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2021/02/18

ITアーキテクトとは?なるには?仕事内容・スキル・年収・資格・将来性

企業が利用するIT環境は従来に比べ複雑化しています。クラウドやSaaSの利用など会社内で複数のツールやソフトウェアを活用する機会も増えてきました。そのような、ITシステム全体の効率化やシステム基盤の設計を担当する職種が「ITアーキテクト」です。

一方で、IT業界で働いている人の中でも「ITアーキテクト」という肩書を聞いたことはあるものの、詳しい仕事内容は分からないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ITアーキテクトに必要なスキルや年収や役立つ資格などを紹介します。転職や独立などキャリアパスについてもみていきましょう。

ITアーキテクトとは

ITアーキテクトは、情報システムやソフトウェアなどIT領域における構想をとりまとめ、ビジネス要件に合致した最適なシステム全体の構造設計や計画立案をおこなう職業です。社会におけるデジタル化が加速し、インターネットや高度な情報処理が普及するなか、ソフトウェア開発もより複雑化しており、経営にフィットしたシステム基盤構築のニーズが高まっています。

「アーキテクト」という言葉は設計図や設計者を意味します。つまり、ITアーキテクトとは簡単に言うとITに関する設計者のことです。ビジネスの課題解決に役立つ、ITシステムのグラウンドデザイナーと言い換えることも可能です。

AI、IoTなどの先端技術の導入においてもアーキテクチャ設計に関する人材が求められるプロジェクトは多いです。ネットワーク、データベース、セキュリティなど特定分野の専門家とも協同しながら、経営戦略とIT戦略の橋渡し役として上流工程の提案をおこなうのもITアーキテクトに求められる姿です。

以下で、ITアーキテクトの業務内容や似たIT職種との違いを紹介します。

ITアーキテクトの業務と役割

ITアーキテクトの主な仕事はクライアントの要望を受け、情報システムやネットワーク、Webアプリケーションなどのアーキテクチャに関する設計をおこなうことです。経営戦略にも関わる大規模なシステム改修や、業務効率化や事業拡大といったテーマで新規開発の企画段階から取り組むこともあります。

また、要件定義やシステム全体の方向性を提案するだけでなく、稼働後の運用・保守の仕組みに関しての提言をまとめるなどといった役割も担います。

そのように複合的な技術領域を横断して活用するためには、ITに関して豊富な知識を有するだけではなく、様々なフェーズの開発に従事した経験や、交渉力、ドキュメント作成力など幅広い能力を求められます。

ITスペシャリストとの違い

そんなITアーキテクトと比べられることの多い職種が「ITスペシャリスト」です。そもそもITスペシャリストとは、情報システムに関する技術ジャンルの1分野を専門的に極めた人材のポジションです。実装や開発段階を担当する場合も多く、ITアーキテクトが作成した設計図をもとに、実際にシステムを組み立てるのがITスペシャリストという役割分担が主流となっています。

ITアーキテクトが作曲家で、ITスペシャリストが演奏家であるという捉え方もありますが、両社は対等な立場で仕事をします。システムエンジニア(SE)のキャリアパスとしては、ITアーキテクトとITスペシャリストのどちらも人気があります。

ITアーキテクトの専門分野

ITアーキテクトは、具体的には次の3つの専門分野における設計を担当します。また、これら3つの整合性を俯瞰的に判断し、全体として管理するのもITアーキテクトの仕事です。

アプリケーションアーキテクチャ

業務処理を目的としたアプリケーションの設計に関する分野が、アプリケーションアーキテクチャです。ユーザーの使い勝手の良さを考慮し、業務要求を実現するための機能やUIなどを設計に落とし込むのがこの分野の役割です。

インテグレーションアーキテクチャ

複数のシステムをそれぞれ個別に立ち上げ、別々に運用している企業は珍しくはありません。インテグレーションアーキテクチャは、それら複数のシステムの連携・相互運用を実現することに特化した分野のことです。企業内だけではなく、複数の企業間のシステム連携を担う場合もあります。

インフラストラクチャアーキテクチャ

IT分野におけるインフラとは、基盤を意味します。情報システムの基盤となるプラットフォームやセキュリティ、ネットワークなどの設計に関する分野がインフラストラクチャアーキテクチャです。また、この分野にはシステムの運用管理やサーバー構成の設計も含まれます。

