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クラウドエンジニアとは?仕事内容・スキル・年収・資格・将来性

クラウドインフラの設計・構築・運用をおこなう職業に「クラウドエンジニア」があります。オンプレミスからパブリッククラウドへの移行が進むなか、インフラの保守・運用や開発エンジニアといった職種からクラウドエンジニアを目指す方も多いのではないでしょうか。

この記事では、クラウドエンジニアの仕事内容、平均年収、役立つ資格、将来性などを紹介します。さらに、転職やキャリアチェンジなど未経験からの挑戦方法についても解説します。

クラウドエンジニアとは

クラウドエンジニアは、クラウド製品を利用したシステムの設計、構築、運用などを担当する技術者です。昨今では、コスト削減や開発スピードの向上を目的にインフラ環境をオンプレミスからパブリッククラウドへ移行する企業が増加しています。また、新規開発などのプロジェクトではクラウド上でインフラ環境を構築することが一般的になってきました。それに伴い、クラウドの導入や開発を推進するクラウドエンジニアの需要も伸びているのです。

クラウドサービスとしては、アマゾンが提供するAWS(Amazon Web Services)やマイクロソフトの提供するAzure、グーグルの提供するGCP(Google Cloud Platform)が有名です。クラウドエンジニアとして働くには、通常のITスキルに加え、それら主要なクラウド製品を使いこなすための知識と経験が必要です。

ここからは、クラウドエンジニアという職種についてより理解するために、ITシステムを支えるインフラ環境の変化や他のエンジニア職種との違いについても見ていきましょう。

ネットワークを通じサービスや機能をユーザーへ提供できるクラウドが登場したことで、インターネットのインフラ環境は変化してきました。クラウドを導入するとネットワークの先にある環境を利用し、自分のPC内以外でもデータの管理や作業ができます。クラウドはITにおけるインフラ環境としても機能している技術です。そのため、クラウドエンジニアはクラウドとインフラの両方のスキルや知識が求められる職種となっています。

インフラ環境の変化(オンプレミス運用からクラウド運用へ)

クラウドが登場したことで、ITシステムやWebサービスを運用するインフラ環境は劇的に変化しました。クラウドが登場する以前は、ITシステムやサービスを構築する際には、データセンターやオフィスなどにサーバーやネットワークなどの機器を設置して環境を構築するオンプレミスという形態が主流でした。

オンプレミスでの環境構築では、物理的な機器を調達するため、新規の立ち上げには1~3ヶ月ほど時間がかかっていました。また、物理的な機器を扱うため故障の対応などに現地での作業が必要でした。それに対して、クラウド環境では、機器を管理する手間が必要ありません。

また、利用の開始についても管理画面上からすぐにインフラ環境の構築が可能となっています。そのように、クラウドが登場したことで従来よりも効率的に環境構築をおこなうことが可能になっているのです。

インフラエンジニアとの違い

インフラエンジニアは、サーバーやネットワークなどの設計・構築・運用といったIT環境の基盤作りがメインの職種です。その意味では、クラウドエンジニアもインフラエンジニアのひとつといえるでしょう。大規模サービスの運用を支えるインフラエンジニアから、クラウドエンジニアへ転向するキャリアパスも存在します。

一方で、サーバーエンジニアやネットワークエンジニアと呼ばれるハードウェアや機器を扱うインフラエンジニアとクラウドエンジニアとは求められるスキルセットが異なるため注意が必要です。

クラウド上でのインフラ構築が主流となった今でも、データベースなどのミドルウェアやLinuxなどのOSに関する知識は必須です。そのようなインフラ知識に加え、クラウドサービス各社が提供するツールやSDKなどへの習熟がクラウド技術者としてはこれから先もとめられるようになるでしょう。

クラウドエンジニアの仕事内容

ここからは、より具体的にクラウドエンジニアの仕事内容について見ていきましょう。

インフラの設計

インフラの設計は、クラウドエンジニアにとって重要な仕事の1つです。ITシステムやサービスが動作する最適な環境を把握しながら、具体的な要件や指示内容にまとめていきます。

どのクラウドサービスを利用するかといった選定や利用の特徴、開発目的などに留意しつつ、セキュリティや将来的に拡張するであろう機能なども考えての設計を行います。

ITシステムのアーキテクチャを考えるうえで、要件定義や企画の知識が必要となります。オンプレミスとクラウドと両方の環境を利用する場面もあるため、データベースやインフラ全般の知識も求められます。

