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フリーランスエンジニアの手取り収入を解説|保険料と税金、会社員との比較

IT業界で働くフリーランスエンジニアの求人は多く、会社員時代と比べ報酬単価はあがる傾向にあります。独立すると20代、30代でも高収入を得られるため、会社員からフリーランスへの転向を検討する技術者も多いのではないでしょうか。

この記事では、フリーランスエンジニアの手取り収入の計算方法、経費や社会保険・税金、年収アップのコツなど紹介します。

フリーランスエンジニアの手取りの考え方

フリーランスエンジニアという働き方では、業務委託契約や請負契約で仕事を受注します。労働者ではなく事業者の立場で仕事をするため報酬も給料ではなく売上という形であらわされます。額面上の収入である売上から経費や税金、社会保険料などを差し引いた金額がフリーランスの手取り収入です。

毎月定期的な賃金収入の見込める会社員と異なり、仕事状況により変動幅のあるフリーランスエンジニアの手取り収入は月額で考えることが難しいものです。それは税金を年額で計算することに起因します。

年間の売上から経費や保険料などを差し引いて、税率を掛けたものが税金として徴収されます。税金を他の経費と合わせて売上から差し引き、それを12で割れば月額の手取りになりますが、毎月その手取りを手にするわけではなく、結果として月額が計算できると言うだけなのです。

会社員の手取りは給与明細や源泉徴収票などからも確認しやすいです。一定の計算式や表を元に控除額を割り出し、基本給と手当の合計額から差し引けば月額手取りが計算できます。細かい差異は年末調整でコントロールするのです。一方、フリーランスの場合、固定的な金額は健康保険などと年金くらいで、あとは売上や経費によって毎月大きく変動します。

フリーランスは会社員より手取り収入が減る?

ITエンジニアは売り手市場ということもあり、フリーランスになると額面上の収入が大きく増加するケースがほとんどです。ただし、独立後の売上によっては、税金や保険料がひかれるため会社員時代の収入よりも手取りの金額が少なくなることもあり注意が必要です。

フリーランスは税金や保険料の負担が大きく、額面で同じ収入の場合には会社員エンジニアのほうが有利になっています。働き方の自由度など収入だけでフリーランスを選ぶわけではないでしょうが、独立後の単価相場や継続的な案件受注については考慮すべき要素といえるでしょう。

確定申告をおこなう際の節税対策はフリーランスのメリットになりますので、経費で計上できる費用はしっかりと手続きをおこなうとよいでしょう。

独立後に収入を下げないポイント

フリーランスで働く際に手取り収入を下げないためのポイントはふたつです。ひとつは高単価の案件を受注して、会社員時代の月給の3割増し程度の売上をキープすること、もうひとつは税金を抑えるための経費を漏らさず申告することです。

エージェント経由や紹介などで優良案件をつかんで、フリーランスの売上を伸ばそうと努力するのは当然のこととして、売上が伸びればその分税金も増えます。節税対策という点では、法人化も視野に入るでしょう。

確定申告の際には、白色申告ではなく青色申告でおこなうことで最大65万円の控除をうけることができます。青色申告をおこなう際は、税務署に事前に申請が必要なため登録手順は確認しておきましょう。

フリーランスエンジニアの手取りを計算する方法

フリーランスの手取り収入の金額は、売上から営業経費分を除き、税金関係と年金保険関係の義務的支払いを差し引いて計算します。

経費

経費は売上を生むために必要な費用です。例えば、フリーランスのプログラマーの場合だと、パソコンの購入費用や通信費、水道光熱費も経費になりますし、紙一枚からすべて経費として計算しなければいけません。

もちろんオフィスの家賃も、移動に使う自動車の購入維持費やガレージ代も全て経費になります。詳しくは後でお話しますが、在宅ワークで働くプログラマーのフリーランスでは自宅をオフィスとして使い、自家用車を仕事用に使う場合のように経費として計算できる部分があるのです。

社会保険

社会保険料としては国民健康保険と国民年金、40歳以上になると介護保険料もその中に含まれます。一方、オフィスの火災保険料や自動車保険などはこれに含まれません。会社員が給料で控除される健康保険・厚生年金と同じと思えば良いでしょう。

国民年金保険料

国民年金保険料は、フリーランスの人が該当する第1号被保険者の場合、保険料は1人あたり16,410円(令和元年度)となっていて、これは収入に左右されない固定金額です。

会社員が加入する厚生年金の場合、保険料の約半分は会社が負担してくれますが、収入に応じて保険料が上昇して行くという特徴があります。

国民健康保険料

国民健康保険の保険料は、前年度の所得に応じて金額が決定されます。所得が多ければ多いほど保険料は高くなりますが、上限は決まっていて無制限に高くなるというものではありません。

