キャリア

2020/06/17

フルスタックエンジニアとは?仕事内容・スキル・年収・将来性

ひとりで何役ものエンジニア業務をこなすことができる人材として「フルスタックエンジニア」と呼ばれる技術者がいます。開発者としての高いスキルや万能性を武器にソフトウェアやウェブ開発の担い手として注目が集まっています。

この記事では、フルスタックエンジニアの仕事内容やスキル、将来性などを紹介します。給料や年収、転職・就職・独立などのキャリアについてもみていきましょう。

フルスタックエンジニアとは

フルスタックエンジニアとは、システム開発やウェブ開発などのエンジニアリング業務において設計から開発・運用まで全ての行程を手掛けることができるエンジニアを指します。

通常は担当毎にパートを分けてチームで開発するような複数の技術分野を一人で担当できるためマルチエンジニアと呼ばれることもあります。

以下では、万能なスキルを持つフルスタックエンジニアの強みや必要性などについて、見ていきましょう。

フルスタックエンジニアの強み

まずは、フルスタックエンジニアの強みについて紹介します。サーバーサイドの開発であろうがインフラストラクチャの設計であろうが、分野にとらわれずに幅広い仕事をこなせる点はフルスタックエンジニアの特徴です。その他にも重宝される面はあるため以下で紹介します。

人件費の削減につながる

プログラムを組み本番環境でシステムとして稼働するまでには様々な工程があります。また、開発の内容により必要なスキルや経験も異なります。そのため、環境構築、バックエンド、フロントエンドなど専門領域に長けたエンジニアがそれぞれの持ち場を担当し、組み合わせて1つの機能やアプリを完成するのが一般的です。

しかし、フルスタックエンジニアは求められるスキルセットの異なる開発工程やプログラミングのタスクを1人でこなすことができます。通常は複数名のエンジニアが稼働して開発する仕事を1人で完了できるのですから、人件費削減になる点がメリットといえるでしょう。

プロジェクトが完了した後に、追加で開発を依頼するときも同様です。新たに技術者を募集せずに、フルスタックエンジニア1人で開発することができます。

開発スピードを向上できる

複数のエンジニアが力を合わせて開発を進めていると、足並みを揃えるのに苦労することがあります。チームでの開発を進める際には、全体像がわかるよう設計や要件をドキュメントに記載する必要がありますし、プロジェクト全体を管理するPM(プロジェクトマネージャー)などのポジションも求められます。

誰かしらの作業を待ったり何度もミーティングを重ねたりで、システムの完成スピードが遅くなることは珍しくありません。その点、フルスタックエンジニアが1人で開発をおこなえばスピーディーにゴールまで向かえます。トラブルが起きたときも、他のチームと話し合いながら解決する手間は不要です。

フルスタックエンジニアの必要性

フルスタックエンジニアがいると、人件費削減になったり開発スピードが向上したりと数々のメリットがあります。企業側のメリット以外にもエンジニアにフルスタックが求められる理由には何があるのでしょうか。

ここでは、フルスタックエンジニアの必要性や求められる背景について解説します。

ITエンジニアの役割の変化

フルスタックエンジニアが求められる背景に、エンジニアの役割の変化があります。従来のIT業界でエンジニアに期待されていた役割のうち大きなウェイトを占める業務が依頼されたシステムの開発をおこなうことでした。

開発したシステムを納品してしまえば、ひとまずエンジニアの役割は終了だったのです。ところが、Web業界やスマホゲームなどの開発では機能追加や改善など開発後の運営が重要視されることもあり、次第にエンジニアの役割に変化が訪れてきています。

サービスの安定稼働や開発したシステムに関連する追加開発など、サービスのローンチ後に担当することが増えてきたのです。

海外開発やクラウドサービスの登場

海外に開発を委託するオフショアやクラウドなどの変化が、エンジニアのスキルセットに影響を与えている背景もあります。クラウドの伸びにより、サーバーやデータベースなど開発インフラの構築は必要な分だけ調達すればよいSaaSのカスタマイズ中心になりつつあります。

その分ツールで代用できる内容では開発の需要が減り、さらにはオフショアで働く人材との競争が激しくなっています。クラウドが浸透すると開発スピードの向上やコスト低下が可能になり、ロースキル案件はオフショアでの海外委託と競争になっています。

そのため、国内のSIer(システムインテグレーター)などでもより高い開発スキルを持つエンジニアが期待されているのです。

技術のコモディティ化

情報システムやWeb開発を進めるためのフレームワークやライブラリが整備され、インターネット上での情報取得も容易なため以前より開発スキルの習得は容易になってきています。

プログラミングに関するオンライン学習サイトや書籍などの技術情報も充実する昨今では、Webサイト・スマホアプリなどの構築に必須とされるエンジニア技術はコモデティ化してきているといえるでしょう。

一方でテクノロジーが進歩したことで、システムのアーキテクチャは高度化しプロダクトに使われる技術要素は複雑化しています。そのような状況もフルスタックエンジニアの必要性を高める一因です。