クラウドの構築

クラウドの構築では作成した設計書をもとに、クラウド上でシステム環境を構築します。新規に開発する際の環境構築だけでなく、稼働中のシステムをオンプレミスからパブリッククラウドに移行することもあります。

構築業務の具体的な内容としては、クライアントの要望に合わせたソフトウェアの導入や仮想サーバーの作成、ストレージ設定、データベースの構築などがあります。クラウドシステムに必要な要素を用意するため、必要なコードをプログラムで書くことも仕事に含まれます。

システムの構築後は、問題なくサーバーが動作するかをテストする必要もあります。

運用・保守

システムの構築後には、各種ITサービスが安定して稼働できるよう運用・保守を行わなければなりません。オンプレミスに比べ構築が容易なクラウド環境において、エンジニアの仕事としては、このような保守・運用こそが中心といえるでしょう。

とはいえ、データセンターなどでの物理機器に関する作業は不要なため、OSやミドルウェアのバージョンアップ、システム監視のほか、運用コストを管理するなどがクラウドエンジニアの仕事といえます。

主なクラウドサービス

主なクラウドサービスは大きく分けて3つあります。この段落では、それぞれの特徴やサービスの内容などを解説します。

AWS

AWS(Amazon Web Services)は、ECプラットフォームで有名なAmazonが提供するクラウドサービスです。190か国で100万人以上のユーザーが利用し、日本国内では10万以上が活用するなど一番人気のサービスといえるでしょう。開発者向けに提供するサービスの種類も豊富で、細かく分けると700以上のサービスがあります。レンタルサーバーやデータの保存、バックアップなどクラウドにおける基本的なサービスはもちろん、IoTシステムの構築や機械学習(Machine Learning)などに関するサービスやAPIを利用できるのが特徴です。

GCP

GCP(Google Cloud Platform)は、検索エンジンを提供するGoogleが提供するクラウドコンピューティングサービスです。GCPは従量課金制で、一定の容量までは無料で利用でき経済的です。Google社内で使用されている、高性能で高いセキュリティ機能を持ったインフラを利用できます。また、Googleカレンダーやスプレッドシートといったツールとの連携にも適しています。さらに、検索用や動画配信用のプラットフォームのほか、データ解析や機械学習系サービスなどとも相性がよいとされています。

Azure

AzureはMicrosoftが提供するクラウドサービスで、初期費用なし(従量課金制)で導入することができます。Microsoftの製品と相性が良く、企業内で構築した業務システムとOffice系ソフトなどを連携させやすくなっています。Azureの主なサービスは、ネットワーク上で利用できるサービスを提供するIaaSと、クラウド上のアプリなどを稼働させる環境を提供可能なPaaSです。

クラウドエンジニアのスキル

クラウドエンジニアを目指す場合、どのようなスキルが必要なのか把握することが大切です。具体的に必要なスキルを、この段落で紹介していきます。

インフラ全般の知識とスキル

クラウドエンジニアはITインフラに関わることが多いです。そのため、インフラ全般の知識とスキルを高めておく必要があります。

サーバー、ネットワーク

サーバーやネットワーク構築などのインフラ周りもクラウドエンジニアの業務領域として担当することがあります。エンジニアとして最低限、インフラ構築に必要なスキル・知識は身につけておきましょう。

サーバーやネットワークエンジニアとして経験を積んだ人が、クラウドエンジニアへ転職するケースもあります。クラウドエンジニアには運用や監視を自動化するソフトウェアエンジニアの側面もあるため、知識だけでなくコードを書くなどして運用効率を向上した経験を積んでいることも重要です。

転職者としてクラウドエンジニアを目指す人の場合、このようなプログラミング経験と実績をチェックされるケースも少なくありません。

ミドルウェア

ミドルウェアはITインフラの構築において欠かせない要素です。クラウドにおいても、データベースをはじめとした様々なミドルウェア製品に関する知識・スキルも必要です。

クラウドエンジニアの仕事では、分散処理など特定の動作や業務に必要な機能を備えたミドルウェアを使い設計したシステムを組み上げていくこともあります。インフラエンジニアとして仕事の領域を広げて活躍するためにも、ミドルウェアやこれに準ずるツールなどのスキルと知識は習得しておきましょう。