また保険料は1世帯あたりいくらと言う形で決まる平等割、被保険者1人あたりいくらという均等割、所得に連動する所得割の合計で決まりますから、所得がゼロであっても保険料がゼロになることはないのです。

介護保険料

介護保険料は40歳以上の人が加入する保険で、原則として強制加入となっているものです。保険料は健康保険料と一緒に請求されます。

税金

フリーランスの人が負担しなくてはいけない税金は4種類です。所得税と住民税は会社員でも同じで、所得に応じて支払うことになります。

所得税

所得税は所得に応じて支払う税金です。1年間の所得から、経費など税法上認められた控除額を差し引いたものを課税所得として申告し、それに税率を掛けたものが所得税額になります。所得税は2月中旬~3月中順の確定申告時期に申告を行って、同時または直後に納税します。

マイナンバーカードを持っていれば、e-taxを利用して1月から申告を行うことができますし、インターネットバンキングと連動させて納税も行えます。税務署に出向く必要がないこともあるので便利です。

住民税

住民税は都道府県民税と市町村民税のふたつを合わせたものです。これは申告の必要がなく、所得税の申告を元に地方自治体が計算して納付書を送ってきます。

年間一括納付も可能ですが、3か月毎の4分割納付もできます。税率は自治体によって異なりますが、一般的なフリーランスの人であれば10%~15%くらいまでに収まるでしょう。

個人事業税

個人事業税はビジネスを行っている人が支払う地方税です。これも申告の必要はなく、確定申告の内容に従って都道府県から納付書が送られてきます。この税金には年額290万円の事業主控除があるので、事業所得が290万円に満たない場合は課税されません。

また事業開始年度と事業廃止年度の事業主控除は月割になります。ですので、事業開始のときと廃止のときには必ず届けを出して下さい。この税金は年1回または2回の納付となっています。

消費税

消費税は年間の売上が1,000万円を超えた翌年度から課税されるようになります。消費税の申告もe-taxで簡単にできますから、売上が多くなってきたらマイナンバーカードなどを準備しておきましょう。消費税は預かり税ですので、毎月の売上の中に取引先から預かった消費税が含まれていると考えることになります。

例えば税込で1,200万円の売上があった場合、税別では約1,091万円で109万円の税金を預かっていると考えることになります(税率10%の場合)。一方、自分が仕事に必要な道具を買うのにも消費税を支払っています。税別10万円のパソコンを購入したら1万円の消費税です。その1万円は109万円の消費税から控除できます。

このため、消費税課税事業者になったら経費の計算がとても大事になります。経費も本体価格と消費税に分けて計算しなくてはなりません。計上漏れがあると、課税所得も消費税の納付額も大きくなってしまうのです。

会社員との手取りの違い

会社員とフリーランスでは手元に入ってくるお金の質が大きく変わります。会社員であれば口座に振り込まれた給料はそのまま手取り収入になりますので、一部の例外を除けば手取り収入から税金を納付する必要はありません。

一方、フリーランスの場合原稿料や士業の報酬などで事前に源泉徴収される場合を除いて、収入から税金を支払わなくてはならないのです。その分、フリーランスの手取りが少なくなるような印象を受けるでしょう。

源泉徴収の有無

会社員であれば給料から健康保険・介護保険料や厚生年金保険料が控除されています。また、所得税や住民税の特別徴収分も控除され、残った金額が差引支給額(手取り金額)として支払われるのです。

給与明細をじっくり見れば、支給額に対して控除額が結構多いとぼやきたくなるかも知れませんが、手元に入ってくるお金は控除後の金額ですのでそれを基準に生活を組み立てられます。

一方、フリーランスの場合そうした事前の控除はほとんどありません。つまり一旦自分の口座に振り込まれた金額から、そうしたお金を支払わないといけないのです。国民健康保険や国民年金は月払いなので、それほど負担ではないでしょうが、税金関係は厳しいです。

特に所得税は一括納付が原則ですから、1年分をまとめて支払うのは結構重い負担になるでしょう。住民税や個人事業税も3か月分あるいは半年分の支払いになりますので厳しく感じられるかも知れません。

社会保険料の金額

社会保険料の金額はどちらが負担ということは一概に言えません。健康保険と介護保険については、会社員の保険とフリーランスの保険のどちらもが所得連動型です。

会社員の場合は半額が会社負担ですが、フリーランスの場合の保険料も国や自治体が負担してくれている部分があるのです。一方、年金に関してはフリーランスの国民年金の保険料は固定金額なので、ある程度以上所得がある場合、会社員より負担が少なくなる可能性はあります。

しかし、配偶者分の保険料が必要ない厚生年金に比べると、国民年金は重く感じられるかも知れません。また、厚生年金は年金を受け取る時に、現役時代の所得が反映されるので多く受け取れます。

