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ITスペシャリストとは?なるには?仕事内容・役割・資格・将来性

情報システムの導入やソフトウェア開発を支える専門職に「ITスペシャリスト」があります。技術者として現場で働きたいITエンジニアのキャリアパスとしても人気が高まる職業ですが、将来性はあるのでしょうか。

この記事では、ITスペシャリストの仕事内容や役割、年収・給料について紹介します。資格試験や就職・転職の方法についてもみてきましょう。

ITスペシャリストとは

ITスペシャリストは、IT分野における特定のスキル領域について一定以上の見識を持つ専門家です。システムエンジニアリングにおける技術要素が細分化され、より高度で複雑な情報処理をおこなうにあたり必要なプロフェッショナルと認定されるIT人材が定義されるようになってきたのです。

ITスペシャリストは、システムエンジニア(SE)と対比されることも多い肩書です。SEは、システムの企画から開発・納品までを幅広く担当する職種です。要件定義や設計など上流工程の後は、下流工程を担当するプログラマーとも協力が欠かせません。そんなSEには、技術だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力も求められます。

そのように、ゼネラリストとして幅広い知識やビジネススキルを要するSEに対して、技術力やエンジニアとしての専門性に特化しているのがITスペシャリストと呼ばれる存在です。基本的な知識が備わっていることは勿論ですが、プラスアルファ1つ以上の専門分野を持つことが一般的です。

さらに、経済産業省が策定したITスキル標準(ITSS)によって、ITスペシャリストには明確な基準が設けられています。ITSSでは6つの分野ごとにスキルがレベル分けされ、レベル3以上のスキルを持っている場合にITスペシャリストを名乗ることができます。

一般的なシステムエンジニア以上に専門性の高い知識・技術が備わっているので、プロジェクトを左右する重要なポジションと言えるでしょう。ちなみに、レベル3とは「独立しても十分仕事ができるレベル」を意味します。

ITのスキルは多種多様に及ぶため、ITスペシャリスト制度によって自分の能力をレベルで証明できるようになりました。レベルごとに必要な能力が細かく設定されているので、自分の現状を把握したり、目標を設定する時に活用できます。

ITスペシャリストの役割と仕事内容

ITスペシャリストの主な役割はITのプロとして、実務で要求される要件を満たしプロジェクトを支えることです。専門知識を活かしながら責任感を持って任務を遂行し、技術的な観点からミッションを成功することが重要な役割と言えるでしょう。

また、責任のある仕事を任されることも多いので、常にプロジェクト全体を客観視することも大切です。常に向上心をもってスキルアップを目指し、チーム及び企業の発展に貢献する必要があります。

具体的な仕事内容はITスペシャリストとしての専門分野によって、システム開発・ネットワーク構築・セキュリティ管理など様々です。高度なスキルを活かして、大型案件や大規模プロジェクトに参加することも少なくありません。

さらに、IT業界では日々、新しい技術が登場しています。自分の専門分野に限らず海外の論文や製品情報、テック関連のニュースに対して常にアンテナを張り、ブログや勉強会などでアウトプットしていくことも仕事の1つです。

ITスペシャリストの年収

そもそもIT業界は他の業種と比較すると、年収が高い傾向にあります。厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査結果の概要」を参考に、具体的な年収を見てみましょう。

情報通信業における年収は男性30代で326.7~374万円、40代で427.9~489.9万円、50代で519.3~561.1万円です。ちなみに、比較的年収が低い傾向にある宿泊業・飲食サービス業の男性30代は254.6~281.6万円、50代は324.2~310万円となっています。

30代の若い頃から年収に大きな差があり、年齢が上がるにつれてIT業界がいかに高収入であるかが分かります。業界自体が年収が高い上に、専門的な知識をもつITスペシャリストになればさらに年収がアップします。ITスペシャリストに関しては、到達レベルに応じて年収を決める企業が多いようです。

