キャリア

2020/03/19

データサイエンティスト転職の天国と地獄

人材不足が叫ばれるデータサイエンティストや機械学習エンジニアでは、採用活動も活発化しています。
そんな引く手あまたの人材であれば、転職によるキャリアアップを考えるのも当然ですが。
しかし転職の結果が天国になるか、地獄になるか。
それぞれの顛末を追ってみましょう。

キャリアアップ=転職なのか?

実務経験のあるデータサイエンティストは、一部上場企業からベンチャーや外資系など幅広い企業が採用を進めており、いわば売り手市場です。
職務内容や待遇を見て自分のやりたい仕事ができる会社を選んだり、年収アップや責任ある役職に就くなど待遇の向上も可能です。
手間と時間を掛けずとも、新しい職場を見つけることが出来るでしょう。

データサイエンティストの転職先はまさに天国!

売り手市場で高待遇を約束する会社に転職すれば、天国のような毎日を過ごせるでしょう。
自分がやりたかった業種業界における分析業務に取り組んだり、研究開発など長期的な視点で仕事に取り組めます。働く環境を見ても、満員電車で毎日出勤する必要がなくなり、フレックスタイムによる時差通勤や自宅でのリモート業務も可能になります。

また、業務時間や目先の成果に縛られず、Kaggleや論文執筆や学会への参加など、自己研鑽に使える時間も増えて費用を会社が負担してくれます。

魅力的な人材と一緒に働ける点もメリットであり、優秀なエンジニアに囲まれて刺激を受ければ日々成長を実感できますし、外国人社員が多ければ自然と語学力も上がるでしょう。何より自分の能力を活かして社会的価値の高い仕事に取り組めることは、データサイエンティストとって、嬉しいことはないでしょう。

転職が天国のイメージイラスト

年収も大幅に上がり、スタートアップならストックオプションも付与されれば、まさに転職は天国です。

転職先で見た地獄とは?

ここまで転職による「天国」を紹介しましたが、「天国」があれば「地獄」もあります。
絶望に満ち満ちたデータサイエンティスト転職の「地獄」を見てみましょう。

転職サイトや求人票で華々しい待遇を並べたところで、それが真実とは限りません。
内定後や入社直後に提示されていたのは”表向き”の内容だったと気付くでしょう。

データサイエンティストである自分が取り組む必要のない作業を押し付けられて、年収や勤務先などの待遇も求人票の内容と全く異なるのです。
一見すると高待遇ですが、年収が「400万円~1200万円」、勤務先を「本社・または都内23区常駐先」とするなど、幅をもたせた「釣り」求人票に注意しましょう。
内容が完全に虚偽とは断定できないので、入社後に後悔しても後の祭りです。

入社後に後悔する事例としては、社内でデータサイエンティストへの理解や協力体制が整備されておらず、全て自分一人で進めなければならない「孤立無援」というパターンがあります。

大企業が募集するデータサイエンティスト求人と言えど、大手だから安心とはいきません。
そもそも長い歴史や古い体質によって年功序列や前例主義を抱える組織では、「データサイエンス」という新しい概念は浸透しているとは限らないのです。

データ分析を提案しても「従来の方法がある」「自分達のやり方を否定するのか」と社内から反発が上がれば、大組織における社内調整は避けられません。
また、長年に渡って運用される複雑怪奇なデータベースにより、必要なデータが見つからなかったり、手続きで時間がかかることもあります。
このようにデータ分析以外の業務にリソースを割かざるを得ない状況に陥るのは、大企業ゆえの問題です。

では、大企業のようなしがらみがなさそうに見えるベンチャー企業ではどうでしょうか。
ここ数年で起業し急速に成長したAIベンチャーでも、注意が必要です。

ブームに便乗してAIやデータサイエンスのノウハウ無しで起業した会社は、技術力や開発を外注に依存したり、ガバナンスが機能しないためオーナー社長の横暴がまかり通ったり、目先の売上を上げるために営業組織だけだったりと、エンジニアには不幸しか呼ばない会社もあります。そんな地雷の会社は避けていきましょう。

