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セキュリティエンジニアの平均年収・給料事情

不正アクセスやハッキングなどの脅威に対抗する技術職が「セキュリティエンジニア」です。情報漏洩やサイバーテロなど情報セキュリティへの需要が増加するなかセキュリティの仕事で稼げる給料や生涯賃金も高まっているのでしょうか。

この記事では、セキュリティエンジニアの平均年収や給料について年代別や経験別などの切り口で紹介します。おすすめの資格や転職・就職の方法についても見ていきましょう。

目次

セキュリティエンジニアの平均年収

セキュリティエンジニアの平均年収は、様々な調査機関や企業による発表がされています。例えば、平成29年に経済産業省が発表した平均年収は758万円程度でした。その一方で、dodaの調査では501万円とされています。また、求人情報を集める求人ボックスでは、正社員で働くセキュリティエンジニアの平均年収を548万円と公表しています。

調査時期や内容により平均額は異なりますが、ここではセキュリティエンジニアの平均年収について、会社員とフリーランスそれぞれの働き方別でみていきましょう。

セキュリティエンジニアの平均年収(会社員)

セキュリティエンジニアの年収は資格の有無などによっても異なりますが、全体をならすと500~700万円程度です。一般的なSEやプログラマなどの職種に比べても高い水準といえるでしょう。世界的に有名なインターネット会社(外資系)などでは、さらに年収が高額になる傾向があります。

国内企業であれば、だいたい年収600万円前後が相場と言われていますが、外資系企業の平均年収はだいたい800万円前後と言われています。

セキュリティエンジニアの単価相場(フリーランス)

フリーランスのセキュリティエンジニアの単価は経験やスキルによって異なるほか、クライアントとの交渉手段によっても差が出ると言われています。一般的なセキュリティに関する案件の月額報酬は60万円から80万円ほどでしょう。

エージェントで紹介される案件の単価相場で言えば、経験1年から2年程度のフリーランスで月単価が40万円から50万円程度で、経験が1年未満のフリーランスであれば月単価は30万円程度です。

他の職種との比較

スキルをしっかりと持ったセキュリティエンジニアであれば、一般的なサラリーマンの年収よりも高額になると言えます。SE・プログラマやネットワークエンジニアの平均年収が400万円台ですので、ほかのITエンジニアよりも高い給与を得られる傾向にもあるでしょう。

経済産業省によって平成29年に発表された「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」でも、IT技術スペシャリストのセキュリティエンジニアは、IT保守やIT運用・管理などの一般的なITエンジニアよりも平均年収額が高額になっています。

セキュリティエンジニアの給料事情

セキュリティエンジニアの年収は、雇用形態のほかスキルや実績、保有資格などで異なるのが一般的です。企画や設計などの上流工程も担うセキュリティコンサルタントと、現場での運用のみを担当するセキュリティエンジニアでは年収額は異なるでしょう。

また、アメリカで活躍するセキュリティエンジニアは日本を拠点にする人と比較して、倍程度の年収がある人も少なくはありません。国内では、近畿地方の平均年収が高い傾向にあり、福岡県は500万円と給与水準が低い傾向にあると言うデータもありました。

セキュリティエンジニアの年収は高い?安い?

2020年に発表された国内の平均年収は436万円ですので、501万円程度の平均年収額が期待できるセキュリティエンジニアの年収は高いと言えるでしょう。

ただし、正社員のセキュリティエンジニアの給料分布は幅広く、だいたい360万円から1600万円程度まで幅があるとされています。個人によっては給料が安いと感じる場合もあるでしょう。

年齢別の平均年収

経験によって給与が異なるセキュリティエンジニアは、年齢によっても平均年収に差があります。20代の平均年収はだいたい350万円ですが、25歳から29歳までの平均年収は400万円程度です。

30代前半は470万円程度で後半が515万円程度、40代前半は555万円程度で後半が586万円程度、50代前半は610万円程度と年齢が上がるにつれて平均年収額もアップしていきます。