経済産業省「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果(平成29年8月21日)」を参考に、具体的な年収をチェックします。ITスペシャリストの基準となるレベル3であれば年収は約576万円、レベル4になれば年収約726.1万円です。レベル4に到達するのが難しいことから、レベル3とレベル4の間で大きな差が生まれています。レベル6にもなれば年収は1000万円を超えるケースも多く、能力を磨けば高額収入を目指すことは十分可能です。

ITスペシャリストの専門分野

ITスペシャリストの専門分野は6種類があり、自分がどの分野を極めたいのか検討する必要があります。

プラットフォーム

システム開発における土台を作るのが、「プラットフォーム」です。複雑なシステム構成にならないよう、枠組みとなるプラットフォームを整備して拡張やデータの連係が容易であることを目指します。システムを操作するために必要不可欠なOS・ミドルウェアの設計を担当するのが、主な役割です。また、設計だけではなく、保守・運用・障害対応も行います。システム開発のスタート地点となるため、障害が出ないように設計する必要があります。

ネットワーク

LANやWAN、企業間の通信回線など、ネットワーク環境に関するITインフラを整備するのが「ネットワーク」と呼ばれる分野です。安定した通信速度や容量などのネットワーク環境を維持できるように、設計・構築・運用などを担当します。不具合が生じた場合には速やかに対処し、再度安定した状態へ戻します。快適性に加えて、スムーズな情報の送受信を促すスピード感を維持することも重要です。

データベース

データを管理する上で欠かせない、「データベース」を担当するITスペシャリストも存在します。データベースの設計・構築、構築後のテストなど一連の作業に携わります。重要な情報を問題なく管理できるように、効率的なデータベースを作成することが主な目標です。その他に現在のシステムからのデータ移行や、データベースマネジメントシステム(DBMS)に関する業務を行うこともあります。

アプリケーション共通基盤

より快適にシステムを運用できるようにフレームワークを構築するのが、「アプリケーション共通基盤」です。アプリケーション開発におけるシステムの枠組みを担当します。開発されたシステムからどのような意図があるのか分析し、最適のフレームワークを作る能力が必要です。ツール導入後、不具合が生じていないか確認することも仕事の1つとなります。

システム管理

システム全体のサポートを担当するのが「システム管理」分野のITスペシャリストです。正常にシステムが稼働するかチェックし、今後の運用管理設計を計画していきます。必要であれば運用システムを改善することも可能です。実は災害対策という仕事も、システム管理に含まれています。

セキュリティ

「セキュリティ」ではセキュリティポリシーを策定し、情報漏洩を防ぐ管理を実施します。企業の社会的信用を損なわないためにも、情報の危機管理は非常に重要です。セキュリティ機能の構築・運用を行い、あらゆる攻撃から情報を厳重に保管することが主な目標となります。

ITスペシャリストの資格

ITスペシャリストは専門的な知識・技術が必要なので、様々な資格が存在します。全体的に難易度が高めなので、自分の能力に合ったものを選ぶことがポイントです。

基本情報技術者試験

ITスペシャリストを目指す登竜門と言えるのが、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が提供する「基本情報技術者試験」です。レベル2に属し、合格率は20~30%くらいになっています。1年に2回開催され、IT業界未経験でも受験することが可能です。

ITスペシャリスト以前に、IT業界で働く上で必要不可欠な基本知識を網羅しています。幅広い問題が出されているので、ITに関する知識全般を学習する必要があります。今後難しい資格の取得を目標にしているなら、まずは基本情報技術者試験にチャレンジするのが最善です。

応用情報技術者試験

「応用情報技術者試験」は基本情報技術者試験と同じく、IPAが主催しています。レベル3に分類されているので、応用情報技術者試験に合格すれば晴れてITスペシャリストの仲間入りを果たします。

合格率は20%前後で、基本的な内容に加えて応用問題が出されます。問題が難しくなるものの試験の対象範囲が広いため、自分の専門分野以外から問題が出ることも少なくありません。実際にシステムエンジニアなどの職種で経験を積みながら知識・技術を身に付けた上で、チャレンジした方が合格率アップに繋がります。