また、新しい組織故に社内システムやデータベースを管理する人材の不在や、前任からの担当者の引継ぎができずブラックボックス化した社内システムに直面する場面もあります。

それでも動きが早いベンチャーでは、「自分の仕事だけやればいい」は通じません。
データサイエンティスト本来の業務とは異なる仕事をこなす必要もありますが、それを拒んで社内で孤立するなど、大企業とは異なる立ち回りが求められます。
会社として早急に結果を求めるが故にエンジニアの能力以上の成果を求めて、本人がプレッシャーを感じて精神的に病むことも考えられます。

また、ベンチャーの特徴としてストックオプションの付与が挙げられますが、それを目当てに入社しても株式上場できなければ意味がありません。

※参考情報:2010年から2017年で年間平均115,000社が起業しているが、マザーズに上場した会社は2019年で63社しかない。

ベンチャー界隈は毎日のようには大規模な資金調達や新製品の発表で世間を賑わせますが、数年後に買収や吸収合併されて全く別の事業を手掛けるようになった”元”ベンチャーも珍しくありません。
データサイエンティストを募集するベンチャーは数多いものの、自分が持つ本来のスキルを生かせる環境を選ぶという点では、大企業と同じく慎重に進めなければなりません。

ベンチャーと大企業で共通する点として、両社における社風の違いが挙げられます。
これはベンチャーから大企業、大企業からベンチャーのどちらの転職でも考慮すべき事情です。

ベンチャーで大企業のように根回しに時間をかけては仕事に付いていけませんし、外注費や宣伝費や研究開発費などに潤沢な予算はありません。
対して大企業ではベンチャーと異なり自分の仕事を進める上で、社内外への調整作業は必須となります。

それぞれ特徴やメリットデメリットがある以上、どちらが正解とは言えません。

転職が地獄のイメージ

いずれにせよ、本人が求めるキャリアプランから外れてしまえば、どんな転職先でも失敗となるでしょう。
タイガーマスクの後釜として高すぎる期待に応えられず、自分が活躍できる新天地を求めてSWSへ移籍したものの、その類まれなる身体能力を活かせずに引退につながったジョージ高野を思い出してしまいます。

【まとめ】データサイエンティストが行うべき転職活動とは

ここまでデータサイエンティスト転職における天国と地獄をそれぞれ見てきました。
ではどのように転職活動を進めればいいのでしょうか。
まず転職において明確な目的を決めることが重要です。
年収を上げたい、技術力やスキルを伸ばしたい、研究開発をやりたい、社会的な課題解決に取り組みたいなど、様々な目的があるでしょう。

転職は前向きな目的を実現するためのものであり、やりたい仕事ができない、人間関係が悪いなどといったネガティブな理由から逃げてばかりでは、同じことの繰り返しになります。
「こんなはずではなかった」と後悔して転職を繰り返しては、いくら転職が当たり前のIT業界でもジョブホッパーにみなされてしまいかねません。折角の経歴を汚さないようにキャリアプランには気をつけるべきでしょう。

また、このままずっとデータサイエンティスト転職の売り手市場が続くとは限りません。
以前と比較してデータサイエンティストが学ぶテキストやトレーニングなどが整備されて、学生や未経験者からでも効率的に機械学習やAIが学べるようになりました。

企業の採用方針も中途採用だけでなく、新設されたデータサイエンス学部の新卒採用や、社内で適性のある人材を育成する内製化の取り組みも始まっています。
今後はデータサイエンティスト経験者の求人状況が変わってくる可能性が大きいでしょう(本原稿執筆中に進行したコロナウイルスによる経済的な影響も含む)。

データサイエンティスト転職でやるべきこと

転職の失敗は転職で取り返せる

キャリア形成では失敗や落とし穴も避けられない以上、転職に失敗したことに気がついた段階でどうやって状況を打破できるかを考えるべきです。
あくまで転職は手段であり、将来を見越した転職や独立や起業の糧にするという風に考え方を切り替えてみてはいかがでしょう。