しかし、50代後半になると平均年収は下降気味になり、50代後半は601万円程度、60代は451万円程度です。

生涯賃金の目安

501万円の平均年収額を目安にしたセキュリティエンジニアの生涯賃金は、2.25億円とされます。国内の平均生涯賃金は1.90億円ですので、3,500万円程度平均よりも高くなると予想されるでしょう。

セキュリティで年収1000万稼ぐには

国内ではセキュリティエンジニアの年収が海外と比較して安い傾向にあるとしても、年収が1,000万円以上のケースもあります。高収入を実現するためのポイントを知っておきましょう。

上流工程を担当する

セキュリティエンジニアの実務経験はより多くの案件へトライすることで増えます。特に設計やコンサルティングなどを行う上流工程の経験があると、幅広い規模でさまざまな状況に対応できるようになります。より多くの案件へ素早く対処できるエンジニアには、高い報酬を支払っても確保したい企業は多いです。

大手企業、外資企業に転職する

大手企業などの給与テーブルが高い組織に所属すると単純に給料は高くなります。また、サービス規模の大きな企業はネットワークをダウンさせるリスクや、情報漏えい事故を避けるために、よりスキルの高いセキュリティエンジニアへ投資するのが一般的です。

また、海外を拠点に活躍しなくても、エンジニアの給料が高い外資系企業に就職することで国内でも年収が800万円以上になると言う場合も多くあります。転職時のポジションやスキルのレベルによっては、1,000万円以上の年収になるケースもあるでしょう。

フリーランスで独立する

実務経験が豊かなセキュリティエンジニアはフリーランスとして独立することも可能です。高い市場価値があると企業などに認めてもらえば、会社員でいるより高収入を得ることも可能です。サイバー攻撃や情報漏洩に備えるセキュリティコンサルタントやホワイトハッカーとして活躍するケースもあります。

IT業界はスキルや経歴が単価へ直結する分野ですので、企業が必要とする人材像を把握した上で、自分の強みが何かを明確にすることも必要です。

セキュリティエンジニアが求められる分野

高いレベルのセキュリティを必要とする分野によって、セキュリティエンジニアの需要は高まっています。セキュリティエンジニアが必要とされている具体的な分野や、どのように必要とされているのかを紹介しましょう。

コンサル系

経営戦略の提案やITシステムの導入に関する提言などを行うコンサルティングファームは、クライアント企業からあらゆる情報セキュリティへの相談をうけています。大規模なシステムや多くの個人情報を扱うクライアントとも接触する機会が多いです。

業務上取り扱う顧客情報のほかに、機密情報についても漏えい事故を起こせば信用問題になるでしょう。そのようなリスクを避けるためにも、徹底したセキュリティー対策が必要とされている分野です。

メーカー系

自社で製品の開発や製造を行うメーカー企業は、特許関連や技術情報などが外部へ漏えいすれば、多大な損失を被るリスクが高いです。また、製造過程で管理システムにIT技術を採用しているメーカーも多くあります。

サイバー攻撃によって製造が停止するなどのリスクを避けるためにも、セキュリティー対策をしっかり行いたいケースは多いのです。

インフラ系

ガスや電気など公共インフラは、生活に欠かせないものとして関わる企業や消費者の数も多くサービスの提供が停止してしまうと深刻な問題となりかねません。

また、検針業務を自動化するスマートメーターの導入が積極的にされている時代です。サイバー攻撃によるリスクは高く、高度なセキュリティレベルが求められています。

商社系

クライアントや取引先の商品情報や価格情報など、企業の機密情報を商社では多く取り扱っています。万が一、機密情報の漏えい事故を起こせば、ブランディングの低下は免れないでしょう。

信用を失い取引先とのビジネスが破たんするリスクを回避するためにも、セキュリティ対策は万全に行う必要があります。

金融系

クライアントの財産を取り扱う金融系の銀行・保険・証券などの業界は、情報流出によって不正送金や情報の悪用がされる可能性が十分あります。

顧客から資産を預かる金融機関はより高いレベルで個人情報を守護する必要のある分野と言えるため、スキルの高いセキュリティエンジニアが常に求められていると言えるでしょう。