フルスタックエンジニアの年収

フルスタックエンジニアは、一般的なエンジニアよりも多くの仕事をこなし得る人材です。その分、年収にも期待できるのでしょうか。フルスタックエンジニアという職種の定義があいまいなため、平均年収は不明確です。

もちろん、フルスタックといわれる以上は一般的なエンジニアの平均といわれる年収500万円よりも高い年収は期待できます。600~700万円ほどが相場でしょうか。企業にもよりますが、数人分の仕事を1人でこなすことで年収アップの交渉要素にできる期待があります。

経済産業省が調査したIT関連産業の給与等に関する 実態によると、2017年8月に報告された結果ではエンジニアの平均年収が約592万円となっています。IT関連職種の給料としては、プロデューサーやディレクター、営業・マーケティングに次いで高い年収です。

フルスタックエンジニアとしての実績をもとにフリーランスで働くこともできます。独立したフリーのフルスタックエンジニア場合の単価は月60~80万円程度と会社員の給料よりもさらに期待できます。

フルスタックエンジニアの仕事内容

フルスタックエンジニアが実際にどのような仕事をしているのか、見ていきましょう。幅広い範囲の仕事ができるスキルを持つフルスタックエンジニアですが、全ての開発を1人でおこなうこともあればチーム内のメンバーとして役立つスキルを提供することもあります。

フロントエンド開発

ユーザーが直接ふれる部分について開発するのが、フロントエンド開発です。例えばメッセージを送信するようなチャットアプリあれば、デザイナーが企画したUIデザインを基に文字の入力や送信などの操作をコーディングして実装します。

開発にHTMLやCSS、JavaScriptなどの言語を使うことになるためサーバーサイドとは勝手が異なりますが、こうした複数分野のスキルを持っていることもフルスタックエンジニアの特徴です。フルスタックエンジニアがフロントエンド開発をおこなえると、コーダーの必要性がなくなります。

バックエンド開発

バックエンドは、ユーザーからは見えないサーバー側で動作する部分のプログラムを指します。ECサイトで注文を行う際の受注処理や在庫連携、決済や発送管理など何らかの機能が裏側で作動したりするのも、バックエンドでシステムが処理しているからです。

この開発をおこなうのは通常バックエンドエンジニアで、JavaやPHP、Perl、Rubyといったプログラミング言語を操って開発を進めます。フロントエンドもバックエンドも両方開発できるフルスタックエンジニアの場合、双方に担当者がいる場合より開発がスムーズになるでしょう。

モバイルアプリ開発

Webサイトの開発とiPhoneやAndroidなどスマホアプリの開発では使用する言語が、Objective-C、Swift、Kotlin、Javaなどと異なるため開発担当者が分けられるのが一般的です。モバイル特有の技術や決まりごとiOS、Androidそれぞれの端末の挙動などもあり、両方を1人でこなすのは負担が重くなりがちです。

しかし、双方の開発に必要な知識と技術を備えているエンジニアがいれば、より連動性の高い開発が可能になるでしょう。

インフラ周り

ネットワークやサーバー関連のインフラ構築や保守運用、監視についても、専門的な知識を持った特定の担当者が置かれるのが一般的です。サーバーのセットアップ、日々のバックアップなど、万が一のシステムダウン時に備えるのがインフラ担当の仕事です。

インフラ周りをフルスタックエンジニアが担当すると、開発環境やサービス提供中の問題発生時にインフラ担当者に頼らずに済みます。Webサイトがダウンしたとき、インフラ担当者の対応をバックエンド担当がひたすら待って復旧させるような手順も不要です。

フルスタックエンジニアのスキル

万能とされるフルスタックエンジニアですが、何でもできるというのでは漠然としています。具体的にどのようなスキルが必要とされるのか、紹介しましょう。

プログラミング・開発スキル

エンジニアの中には、普段プログラミングをしない業務もあります。しかしフルスタックエンジニアはプログラミングによる開発業務をおこなうこともあるため、プログラミング言語の知識や開発スキルが必要です。プログラミング言語にも様々な種類があり、業界で使われることの多い言語を複数みにつけておくと有利になります。

ミドルウェア、OSなどの知識

Windows・IOS・Android・Linuxといったコンピュータの管理システムであるOSについてスキルを身につけておくと、インフラ周りやバックエンドの仕事ができるようになります。OSの機能強化やアプリの中間ソフトであるミドルウェアについても、同様です。ただしミドルウェアの種類は多数になるため、代表的なものについて操作できることを目指すとよいでしょう。

クラウドの利用

クラウドサービスは低コストでスピーディーに開発を進められるため、利用する企業が広がってきています。そのタイプは、SaaS・PaaS・IaaSの3つに分かれます。SaaSはサービスの提供、PaaSはプログラム・データベースなど実行環境の提供、IaaSはインフラの提供です。目的によって使い分けられるクラウドサービスですが、幅広い範囲の仕事を担当するフルスタックエンジニアはいずれの知識も持っておくと有利になります。