ITアーキテクトのスキル

ITアーキテクトはシステムに関する重要な役割を担うため、必要となるスキルは多岐に渡ります。代表的なものとしては、次の11のスキルが挙げられます。独学で学べるものは学び、実務で磨くべきものは業務を行いながら意識的に磨いていくのが賢明です。

アーキテクチャ設計

アーキテクチャ設計とは、さまざまな経営課題や業務効率化などの問題をIT化や情報処理システムで解決するためのアーキテクチャの構築や要件定義などを行うスキルです。企業が求める機能をソフトウェアで実現するためには欠かせないスキルであり、経験やノウハウの蓄積がものを言います。

設計技法

さまざまなモデリング技法を理解し、ビジネスや業務フローの把握、データベース構造の作成などに適用するためのスキルが設計技法です。また、アプリケーションやインフラストラクチャなどの設計スキルも含まれます。案件に適した方法を選ぶ能力もまた必要です。

標準化と再利用

標準化と再利用スキルのうちの標準化とは、開発における標準を定義するスキルのことです。再利用は既存資産の再利用などに関するスキルのことで、これらのスキルアップにより、高品質なシステムの構築が可能となります。

コンサルティング技法の活用

コンサルティング技法の活用とは、分析ツールやモデルを理解し、コンサルティングで活用するスキルのことです。適した技法を取捨選択し、実践する能力も大事です。

知的資産管理活用

点在する知的資産や独自のノウハウなどを総合管理し、状況に応じて活用するためのスキルが知的資産管理活用です。また、知的資産にはプロジェクトで新たに発生した知的成果物も含まれます。

テクノロジ

ITアーキテクトは常にIT業界の動向を把握し、関連技術を案件に適用できるようにしておかなければなりません。テクノロジがそれに関するスキルであり、把握して適用するためには関連技術標準の理解も必要となります。

インダストリ

インダストリとは関連業界の動向、具体的にはビジネスや技術、競合の動向などを把握するスキルのことです。また、関連分野のアプリケーションを把握し、案件に適用する能力もインダストリスキルの1つです。

プロジェクトマネジメント

ITアーキテクトにもプロジェクトの統合マネジメントを行うスキルが求められます。プロジェクトマネジメントがそのスキルであり、プロジェクト計画を策定して資金や要員を確保し、管理する能力も欠かせません。

リーダーシップ

ITアーキテクトには、エンジニアなど複数のメンバーを指導し、指揮するリーダーシップが求められます。説得力を持って指揮するためには、抽象的な言葉ではなくより具体的な技術的指針の提示が必要です。

コミュニケーション

コミュニケーションも、ITアーキテクトにとって必須となるスキルの1つです。というのは、メンバーに対して情報伝達をしたり、クライアントに計画を説明して理解してもらう必要があるからです。相手の話をしっかりと理解し、自分の考えを正確に伝える能力を磨きましょう。

ネゴシエーション

ITアーキテクトは、いわゆるイエスマンでは務まらない仕事です。複数の関係者の利害を調整して合意を得る能力、つまりネゴシエーションスキルを高めておく必要があります。特にステークホルダーなどとの交渉には必須なスキルです。

ITアーキテクトの年収

ITアーキテクトを目指す人にとって、とても気になるのは年収がどれくらいなのかという点ではないでしょうか。求人サイトなどの調べによると、ITアーキテクトの平均年収は700万円を超えています。年収1,000万円以上も十分可能であり、実際に1,200万円という高年収を得ているITアーキテクトも存在します。

なお、日本人の平均年収は436万円(国税庁の民間給与実態調査令和2年発表による)です。つまり、ITアーキテクトの平均年収は全体の平均を大きく上回っており、年収的にもやりがいのある仕事だと言えるでしょう。

ITアーキテクトのキャリアパス

ITアーキテクトの代表的なキャリアパスとして挙げられるのが、次の3つの職種です。ITアーキテクトそのものがIT人材の目標の1つとなっており、どの進路を選ぶのかはその人次第です。

ITコンサルタント

ヒアリングや業務観察を通してビジネス課題の整理を行い、課題の解消に役立つITの活用をクライアントに提案するのがITコンサルタントの仕事です。そして、それを受けて問題解決のための設計をするのが、ITアーキテクトの役割となっています。

ITコンサルタントの方が提案や企画などのより上流工程を担当する傾向にありますが、立場的にはほぼ同等です。平均年収はそれほど違いませんが年収のレンジが広く、場合によってさらなる高年収が期待できるのがITコンサルタントです。