データベーススペシャリスト試験

基本情報技術者試験や応用情報技術者試験よりも高いレベルに位置しているのが、「データベーススペシャリスト試験」です。合格率約15%前後の国家資格に認定されています。データベースのITスペシャリストを目指すなら、是非取得を検討してみてください。

資格を取得すれば、データベースに関するあらゆる知識・技術があることの証明と成り得ます。データベースに関する要件定義・運用など、仕事をする上で求められる専門的な内容が出題されます。

ネットワークスペシャリスト試験

「ネットワークスペシャリスト試験」データベーススペシャリストと同じくレベル4に設定されています。合格率が10%前後を記録しているため、難関試験として有名です。ネットワーク構築にはクライアントと交流する機会もあるので、クライアントの要求を分析する能力も求められます。

システムアーキテクト試験

システム開発の上流工程を担当する人を「システムアーキテクト」と呼びます。そのため「システムアーキテクト試験」では、システムエンジニアに必要な上流工程に関する知識を習得することが可能です。システムアーキテクトは経営戦略に関わるストラテジストから指示を受け、システム開発を行っていきます。

ITスペシャリストを目指す上で上流工程を学ぶことはスキルアップの一種となるので、システムアーキテクト試験を受験する人が多いです。合格率は15%前後で、仕事で活かせる実践的な内容を学習できます。

ITスペシャリストになるには

学生・社会人からITスペシャリストを目指すなら、まずは将来自分がどのような人材になりたいのかイメージすることが大切です。そうすれば自然と極めたい分野が分かり、ITスペシャリストとしての道が見えてきます。

ITエンジニア経験が必要

新卒や第二新卒以外で、未経験からITスペシャリストを目指す際は、何かしらのエンジニア経験が必要となります。まずは、プログラマーやネットワークエンジニアなどで未経験可の求人に応募して、ITエンジニアとして就職することを目指しましょう。

就職後はITエンジニアとして実務経験を積みながら、自分に合った専門分野を見つけ知識を蓄えていきます。徐々にスキルを磨きながら、資格取得を目指すことも十分可能です。「経験は最大の近道」と思って、是非IT業界へ飛び込んでみてください。

転職もひとつの方法

エンジニア経験がある段階でITスペシャリストを目指す場合、転職するのも1つの手段です。特に現在の職場では専門分野を活かせないなら、転職した方が自分の能力を活かせる可能性があります。専門的なスキルがあれば引く手あまたなので、IT業界は経験者の転職が比較的しやすいです。

ちなみに、実際に転職するなら、ミスマッチを防ぐために企業の評判をヒアリングしたり、求人の募集要項を確認して年収や待遇面などもしっかり確認しておきましょう。

ITスペシャリストのキャリアパス

キャリアパスとしては主にハイレベルなITスペシャリストを目指す、プロジェクトマネージャーやコンサルタントを目指すという2パターンが挙げられます。現場で経験を積んで専門知識を深めれば、よりプロフェッショナルなスタッフとして仕事に貢献することが可能です。独立してフリーランスエンジニアになる人も多く見られます。

プロジェクト管理や企業の幹部を目指すなら、ITストラテジストという資格を取得するのも有効です。IT業界の数ある資格の中でも最も難関と呼ばれるほど、専門性が高くなっています。

ITスペシャリストのキャリアパスは能力を極めるほど、高額収入となる可能性が高まります。将来像をイメージしながら、どこまで能力を高めたいのか考えてみてください。

ITスペシャリストの将来性

現在、あらゆる業界においてデジタル変革が加速しており、ITスキルを持った人材が不足しています。特にITスペシャリストのように専門的なスキルをもつ人材を必要とする企業は多く、経験豊富なベテランは引く手あまたと言っても過言ではありません。

この先の将来についても、セキュリティやAIなどのジャンルに関して、多くの企業から需要があると予測されており、専門分野を持つITスペシャリストの将来性は高いと判断できます。

また、IT業界は技術革新によって市場が拡大しつつあるため、新しい技術をいち早くとりいれることで技術者としての価値はより一層高まるでしょう。

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