セキュリティエンジニアに転職した場合の年収

年収が高いと言えるセキュリティエンジニアは、知識だけでなく経験も必要な分野ですので、転職してすぐに高収入が得られるかは、IT分野での業務経験がある場合と未経験者でも異なるでしょう。

未経験で転職した際の年収相場

人手不足のセキュリティ分野では、20代若手など未経験から転職・就職することもあります。その際の年収としては、300万円台が相場となります。SEやプログラマなどIT業界で就業経験がある場合の、セキュリティエンジニアへの転身であれば、年収が400万円程からスタートするケースも多いです。

また、実務経験がなくても、一定のセキュリティに関するスキルや知識がある場合だと300万円よりは高めになるケースもあるでしょう。

セキュリティエンジニアに転職するには

セキュリティエンジニアとして働くために必ず取得しなければならない資格はありません。学歴が大卒以上か高卒以上か学歴不問かは企業の採用方針によるでしょう。全くの業界未経験からセキュリティエンジニアとして雇用する企業自体は多くはありませんので、未経験者を歓迎するポテンシャル求人を探して応募しましょう。

一方で、ニートやフリーターなど職歴なしからセキュリティエンジニアへの転職は難しい傾向にあります。セキュリティ関連の資格を取得していても実績や経験がなければ就職へのハードルは高いです。

IT技術者として経験を積む

初めてIT業界へ転職するならセキュリティエンジニアにこだわらず、まずはプログラマやインフラエンジニアとして就職して経験を積むのも一つの方法です。

プログラミングを独学したり、スクールに通うなりして身に着けたらプログラマの求人に応募してみましょう。セキュリティと関連のあるインフラエンジニアもキャリアパスとしては魅力です。

コンピュータネットワークの管理や運用を行うネットワークエンジニアや、サーバーの構築や保守管理を行うサーバーエンジニアはインフラ業務を担当する技術者です。未経験から就職できたらIT業界で経験を積み、次の転職でセキュリティエンジニアを目指すのです。

必要な知識やスキルを勉強する

インフラエンジニアやネットワークエンジニアを経験することで、システム管理や監視、障害への対応や、ネットワーク構築、ミドルウェアやサーバーの設計構築など、セキュリティエンジニアにとっても必要な知識やスキルを勉強できます。

加えて、実務では企業や担当者との交渉や駆け引きも大切になるため、コミュニケーションスキルも身につけておきましょう。

中途採用の求人に応募する

セキュリティエンジニアになるためには新卒が有利と言われますが、第二新卒や中途採用で転職してくるエンジニアも多いです。ITやセキュリティに関連する業務経験があれば、ポテンシャル枠でも採用されやすいでしょう。

30代後半以降の中途採用の求人では、PM・PLなどマネジメント経験が求められたり、経験豊かでセキュリティ対策スキルの高いエンジニアを必要としていたりするケースも多いですが、20代や30代前半では未経験でも転職できる可能性はあります。

セキュリティエンジニアが年収アップするために

年収の良いセキュリティエンジニアは、幅広いIT技術を駆使できる人が多いと言われます。セキュリティエンジニアの年収には個人差がありますが、できるだけ高い年収を得るためには何を目指すべきか考えましょう。

高年収なセキュリティエンジニアの特徴

高年収を得るためには、セキュリティ分野に関するシステム開発の実績や深い知識や技術を持っているのは基本です。加えて、情報セキュリティの専門家だと証明できるようなハイレベルの資格を数種類取得しているケースだと、資格を持たない人よりも年収が高いと言われています。

また、セキュリティだけでなく、ネットワークやITアーキテクチャに関する経験を持っていたり、クラウド知識に精通していたりと、幅広い能力を獲得しているハイスペック人材も多いです。

日々変化するウイルスやセキュリティホール、脆弱性に関する情報や進化するIT技術に関して興味を持ち、常に新しいスキルを身に着けていることも高収入なエンジニアの特徴と言えるでしょう。

セキュリティコンサルタントを目指す

セキュリティエンジニアとして実績を積み、企画や設計などの業務経験をこなせばコンサルタントに必要なスキルが身につきます。セキュリティコンサルタントは、堅牢なシステムを構築し、安全性を強化するだけでなく、情報漏えい事故の防止策や予防の手段を総合的に提案するのが主な仕事です。

