ設計、テストシナリオの作成、プログラミングといった技術面の能力が長けていることが大前提です。それに加えて、クライアントとの折衝力、プロジェクトメンバーとのコミュニケーション能力、ITシステム開発プロジェクトに参画した経験なども大いに活かされる要素です。

特に、業務担当者(システムユーザー)から高い評価を得るには、最新のIT技術の動向を常にブラッシュアップし、相手のニーズを見据えて複数のオプションを提示できるスタンスが大事になってきます。また、情報処理技術者の資格を所持していれば、SEとしての信頼度は一層高まります。

ITコンサルタント

ITコンサルタントには、ソフトウェア開発やIT技術への専門性はSEほど必要とされませんが、経済情勢や各業界への知識、現状分析や業務・システム要件定義に活かせる、論理的思考力・問題解決能力・ドキュメント作成能力などが不可欠です。

具体的には、最新のIT技術への知識、経営・会計・人事分野の基礎知識、金融・物流・製造など業界特有の知識、大手ベンダーが提供する製品やソリューションの動向などをインプットしておく必要があります。また、スキル面では、顧客ニーズを適切なIT企画へ落とし込むスキル、クライアントのビジネスモデルや業務内容の抽象化を経て、実際の情報システムへとモデリングする能力、情報システムのリサーチ・分析・文書化の能力、チームの編成とマネジメントスキルなどが求められます。過去に、システム開発プロジェクトのリーダーを担った経験や、ITに限らず販売・人事・会計などで専門的業務に携わった経験も、ITコンサルタントとして活かされるでしょう。

こうしたシステム開発は、海外、特にアジア圏で行われる機会も増えており、英語や中国語といった語学スキルがあった方が活躍の幅が広がるのは確実です。また、ITコンサルタントは、意思疎通の要として、業務側とIT側の両者と頻繁に関わる機会があるため、コミュニケーション力に長けていた方が、メンバー全体から信頼のおけるリーダーと高評価されやすくなります。コミュニケーションの円滑さは、システム開発プロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではなく、ITコンサルタントは優れたコミュニケーターであることが期待されています。

働く場所の違い

SEとITコンサルタントは、働く場所の違いに着目することでその違いがわかりやすくなるという一面があります。以下では、ITシステム分野で代表的な企業であるSIerとコンサルティングファームについて比較してみましょう。

SIer

多くのSEが所属するのは、SIerと呼ばれユーザー企業に対してソフトウェア開発やIT導入の支援をおこなう企業です。SIer(エスアイヤー)とはシステムインテグレーターを指す日本独自の呼称で、顧客のニーズに合ったシステム導入やITソリューションを提供することが主な業務となります。情報化が進みコンピュータやシステム基盤の利用が普段の業務のなかでも大きなウェートを占めるようになった現代ですが、ITの技術やノウハウに精通したエンジニアを自前で持たない企業も少なくありません。そうした企業の要望を吸い上げ、適切なシステムを構築し、その運用にも携わるのがSIerです。コンサルティングの需要も増えており、転職市場も活況です。専門的な技術者やコンサルタント人材が不足している会社も多く、中途採用の求人は常時募集されている状況といえるでしょう。

大規模案件では、複数の企業が上流や下流でタスクを分担して開発に当たるケースもあります。また、SIerのなかでも上流に位置する企業では、本格的なコンサルティング部門を組織してITコンサルタントを抱える事例もみられます。すべてを自社内で開発をするとは限らず、SIerに在籍するSEは、クライアント企業に常駐して業務を行うケースも少なくありません。一言でSIerといっても規模やタイプによって業務の請け負い方には様々なパターンが見られるのです。

コンサルティングファーム

ITコンサルタントの所属先としてSIerだけでなく、コンサルティングファームもあげられます。高収入を目指せるためSEの転職先としても人気が高いです。戦略系や総合系、組織人事、財務会計など得意領域によりプロジェクトの割合は異なりますが、クライアントの課題解決のためにITシステムの提案は欠かせないものとなっています。ただし、ITソリューションの提供が第一の目的であるSIerとは違い、クライアントの事業拡大やより効率的な業務遂行のため、より広範囲に渡る内容や専門的な業務フローに関するアドバイスをおこなうのがコンサルティング会社の役割です。課題解決の検討段階からクライアントと関わるため、業界出身のプロフェッショナルや外部パートナーとも協力してプロジェクトを支援します。

そのように、コンサルファームではIT以外の領域でも数多くのコンサルタントが在籍して企業の支援をおこなっている点が特徴です。コンサルティングの案件においても実行支援をおこなう割合は増加しており、DX推進やAI/IoTなどでの新規事業、デザインやコミュニケーションといったテーマの性質上、ITと業務面の知識・経験をバランス良く有するコンサルタントの需要は高まっています。IT業界からコンサルタントのキャリアに転じたSEであれば、顧客の技術部門との打ち合わせでも目的やコミュニケーションの面で誤解が生じにくいメリットもあるでしょう。

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