キャリア

2021/09/09

クオンツとアクチュアリーの違い

金融業界を目指すに当たって、クオンツとアクチュアリーのどちらが良いのか迷っている方も多いかもしれません。いずれも高度な数学や統計の知識を必要とする仕事ですが、クオンツからアクチュアリー、あるいはその逆といった転身は難しいとされているため、入社時の選択がその後のキャリアを決める上でとても重要です。

この記事では、クオンツとアクチュアリーの違いについて解説します。業務内容、就職の難易度、待遇、キャリアパス、資格の有無など様々な面から比較してみましょう。

仕事の違い

まずは、それぞれの仕事内容からクオンツとアクチュアリーの違いについて見ていきましょう。

クオンツ

クオンツは「Quantitative(数量的、定量的)」という言葉を語源としています。主な仕事は市場の分析や将来の予測などですが、勘や経験に頼るのではなく、高度な金融工学の手法を用いて大量のデータを数学的に分析するのが特徴となっています。

ビジネスマンの中には直感で先読みをして利益を上げる人もいますが、そうしたことはせずあくまで株価や企業の業績といった客観的なデータを分析して、その結果から今後の動きを予測するのがクオンツの仕事です。

金融商品の開発や投資戦略の立案もクオンツの業務です。さらには、ファンドマネージャーやアナリストなどのサポートも行います。クオンツは数学や統計学の高度な知識を駆使して予測や分析を行いますが、その情報は専門家以外の人でも使えるようにしなくてはなりません。

そのため、プログラミングを行って作成したシミュレーションをシステムに流し込むといった作業が必要となり、コンピュータサイエンスに関する知識も不可欠のものとなります。

一口にクオンツといっても実はいくつかの種類があります。金融派生商品の価格を決めるデリバティブクオンツ、資産運用会社で働くクオンツ、証券会社でリサーチを行うクオンツアナリストなどです。他には、リスク管理やよりエンジニアに近い仕事をするクオンツもいます。

アクチュアリー

アクチュアリーは日本語で「保険数理士(数理人)」と訳されるように、保険会社を中心に活躍する専門職です。統計学や確率論の専門知識を活かしてデータ分析を行うという点はクオンツと共通していますが、その対象は投資ではなく保険や年金です。

いずれも経済情勢や社会情勢に大きく左右されるものであり、制度が正しく機能するためにはリスクの分析が欠かせません。数理的な手法を用いて、こうした不確定な事象を扱うのがアクチュアリーの仕事です。

アクチュアリーが扱う分野は、大きく分けると生命保険・損害保険・年金の3つです。生命保険は加入期間が長く、その間には社会情勢も大きく変化していくことが予想されますので、アクチュアリーはその間会社が健全性を保ち、保険金の支払能力を維持できるよう様々な分析を行います。

損害保険では、事故や災害がどのような頻度で起こるか等のリスク管理が重要な仕事です。年金分野では企業年金を主に扱います。シンクタンクや証券会社では、企業コンサルティングも行うため、コミュニケーション能力は必須です。

資格の違い

このように、クオンツとアクチュアリーには明確な仕事内容の違いがあります。それでは、それぞれの職種につくためにはどのような資格が必要なのでしょうか。

クオンツ

クオンツになるために必要な資格というのは特にありません。就職時に資格の有無を問われることはありませんし、入社後に取得しなければならない資格というのもないでしょう。クオンツは資格がなくては行えない独占業務ではないからです。

ただし、求められる能力はいくつかあるため、それを持っていることを証明するために取っておくと役立つ可能性のある資格というのはいくつかあります。

一つ目がCFAというアメリカの証券アナリスト資格、もう一つがCMAという日本の証券アナリスト資格です。CFAは日本ではあまりメジャーではありませんが、外資系を希望する人なら取っておいても良いでしょう。いずれも経済や金融について広く学ぶことができます。

アクチュアリー

アクチュアリーになるには資格が必要ですが、入社前に取っておく必要はありません。ただし、入社後には確実に必要となる点は覚えておきましょう。アクチュアリーの資格とは、公益社団法人日本アクチュアリー会の正会員になることです。日本アクチュアリー会では毎年資格試験を実施しており、会員になるにはその試験に合格することが必要です。

