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インフラエンジニアに将来性はある?需要やスキルの変化とは

サーバーやネットワーク、データベースなどITインフラに関する技術者が「インフラエンジニア」です。IT導入やデジタル化が加速するなか、求人需要も高く人気の職業ですが、この先将来も安泰なのでしょうか。

クラウドコンピューティングの普及やAI技術の発達などの影響を受け、インフラエンジニアの仕事がなくなるのではないか、給料が下がるのでは、といった意見を目にすることも増えました。

この記事では、そんなインフラエンジニアの将来性、需要の減少が心配される背景などについて紹介します。年収アップの方法やキャリアパスついてもみてきましょう。

インフラエンジニアはなくなる?需要が心配な背景

インフラエンジニアは、サーバーやネットワーク、データベースなどのシステム基盤の設計や構築、運用・管理をおこなう仕事です。高度情報化社会と呼ばれる現代では様々な場面でIT技術が使用されており、どの分野でもITインフラに関わる技術者の必要性は高まっています。

一方で、構築スピードが速いクラウドの登場により、将来的にインフラエンジニアは不要になるのでは?仕事がなくなりリストラされるのでは?という未来の予測に関する不安の声も挙がってきているのです。

そのようにインフラエンジニアに対する社会的な需要の変化が危惧される背景について以下でみていきましょう。

以前はオンプレミスでのインフラ構築が主流

これまではITの基盤環境を構築する場合、自社内やデータセンターに各種サーバーや通信回線などを揃えて運用するオンプレミスが一般的でした。そして、物理サーバーで環境を構築する際は、サーバー機器やルーターといったハードウェアの選定から運用体制を含め準備するため稼働開始までに時間を要していました。

サーバーの設置や保守に関してもエンジニアが対応する必要があり、機器の不具合や故障を想定して24時間の監視体制を敷くことも少なくありません。さらにアーキテクチャの設計には専門性の高い知識が必要になるため、対応できる技術者の数が少ないという問題もありました。

クラウドの普及でエンジニアに求められるスキルが変化

近年ではクラウドの普及により、インターネット上から容易にインフラ環境を構築できるようになりました。オンプレミスの物理サーバーと異なり、クラウド環境ではハードウェアの管理は必要ありません。簡単に環境を構築でき、設定の変更や最適化も手軽に実施できるため、インフラのコストダウンや業務効率化といったメリットが生まれています。

そのような文脈から、クラウドが発達することで、段々と将来的には今のインフラエンジニアがおこなっている仕事はなくなっていくのではないか。という点が不安視されているのです。

もちろん、クラウドサービスへの移行が進んでも、すぐにはインフラエンジニアの仕事がなくなることにはなりません。しかしながら、機器の設定や運用に代わって、仮想化技術などソフトウェアに関する新たなスキルも求められるようになってくるなど人材要件に与える影響は少なくもないのです。

今後のインフラエンジニアに求められるスキルセットについて、以下で解説します。

クラウドの知識・経験

クラウドを活用したインフラ構築が増えているため、今後もインフラエンジニアとして活躍するには、クラウド・コンピューティングに関する知識と経験はより重要になるでしょう。

中でも、AWSやMicrosoft Azure、GCPといった主要なクラウドサービスの知識は必須といえます。そして、オンプレミスとクラウド両方の知識を身につけておけば、それぞれのメリット・デメリットを比較検討することもできるでしょう。

プログラミング

サービスの運用などに関わるインフラエンジニアには、プログラミングなどソフトウェア開発に関するスキルも求められるようになってきています。場合によっては、インフラエンジニアも自動化や効率化に関するコーディング業務を担当することがあるからです。特にクラウドが普及してからは、プログラムでソフトウェアの更新や調整を実施するケースが多くなっています。

インフラエンジニアに必ず必要となるスキルではないものの、PythonやRubyといった需要の高い言語を身につけておけば仕事の幅が広がります。大手クラウドサービスが軽量プログラミング言語を採用しているので、今後はインフラエンジニアの必須スキルになる可能性もあるでしょう。

セキュリティ

オンプレミスと同様に、クラウドでのインフラ設計や構築でも、セキュリティ対策は重要視されています。IoTの増加やテクノロジーが進化するにつれて、ゼロトラストネットワークのような、これまでのセキュリティ対策の概念を超えた技術が求められているのです。

そのため、脆弱性や情報漏洩などの対策に関する業務経験を持っているインフラエンジニアは、企業から重宝されるでしょう。セキュリティ対策は実務経験が豊富なエンジニアが担当することが多いため、組織内でスキルアップしたいならセキュリティに関する知識は欠かせません。

インフラエンジニアの平均年収

インフラエンジニアの平均年収は500万円前後で、一般的な日本の社会人と比べると年収は高水準だと言えます。専門技術を活かした仕事なので、一般職よりも高めに給与額が設定されているのです。ただし全体の給与幅は広く、勤務先や保有するスキルなどによって需要が変化するため、年収が大きく変動する可能性があります。