フルスタックエンジニアになるには

フルスタックエンジニアを目指すにあたって、何が必要かを押さえておきましょう。

複数の専門分野をもつ

フルスタックエンジニアは、一言でいえば何でも屋さんです。アプリの開発をおこなうかたわら、インフラの整備をすることもあります。最初から何でも出来なければならないわけではなく、徐々に複数の専門分野を持てるように成長していけばよいでしょう。市場でニーズの高いスキルを選んで身につけていけば、より価値の高いフルスタックエンジニアになることができます。

業界全体を俯瞰する目をもつ

どのスキルを身につけるかは、フルスタックエンジニアが生き抜けるかどうかの分かれ道になります。市場でニーズの低いスキルをいくつ身につけても、仕事を得るのが大変だからです。その意味で、業界で何が必要とされているのか動きに敏感になっておく必要があります。

ITスキルは、短期間で流行が去るものも少なくありません。新たに身につけるだけの価値があるスキルか、持っているスキルが活用できるチャンスが来そうかなど、業界全体を俯瞰する目を持ちましょう。

スキルアップを欠かさない

マルチなスキルを持っていながら、どのスキルも中途半端というのではフルスタックエンジニアとしての価値が下がりかねません。持っているスキルは常に磨き続けつつ、新しいスキルにも目を向けることが大切です。関わっている仕事で必要になりそうなスキルについても、進んで学ぶようにすると期待されます。

フルスタックエンジニアの実態

活躍が期待され、ニーズも高まりつつあるフルスタックエンジニアですが、実態はどうなのかを紹介します。

激務であるケースが多い

開発のあらゆる工程を1人でこなすのは、まぎれもなく激務です。通常、開発には要件の定義・設計・開発・テスト・稼働・運用といった側面があり、それぞれに担当者がつきます。しかし、フルスタックエンジニアはこれらの工程を1人で担当するのです。個人の裁量にもよりますが、仕事量が多くなることは間違いありません。

安定した生活が手に入るとは限らない

数人分の仕事を1人でこなすのだから、収入も上向くと思うかもしれません。ところが、そうとも限らないのがフルスタックエンジニアの実態です。理由として考えられるのが、会社員エンジニアはスキルと給与や収入が必ずしも連動しないことです。

本人のスキルよりも所属する会社やポジションが与える影響が強いため、安定した収入を目指すには、大手企業や外資企業への転職が必要になることもあるでしょう。

また、フリーランスで働く際にも単にフルスタックというだけでなく需要のある開発スキルを身につけるなどアピールポイントを増やしていく必要があります。

転職が有利になる可能性が高い

オフショア開発に目を向ける企業が増えてきていることからもわかるように、国内のエンジニアはまだまだ不足しています。

スキルや実績を積んだ経験者の需要は高といえます。その点、フルスタックエンジニアは複数のスキルを持っているため転職で有利です。

採用する側も、1人のエンジニアで数人分の仕事をしてくれるフルスタックエンジニアを雇えば人件費を軽減できます。転職で有利に持ち込むには、市場でニーズの高いスキルを供えておくことが大切です。

フルスタックエンジニアの将来性

ここでは、フルスタックエンジニアの将来性や今後の需要を占ううえで存在意義となるポイントについて見ていきましょう。

フルスタックエンジニアの存在意義は今後も続く

フルスタックエンジニアの存在意義は、生産性向上の観点からいっても引き続き期待されていくと思われます。ひとりあたりの生産性が高く効率よく開発をできれば、低スキルな技術者を数多く雇用しなくても済み、エンジニア組織のマネジメントや進捗管理に手間をとられることもありません。

スタートアップ・ベンチャー企業での求人需要

スタートアップ企業では、潤沢にあるとは限らない予算内で市場に認められる開発をしなければなりません。少ない人件費で会社組織の運営をやっていくには、フルスタックエンジニアのように複数の開発を担当できる正社員のエンジニア人材が必要です。

資金調達前のベンチャーやスタートアップは潤沢な予算で外部企業に開発を頼めるような位置にもないため、即戦力でマルチな技術を持つエンジニアを求める傾向があります。

サービスの構築の難易度が下がっている

クラウドサービスの普及により、オートスケーリングやマイクロサービスなどの概念が浸透してきました。サービス構築の難易度が下がっているのもフルスタックエンジニアにとって有利な状況です。

クラウド上でシステムの保守や運用が可能になり、専門のインフラエンジニアでなくてもシステム構築が容易になってきています。

これまでエンジニアがおこなってきたサーバー構築や保守などの業務負担が軽くなる分、フルスタックエンジニアは他の開発業務にまい進できるのです。

フルスタックエンジニアの市場価値は高い

市場においてフルスタックエンジニアのニーズは高まっており、その価値も認められています。多数のスキルを持ち、1人何役もこなしてくれるフルスタックエンジニアを目指すのは無理なことではありません。

スキルを増やしつつ様々な経験を積むことで、いつの間にかフルスタックエンジニアになっている人もいます。さらなる活躍を目指して、市場で重宝されるフルスタックエンジニアになってみませんか。

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