日本アクチュアリー会の会員資格には「研究会員」「準会員」「正会員」の3つがあり、基礎科目5科目のうち1~4科目合格で研究会員、5科目すべてに合格すると準会員となります。さらに専門科目2科目にも合格し、プロフェッショナリズム研修を受講すると晴れて正会員になれる流れです。

「アクチュアリー」を名乗れるのはこの正会員のみです。難易度の高い試験で正会員はまだ少ないですが、それだけに希少価値があると言えます。

就職難易度の違い

理系の学生に人気があるクオンツとアクチュアリーですが、ここでは就職活動や採用試験における難易度はどの程度のものなのか、そしてどちらがより入社が困難なのかについて解説します。

クオンツ

クオンツの場合、そもそも求人の募集が非常に少ないため狭き門となるのが難点です。その理由は、金融業界のなかでも日常的に高度な金融工学を必要とする企業は少数のため、大部分の企業でクオンツの需要はなく、特に新卒は都市銀行や証券会社など大手企業での募集しかないからです。

大手以外の金融機関では自社で開発や調査を行わず、ベンダーやコンサルに外注することが多いため、クオンツの採用はほとんどありません。

そんな中でも金融業界への就職を希望する理工系の学生は増えており、さらに採用が有名大学に偏っていることもあってクオンツの就職難易度はかなり高くなっています。文系出身者は殆どみられず、理系の修士・博士課程修了者が占める割合が高い傾向にあります。

クオンツを目指すなら、旧帝大クラスの有名国公立大学や早慶レベルの私大で数学・物理学を研究する大学院に進んでおくことが望ましいでしょう。

アクチュアリー

アクチュアリーも採用人数が少なく、競争率が高いという点ではクオンツと共通しています。ただし、クオンツとの大きな違いは、職種としての歴史が長く毎年安定した数の求人が見込める点です。理系出身者の割合が高いですが、経済学部など文系出身者も目指すことができるでしょう。

会社としてもアクチュアリーの仕事はクオンツと違って外注することができませんので、特に生命保険会社の場合はどうしても自社で抱えておく必要があります。そのため、需要が安定しており、新卒採用を行っている企業も多数あります。

また、生命保険会社だけでなく損害保険会社や信託銀行でもアクチュアリーの募集があります。就職する先の業界にこだわりがないのであれば、採用を行っている企業が多いという点でクオンツと比べてアクチュアリーは選択肢にあがりやすくなります。

なお、アクチュアリーの資格は大変難しいですが、大学生でも取得は可能です。先に取っておくと就活においてかなり有利になるでしょう。

転職・キャリアパスの違い

アクチュアリーもクオンツも高学歴かつ希少性の高い職種のため、順調にキャリアを積めば30代で年収1000万円 を超える給与も難しくありません。

将来の転職やキャリアアップを考えた場合、クオンツとアクチュアリーにはどのような違いがあるのか以下で見ていきましょう。

クオンツ

クオンツの採用は新卒同様に中途でも一部の企業に限られているため、求人件数はあまり多くありません。また、景気変動の影響も受けやすいため、タイミングによって同じ職種間での転職が厳しいこともあるでしょう。

ただし、これはクオンツのままで他社に移る場合です。年齢や経歴にもよりますが、クオンツのスキルと経験を活かして他の職種に転職するという場合は、ハードルも低いです。

クオンツから他職種への転職で多いのは、データサイエンティストや機械学習エンジニアです。その他に、転職をせずクオンツとしてキャリアを積み上げたうえで、マネージャーになるという道もあります。

アクチュアリー

アクチュアリーはクオンツに比べると求人が多く、また資格という分かりやすい基準があるため、クオンツと比べ同じ職種間で転職しやすいと言えるでしょう。アクチュアリーの資格は新卒だけでなく、中途採用でも有利に働きます。

アクチュアリーの転職が多いのは保険業界で、特に日系企業から外資系企業へ年収アップを目指して転職する人が多くいます。とはいえ、日系と外資系の間で待遇にそれほど大きな違いがあるわけではなく、福利厚生も各企業ごとの差はあまりありません。

アクチュアリーの場合、特徴的なのはコンサルタントとして独立開業が可能なことです。欧米に比べ、日本ではまだ独立開業するアクチュアリーは少ないですが、正会員の増加に伴って増えていくことが予想されます。

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