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクトの管理責任者です。プロジェクトを包括的に管理し、成功へと導きます。システムの設計や構築を行うのがITアーキテクトであり、そのプロジェクトを円滑に進めるのがPMの役割です。

指揮監督を行うのがPM、設計を担当するのがITアーキテクトと担当が異なるだけで、基本的にはどちらが上ということはありません。マネジメント方面に特化したいのであれば、PMを目指すと良いでしょう。平均年収はほぼ同じであり、1,000万円以上の年収も十分に狙えます。

IT責任者

IT責任者とは、IT戦略の責任者のことです。CIO (Chief Information Officer)と呼ばれる場合もあります。経営陣の一員として働くことが多く、一般的にITアーキテクトよりも大きな権限を有します。CIOが主に担当するのはITマネジメントとITビジネス創出、そしてITリスクマネジメントの3つです。

CIOの平均年収は2,500万円であり、役員クラスになると年収が5,000万円を超える場合もあります。CIOになるためには、ITとビジネスの両面に渡る豊富な知識と経験が必要です。

最近ではIT戦略の重要性が増しており、CIOのほか、CTO(Chief Technology Officer)やCDO(Chief Digital Officer)などテクノロジー領域を管轄するボードメンバーの肩書もふえています。ITアーキテクトとして地道に勉強を重ねて経験を積み、チャンスを待つのが賢明です。

ITアーキテクトに役立つ資格

ITアーキテクトは国家資格ではないため、取得しなければならない資格というものはありません。とはいえ、ITアーキテクトになるために取得しておくと役に立つ資格は存在します。ここでは、システムアーキテクト試験(SA)を紹介します。

システムアーキテクト試験(SA)

システムアーキテクト試験は、情報処理技術者試験の1つです。最高レベルであるレベル4に該当し、難易度の高い試験として知られています。ITアーキテクトとしてのスキルや知識を有する証明となり、社内でのキャリアアップに役立つので年収アップが期待できます。また、転職の際に有利になるのもメリットです。受験資格は特になく、誰でも試験を受けられます。ただし、合格率は12~13%ほどですので、しっかりと勉強しておく必要があるでしょう。

ITアーキテクトになるには

ITアーキテクトが担当する仕事の領域は幅広く、求められるスキルは少なくありません。アプリケーションやインフラの設計に関する知識はもちろん、複数のシステムを連携させる能力も必要です。そのため、未経験からいきなりITアーキテクトになることは現実的ではありません。

システムエンジニアやプログラマーからITアーキテクトへキャリアアップするためには、IT人材としての経験をできるだけ積み重ねておくのかが肝心です。リーダーシップは必要不可欠ですし、コミュニケーションスキルも欠かせません。

何から勉強したら良いのか分からない場合には、前述のシステムアーキテクト試験を目指すのがおすすめです。また、エンジニアの専門スクールなどで学ぶのも1つの方法です。

ITアーキテクトの将来性

ITアーキテクトの将来性は明るいと目されています。どうしてなのか、3つの観点からご紹介していきます。

ITの高度化によりアーキテクトの需要は高い

将来性が明るいという要因の1つが、ITの高度化です。さまざまな分野でITは活用されていますが、ITの高度化により使いこなすのが難しい状態になってきています。そこで、需要が高まっているのが、ITのプロフェッショナルであるITアーキテクトです。ITアーキテクトはITに関する高度なスキルを有していることが多く、有効なシステムを設計・開発するためには欠かせない存在です。ITアーキテクトとしての仕事をこなせる人材が不足していることもあり、需要は高まるばかりです。

橋渡し役としてより広範囲な対応が求められる

ITコンサルタントはクライアントに対し、ビジネスの観点からITの活用を提案します。また、PMはプロジェクトを管理し、ITを実装します。ITシステムを設計することで、この両者を取り持つのがITアーキテクトです。ビジネス案件でITを実装する際の橋渡し的存在であるという点も需要が高い理由の1つとして挙げられます。ITを必要とするビジネスシーンは拡大を続けており、橋渡し役としてのITアーキテクトはより広範囲な対応を求められています。

クラウドやデータサービスなど専門分野の細分化も

クラウドやビッグデータなどといったデータサービス分野の普及が急速に進んでいます。ところが、データサービス分野を担当するITアーキテクト人材は不足しており、求めに対し供給が追い付いていません。専門分野の細分化が強まってきていることもあり、クラウドやデータサービスを扱うITアーキテクトのニーズは高く、需要はさらに増える一方です。

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