インフラエンジニアの生存戦略・年収アップのために

そのような状況をふまえ、インフラエンジニアの経験を活かして、さらに自らの市場価値を上げ、年収アップを目指している人もいることでしょう。今の会社で出世する以外にも、転職や独立などの選択肢があります。

この先、生き残るためにも、エンジニアとして適切なキャリアプランを描いてステップアップしていくためにも、スキルアップは欠かせません。しかしながら、具体的にはどのような手段をとっていくべきなのでしょうか。

以下では、年収をあげ、今後も活躍していくための代表的な方法を紹介します。

資格を取得する

インフラエンジニアとして年収をアップしたいなら、インフラに関連する資格を取得するのがおすすめです。資格を持っていれば、特定の知識やスキルを身につけているという証明になるからです。ここからは、インフラエンジニアにおすすめする資格を紹介します。満足のいく年収を目指すために、資格取得を目指しましょう。

Linux技術者認定

Linux技術者認定は、カナダのNPO法人Linux技術者認定機関が認定する資格のことです。Linuxのオープンソースソフトウェアを導入する企業が多いため、習得しておくと便利な資格。試験のレベルは3種類あり、下位のレベルから順番に試験を受けるスタイルです。レベル1では基本的な操作やシステム管理、レベル2ではLinuxのシステムデザインやネットワーク構築などの知識を身につける必要があります。またレベル3では指定されている3つの試験で、最高レベルの知識と技術力を持つ専門家であることが求められます。

シスコ技術者認定

シスコ技術者認定とは、アメリカのコンピューターネットワーク機器開発会社のCisco Systemsが認定する資格です。試験はエントリー、アソシエイト、プロフェッショナル、エキスパート、アーキテクトの5つのレベルに分かれています。ネットワーク資格の最高峰として知られており、最高レベルの試験は難易度も非常に高いと言われています。シスコ技術者認定を取得できれば、高いレベルのIT知識を持つエンジニアだと証明できるでしょう。

Microsoft Azure認定

Microsoft Azure認定とは、マイクロソフト社が提供するクラウドサービスMicrosoft Azureの専門的な知識とスキルを証明する資格です。年齢や学歴に関係なく、誰でもMicrosoft Azure認定を受験することが可能です。試験はAzureの基礎、管理者、開発者、DevOpsエンジニア、アーキテクトの5つの分野で構成されています。さらに初級、中級、上級の3つのレベルに分けられているので、自分の知識量や技術力に合わせた試験を受けられます。

AWS認定

AWS認定とは、Amazon Web Servicesに関する専門知識やスキルを有していることを証明する資格です。Amazon公式の認定資格で、11種類の資格が用意されているのが特徴。アーキテクト、運用、開発者の役割別に、基礎コース、アソシエイト、プロフェッショナルの3つのレベルに分けられています。また、セキュリティ、ビッグデータ、高度なネットワーキング、Alexaスキルビルダー、機械学習の5つの専門分野に関する資格もあります。AWSを導入する企業が増えているため、AWS認定を取得しておくと就職や転職時に役立つでしょう。

転職する

現状よりも年収をアップしたいなら、より収入の良い職場へと転職する方法もあります。しっかり実務経験を身につけたインフラエンジニアであれば、転職することによりITコンサルタントやITスペシャリストなどへのキャリアアップも狙えます。一般的に高収入とされるのは、外資系のITベンダーやコンサルティングファーム、大手SIerです。給与レンジは下がりますが、大手企業やメガベンチャーなどは年収だけでなく福利厚生も充実しているので、安心して働けるでしょう。

独立する

転職ではなく、勤めている企業を辞めてフリーランスのインフラエンジニアとして独立するという方法もあります。これからフリーランスを目指す場合、まずは企業に所属し技術力を磨くと良いでしょう。近年ではエンジニア専門のエージェントがたくさんあるので、ある程度の経験年数があればフリーランスとして仕事を獲得できるはずです。独立すると自分で業務量や活動時間をコントロールできることもあり、正社員として会社から雇用されていた時より年収が上がるケースも少なくありません。

インフラエンジニアのキャリアパス

将来を考える際には、あらかじめ道のりを知っておく必要があります。インフラエンジニアのキャリアパスには、どのようなケースが考えられるのでしょうか。ここからは、インフラエンジニアのキャリアパスとそれぞれの仕事内容についてお伝えします。

スペシャリスト

スペシャリストは専門分野を極めた人材のことです。インフラエンジニアの仕事は幅広く、1人で全ての分野のスペシャリストになることは困難です。そのため、それぞれの分野の高い専門知識と技術力を持つスペシャリストが求められます。高い技術力を身につけることに加え、最新技術や業界の情勢といった情報収集も必要となるでしょう。企業で正社員として働くだけでなく、高い技術力を活かしてフリーランスや起業家として活躍することも可能な職種です。