オンプレミス

オンプレミスは自社でシステムを保有して運用することを指しますが、クラウドエンジニアにも必要なスキル・知識です。

クラウドエンジニアの仕事では、オンプレミスからクラウドへ移行する案件も多いので、適切な作業を行うためにもオンプレミス運用のインフラ環境についても仕組みを理解しておく必要があります。

サーバーやネットワークなどの接続に使用する物理機器に関する知識や、システムをクラウドへ移行させるスキルを習得することが大切です。

クラウド技術に関連する知識

クラウドに関する知識も併せ持つことで、クラウドエンジニアとしてさまざまな領域で活躍できます。ここからは3つのポイントに絞って必要な知識を解説します。

サーバーの仮想化

サーバーの仮想化は、クラウド環境を構築するうえで基本的な技術です。新たにクライアント先でクラウドシステムを導入する際、仮想サーバーを構築するシーンは多くあります。構築するための手順やメリット・デメリット、機能などを把握して、スムーズに作業できるようにしておきましょう。

ネットワークの仮想化

物理ネットワークを変えることなく、柔軟にネットワーク環境を再構成する仮想化技術は、クラウドエンジニアにとって重要な知識です。具体的には、VLANやVPN、NFVなどを習得しておきましょう。

VLANは限定的なデータのやり取りを行うため、1つのネットワークを複数に分割して、それぞれの環境を独立させる技術です。VPNは高いセキュリティレベルでネットワークを接続するため、仮想的な専用回線を設ける技術を指します。

NFVはネットワーク機器の機能をアプリケーションソフトとして仮想サーバーに実装し、柔軟にネットワーク環境を変えられる技術です。

データベース技術

クラウドエンジニアの扱うサービスでは、異なる特徴を持ったさまざまなデータベースサービス(RDBMSやNoSQLなど)も提供します。立ち上げるサービスや格納するデータにあわせデータベースを構築したり、情報の統合を実施するなどデータ処理に関する経験があれば歓迎されます。

また、各データベースの特徴や仕組みのほか、クライアントに合わせて適切な提案ができる知識も必要です。

クラウドサービスを扱うスキル

クラウドエンジニアとしての知識を実践で活用するためにも、クラウドサービスを扱ううえで必要なスキルについても習得しておきましょう。

Infrastructure as Code

Infrastructure as Codeはシステム構築にかかる工数の削減や手作業によるヒューマンエラーを防ぐことを目的とした、インフラ設定をプログラム化して自動的に作業を行う手法です。同じようなクラウドサービスのインフラ環境を構築する際も、この手法であれば簡単に行えます。

DevOps、CI/CDの知識

DevOpsは開発・運用それぞれの部門が連携し協力しながら開発を進める手法です。この手法により継続的なシステム改善やリリースサイクルの高速化などを目指せます。さらに、信頼性・生産性を向上させ、サービスの価値を高めることもできます。

また、CI/CDというのは、継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)を指し、DevOpsを実現するためのツール・手法です。CIはバグの早期発見による品質向上に期待でき、CDは本番環境までのデプロイを実際に行い、動作確認をすぐに行えます。

ビジネスの変化に対応しつつ、高品質のサービスをスピーディに提供するため、クラウドエンジニアにとってはこのような手法に関する知識も必要です。

コミュニケーション力

クラウドエンジニアはクライアントへのヒアリングを行うケースも多く、コミュニケーション能力を求められます。例えば、オンプレミスからクラウドへ移行する際、これまでのシステム仕様をきちんと把握するためにもクライアントやシステム開発者にヒアリングを行います。また、別の部門との協力や調整など、コミュニケーション能力が必要になるシーンは多いです。

クラウドエンジニアの年収

転職情報サイト「求人ボックス」の求人データによると、正社員で働くクラウドエンジニアの平均年収は約574万円です。インフラエンジニアの平均年収503万円と比べても、71万円高い金額になっています。クラウドエンジニアは他のインフラ系のエンジニア職種よりも幅広い知識やスキル、経験が求められます。

そのため、経験者の募集が多いことも影響していると思われますが、エンジニア系の職種の中で比較してもクラウドエンジニアの給料は多い傾向にあるといえるでしょう。また、派遣社員のクラウドエンジニアの平均時給は2,451円とされており、こちらも高い水準にあります。