どんな会社でも限界や不満はあるので、様々な経験をしながら転職でしか実現できないキャリアを作りあげていくべきです。

昨今における企業側の要望として、分析業務を行うエンジニアとしての採用よりも、組織の長としてエンジニアをまとめる管理職をに担うデータサイエンティストを求める企業も増えました。
地獄の沙汰も金次第という諺があります。転職市場における価値として、自身のスキルや実績だけでなく、会社のネームバリューや担当業務なども考慮しましょう。

転職後に苦労する体験は一概に失敗とも言い切れない

しかしながら、転職後に苦労した体験や地獄のような経験も一概に失敗とは言い切れません。災い転じて福となすという諺があるように、辛い体験がのちのちの食い扶持につながることもあるのです。
顧客との折衝経験のあるデータサイエンティストが求められる職場もありますし、将来的に分析の実務経験があってマネジメントができる人材の価値が上がる可能性もありますし、会社は違えど組織で働くならベンチャーでの勤務経験が生きる場面もあります。
ただ転職に失敗したと後悔するか、将来を見越した出口戦略として経験にするかで転職後の行動も変わってくるでしょう。

安易な年収アップを目当てに転職した結果、自分が求めていない管理業務を押し付けられるかもしれません。

失うもののない未経験者はある意味無敵

未経験者からの転職でこうした失敗に遭遇する事例も見かけますが、考え方によっては違った見方もできます。データサイエンティストへの転職の成功率が低い未経験者でも、就きたい仕事につけた点で成功と言えなくもありません。

そこからスキルや経験を積み重ねて、次のキャリアアップにつなげる方法もありますし、短い期間だとしてもデータサイエンティストとして働いた経験は次のキャリアに役立つでしょう。
データサイエンティストに限らずITエンジニアが、未経験から転職でのし上がっていく事例は多々あります。

また、昨今では採用側と求職者側のリテラシーも向上しており、分析を行うデータサイエンティストやシステム開発を行うエンジニアで、職種の棲み分けも進んでいます。
そのため、過去に比べて極端な失敗事例に遭遇する可能性も低くなったと言えるでしょう。

それでも転職活動は自分事ととらえて主体的に行動してください。決して他人任せにしてはいけません。
よくある失敗談として、転職先企業の下調べや情報収集を人材紹介会社やヘッドハンティング会社のエージェントに任せっきりにしてしまうケースがあります。

担当者も業界に詳しいプロとはいえ、業界内で実際に働いた人ほどの知見はありませんし、知識や経験も個人差があります。
手間がかかる転職活動を任せたい気持ちはわかりますが、自分が転職する会社は自分で調べるべきです。
転職クチコミサイトはもちろん、社長や社員のSNSをチェックしたり、社員から直接話を聞くために勉強会や展示会といったオフラインイベントで話を聞くのもいいでしょう。

転職面接で現場エンジニア以外の人事・役員などしか話を聞けなかった場合は、特に重要です。
配属される現場と人事や経営陣の考えが必ずしも一致しているとは限りませんし、会社に対して一方的なイメージを持っていると、転職後のギャップに苦しむことになります。

まとめのまとめ

本記事のタイトルは「データサイエンティスト転職の天国と地獄」です。
「天国と地獄」といえば、黒澤明監督による同名の映画があります。
これは子供の誘拐をテーマにして、大きな工場を持つ社長という天国と、その工場を見上げて暮らす貧民街に暮らす犯人の地獄という対比でもあります。

完璧主義として知られる黒澤監督やスタッフは、映画撮影において入念な準備を行いました。
有名な電車の窓から身代金を放り投げるシーンの撮影するため、「こだま号」をチャーターして実際に走らせており、脚本執筆中から電車の設計図を調べ上げて、何度も国鉄(現在のJR)に問い合わせて不審人物扱いされるほどです。

この記事を読んでいる皆様も、データサイエンティストとして調べて分析することの重要性を重々承知しているはずです。
それは企業のデータにおいても、自身の転職活動においても同様です。
データサイエンティストたるもの、自分が働く会社も仕事と同じくらいきちんと調べて分析すれば、天国のような転職先を見つけて、地獄に落ちることを回避できるでしょう。

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