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャーは、ITインフラを管理するチームをまとめる人のことです。仕事内容は多岐にわたり、プロジェクトの要件定義やメンバー調整、納期管理など様々なことに目を向けなければいけません。効率的にプロジェクトを進めるために、チーム全体を管理する能力も求められます。チームリーダーとしての責任は大きく、大変な業務が多いポジションだと言えるでしょう。

コンサルタント

IT分野の豊富な知識を持っているなら、コンサルタントとして活躍することも可能です。コンサルタントは顧客の課題やニーズに合わせて、IT戦略を考える人のこと。IT関連の知識だけでなく、経営戦略などビジネスに関する知識も学ぶ必要があります。また顧客のニーズを上手く引き出すために、高いコミュニケーションスキルも求められます。

アーキテクト

アーキテクトは経営戦略をもとに、システムの更改やインフラの設計・構築などを行う仕事です。今後の経営を見据えて、長期的に運営できるシステムを考えます。ITに関する知識だけでなく、経営者目線で業務を行う職種なのです。インフラエンジニアと共通する部分が多いため、キャリアチェンジしやすい職種だと言われています。

SRE

SRE(Site Reliability Engineer)とは、Googleが提唱する「システム管理とサービス運用の方法論」を実現するエンジニアのことです。サイトの信頼性を向上するために、システム運用を自動化・効率化していきます。SREはインフラの運用や保守だけでなく、システム全体の改善を図るのが仕事なのです。SREはGoogleが提唱した職種ですが、現在ではWebサービスを提供する様々な企業が取り入れています。

インフラエンジニアの将来性

ここまでインフラに関する市場環境や求人需要について解説してきましたが、結局のところ、インフラエンジニアは将来性のある仕事だと言えるのでしょうか。

ITインフラの需要は引き続き高い

クラウドサービスが増えているものの、全ての情報システムをクラウドに移行できる訳ではありません。外部のサーバーに情報を保管するメリットとデメリットを勘案しても、オンプレミスとクラウドの両方を活用する企業が大半でしょう。

また、大規模な既存システムをオンプレミスで運用している場合に、クラウドへ完全移行するには、システムの改修やデータ移行の手間を考えると莫大な費用がかかるという問題が発生します。そのため、高額な費用を投入してまでクラウドに完全移行する必要はないと判断する企業も少なくないのです。

一方で、新規サービスや新規開発はクラウド環境での構築が主流でしょう。つまり、稼働中のシステムやネットワーク環境を維持管理する従来型の人材に加え、新サービスや新規事業の環境をクラウド上に整える人材も必要とされる状況となったということです。それらを加味すると、今後もインフラエンジニアの求人需要は高いと言えるでしょう。

オンプレミスやIT全般の知識が必要

クラウドがよく利用されるになったとはいえ、インフラエンジニアとして業務の品質を高く保つためにはオンプレミスの知識が必要です。サーバー機器や回線などの選定、ミドルウェア、ネットワークやセキュリティ、Windows ServerやLinuxなどOSの知識、障害対応の経験などオンプレミス環境でのインフラ業務に関わる知識や技術は必須なのです。

また、データベースやネットワーク、サーバーなどインフラエンジニアのなかでも専門領域がわかれており、それぞれの職種に応じて範囲は異なるものの、設計や要件定義などの上流工程は経験の豊富なエンジニアが担当する傾向にあります。

インフラ周辺の業務を見回してより難易度の高い仕事に挑戦するうえでも、クラウドとオンプレミス、双方の知識が必要とされるのです。

仕事がなくなる可能性は低い

クラウドの普及により、インフラエンジニアを取り巻く市場環境は大きく変化しました。確かに、サーバールームやデータセンター内で物理サーバーを扱う技術者の仕事に限定するとインフラエンジニアの求人は今後緩やかに減少していくかもしれません。

しかし、クラウドの利用が拡大しても業務の対象が変わっただけで、ITインフラの構築や保守・運用に関する仕事そのものがなくなるわけではないのです。稼働中のシステム・ネットワークに異常がないかの監視やチューニングをおこなう仕事は依然として必要とされていますし、AIやデータ分析に使用するビッグデータ基盤に関連する技術者、ネットワーク回線やセキュリティに責任を負う技術者のニーズも増えています。

そのように、新たなポジションも生まれるためソフトウェアや情報システムなどIT技術の必要性がなくならない限り、インフラエンジニアの仕事もなくなる可能性は低いと言えます。DXやデジタル化の推進が進む中、テクノロジーの進化は続くはずです。時代の変化に合わせてスキルを身につければ、今後もインフラエンジニアの価値が減ることはないでしょう。

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