クラウドエンジニアになるには

クラウドエンジニアを目指す際は、ここで紹介する2つのポイントを意識してみましょう。

求められる知識・資質を磨く

クライアントや案件、求人ごとにクラウドエンジニアに求められる知識は異なります。何を求められているのか把握し、習得することは自分の評価にもつながっていきます。長く活躍できるエンジニアになれるよう、何が求められているのかを常に把握できるようになりましょう。

また、クラウドエンジニアとしての資質がチェックされることもあります。持っているスキルはもちろん、技術に対する好奇心やこだわりなど、チェックされる資質はさまざまです。やりたい仕事や将来的なキャリアなども考え、エンジニアとしての資質を磨いていきましょう。

未経験からでもOKの企業に就職

クラウドエンジニアの求人は実務経験を求められることも多いですが、必要な資格やスキル・知識を持っていれば未経験でも入社できる企業は存在します。自分にできることや貢献できること、将来的なビジョンなどをアピールし志望企業の求める人材とマッチすれば、内定をもらえる可能性は十分あります。

クラウド関連の資格のおすすめ

この段落では、クラウドエンジニアが取得しておくべき資格を3つ紹介します。

AWS認定ソリューションアーキテクト

AWS認定ソリューションアーキテクトはAWSに関する知識の深さを証明してもらえる資格です。実際の業務でも活用できる知識を習得できるほか、客観的に自分の能力を証明できるためクラウドエンジニアに人気の高い資格となっています。この資格を取得することで、クライアントの要件や目的にあった環境構築ができ、AWSを最適に利用し実装できるようになります。

Google Cloud 認定資格(Google Cloud Certified)

Google Cloud CertifiedはGoogle Cloudを活用したアプリケーションやデータソリューションなどの設計・開発・運用といったクラウドエンジニアに必要なスキルを習得したことを認める資格となっています。

この資格にはいくつか種類があり、アプリケーション開発のレベルを認定するものや、インフラ関連の開発レベルを認めるものなどさまざまです。クラウドエンジニアを目指すうえでは、Professional Cloud Architect、Professional Cloud Developerなどの試験があります。

Microsoft Azure 認定試験

Microsoft Azure 認定試験はマイクロソフト認定プロフェッショナルという試験を通して認定が行われます。難易度はFundamentals、Associate、Expertの3つに分けられ、合格者のスキルや知識をそれぞれのレベルで認定します。認定試験の種類は基礎編や開発者、管理者、DevOpsエンジニアなどに分かれているので、求めるスキルや知識に応じて試験を選択しましょう。

上記の3つ資格取得にチャレンジする前に、LinuC(Linux技術者認定)の取得を目指すというのも一つの考え方です。クラウド上で動かすサービスのベースはLinuxである場合が多いので、AWSなどを使いこなそうとすると必ずLinuxの知識が求められます。あらかじめLinuxや仮想技術の基礎を身につけておくことは、クラウドエンジニアとしての成長を加速させることができることでしょう。

クラウドエンジニアの将来性

クラウドエンジニアを目指す人は、自分のキャリアをイメージするために将来性についても把握しておきましょう。ここからは、クラウドエンジニアの将来性や、将来的に必要な能力などについて解説します。

導入企業が増えておりクラウドの需要は今後も高い

インフラ基盤をクラウド化する企業は増加傾向にあるため、クラウドエンジニアの需要はより高まる可能性があります。さらに、クラウドに関連する新しい技術やサービスが導入されていけば、より幅広い領域での活躍が求められます。

今後のITエンジニアはクラウドの知見が必要

さまざまな企業がオンプレミスからクラウドに移行しているため、ITエンジニアは特定のスキルや知識だけでなくクラウドの知見も求められます。オンプレミスで培った経験や知識はクラウドでも活かすことができるので、インフラエンジニアとして長く活躍するためにもクラウドエンジニアへの転向も検討しておきましょう。

先読みできる能力が求められる

インフラ環境を構築する際は、将来的に起こる恐れのあるトラブルや障害を防ぐとともに、発生した場合の対処についても検討しなければなりません。クラウドエンジニアはインフラ環境の構築も業務の1つとなっているため、先読みできる力が求められます。

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