セキュリティエンジニアとしてスペシャリストになるよりも、セキュリティコンサルタントになった方が、より経験やスキルへ説得力が伴うでしょう。

プロジェクト単位で実績や年齢を重ねれば、コンサルタントとしての需要は高まるだけでなく、高収入を得られる傾向にあります。

ホワイトハッカーを目指す

セキュリティだけでなくネットワークやコンピュータ、幅広いプログラミング用語などに精通しているホワイトハッカーは、不正アクセスやサイバー攻撃を仕掛けてくるハッカーやクラッカーに対抗できる技術者です。

サイバー攻撃などのリスクに直接対応できることから、ホワイトハッカーの需要は高まる傾向にあり、取得している資格によっては年収1,000万円以上の高収入を得ているケースもあります。

セキュリティエンジニアにおすすめの資格

就職や転職に活かせる専門資格を取得して、スキルアップやより好待遇の企業へ転職を目指しているセキュリティエンジニアは少なくありません。

シスコ技術者認定

ネットワーク関連機器メーカーの世界最大手シスコシステムズが実施しているIT分野の技術者認定です。世界共通の基準で実施される国際資格ですので、セキュリティエンジニアとしてのスキルが世界的に通用すると認定されます。

資格試験は5種類のグレードに、9種類の分野に分かれていて、自分が属する業界に適応する資格を取得できるのがメリットです。中でも難易度が極めて高いCCIEを取得すれば、年収アップが見込めるでしょう。

情報処理安全確保支援士試験

経済産業大臣によって認定されている国家資格で、情報セキュリティのスペシャリストとしてのレベルが認定される資格です。合格率は低く試験対策をしっかりと行う必要があります。

合格すれば企業に対し、サイバーセキュリティに関して適切な対策や情報システムの管理などが主導的に遂行できる人材だと証明できます。セキュリティエンジニアとしては取得しておきたい資格のひとつです。

ネットワーク情報セキュリティマネージャー(NISM)

NISMは、セキュリティエンジニアのキャリアアップに影響を持つ資格で、取得すればセキュリティのスペシャリストとして活躍できるでしょう。講習会に出席して認定試験を受験しますが、2017年には受講者のすべてが取得しています。

セキュリティエンジニアの将来性

セキュリティエンジニアは年収が比較的高い傾向にありますが、長く続けられる職業かを考えてみましょう。

サイバー攻撃の脅威は増え続ける

IT化する社会では、システム上でのセキュリティに関する脆弱性は日々発見され、サイバー攻撃によるリスクはなくなることがありません。年々、巧妙化し複雑になっているサイバー攻撃の主な目的は、企業や個人を対象に機密情報の搾取や金銭を奪うことなどです。

ITによってビジネスや資産運用などに利便性が高まる中で、セキュリティ対策は将来的にますます脚光を浴びる分野と言えるでしょう。

セキュリティ市場が拡大し求人ニーズは高い

情報セキュリティの市場規模は拡大傾向にある反面、実務に携わる技術者は常に人手不足と言う問題を抱えています。日本では労働人口の減少もあり、2030年頃には約80万人程度のエンジニア不足が懸念されているのです。

企業などは情報資産の漏えいを避け、ブランディングに傷をつけないためにも、情報セキュリティ対策のスキルを必要としています。

しかし、エンジニアの育成には時間がかかりがちで、急激にIT人材を増やすのは不可能です。そのため、若年層からシニアまで幅広い年齢層で需要がある職業とも言えるでしょう。

社会貢献度が高い仕事として認知

社会インフラを対象にしたサイバーテロや企業の機密情報を盗むサイバー攻撃、金銭の不正利用などを防ぐには、常日頃からのセキュリティ対策が必要です。

国や企業はセキュリティ対策に予算を確保し、人材不足の中でスキルの高いエンジニアを確保するために報酬も高めに設定しているケースは少なくありません。

あらゆるセキュリティリスクから、社会や経済、人々の生活を守る仕事ですので、社会貢献度が高いのも働きがいがある職種と言えるでしょう。

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