退職積立金や残業手当

フリーランスに残業手当はありません。これは会社員でも、自分の裁量で仕事の時間を決められる管理職には残業手当がつかないのと同じです。フリーランスはいわば社長ですから残業手当がもらえないのは当然です。

もちろん仕事を大きくして法人化すれば名実ともに社長になります。同時に退職金もありません。つまり、自分で退職金も準備しなくてはいけないのです。

ただ、これには小規模企業共済制度と言う便利な物があるので、上手に利用しましょう。

額面30万円での手取り額の比較

額面収入に対する手取り額の比較はよく行われますし、ここでも紹介しますが、実は本当の意味での比較と言うのはちょっと難しいのです。会社員が仕事をして給料をもらうためには、会社で様々な経費を使っています。

電気代や通信費、コピー代などもそうですが、総務や経理など、直接売上に関わらない人の人件費も含まれるのです。フリーランスの場合、そうしたものも全て自分で負担しますから負荷が大きいように見えます。

しかし、会社員の場合最初からそうしたコストを差し引いた上で基本給を決められていると考えれば、単純比較が難しいことをわかってもらえるでしょう。

会社員の場合

さて、それでも単純比較は多くの人が気になる部分でしょうから紹介します。独身30歳の会社員で各種手当込みの額面給与が30万円であった場合、社会保険関係で約4.3万円、税金関係で約1.7万円の控除があり、手取りは約24万円になります。額面のおよそ80%が手取りになる計算です。

フリーランスの場合

フリーランスで毎月40万円の売上があり、経費として10万円を必要とする場合、額面収入は30万円になります。ここでは個人事業税がかからない請負契約をしているフリーランスの人を例に取りましょう。前年度も同様の収入であった場合360万円の所得で計算することになります。

そうすると、社会保険関係で約4.5万円、税金関係で約7万円の支払いが必要になり、手取りは約18.5万円です。額面のおよそ60%強になる計算です。

フリーランスで手取りを増やすコツ

ここまでを見るとフリーランスの場合は手取りが少ないように見えますが、実際にはそうなりません。それはそもそもの額面収入を増やすことが会社員よりずっとやりやすいからなのです。

経費をもれなく計上する

まず、実際に使った経費をもれなく計上することが大切です。そして青色申告を行うことで控除を大きくすることもできますし、損失を複数年度繰り越すこともできるのです。

青色申告

青色申告はフリーランスの必須条件と言ってもいいでしょう。複式簿記で帳簿をつけることが条件ですが、会計ソフトには家計簿的な帳面から自動で複式簿記への転記を行ってくれるものもありますから、自分で勉強しながら帳簿つけをするのも良いです。

青色申告をするだけで毎年65万円が所得から控除されるので、その分税金も安くなります。さらに赤字が出てしまった年度の分を3年間繰り越せるので、次年度以降に大きな利益が出た場合には、前年度までの赤字を相殺して節税に利用することもできます。

また、家族に仕事を手伝ってもらった場合には、適正な金額を給料として支払い、それを経費計上できるのでさらに節税できるのです。

青色申告は事前に税務署に届けを出して認可を得ておかなければいけません。フリーランスとしての活動を始めたら、すぐに税務署に出向いて下さい。

家事按分

自宅を仕事場にして、オフィスの家賃や水道光熱費を節約する人も多いでしょう。その場合、自宅の家賃や水道光熱費を経費として計上することができるのです。ただし、面積や時間で按分して、仕事に使った分を割り当てるというやり方が必要です。

例えばマンションで、家賃が10万円だったとして、1日12時間は仕事をしているという場合、家賃として5万円分、水道光熱費と通信費は全体の50%を経費として計上すれば良いということになります。

控除を活用する

実際にフリーランスにとって有用な制度の中には、その制度の利用のために支払った費用が経費として認められるものがあります。そうしたものを上手に利用して税金の控除を受けるのも良い方法です。

国民年金基金

フリーランスの人が加入する国民年金は、保険料も給付金額も一定で、厚生年金のように所得に応じて保険料も給付額も大きくなると言うものではありません。

それでは老後が不安だという人のために、国民年金基金があります。これは毎月の国民年金に積み増して保険料を支払っておくことで、老後の給付金額を大きくできるものです。この制度の保険料は、支払った全額が所得から控除されるので、所得税や住民税が減らせます。

小規模企業共済

小規模企業共済制度はフリーランスの人のための退職金制度と考えれば良いでしょう。毎月1,000円から70,000円の範囲で500円刻みの掛け金を支払っておくことで、リタイアする時に退職金が受け取れるものです。

そして、掛金は全額が所得控除の対象になるため節税になりますし、受け取る時は退職所得として税制上の優遇も受けられるのです。

経営セーフティ共済

フリーランスにとって怖いのは取引先の倒産です。貸し倒れもさることながら、毎月入ってきていた収入が途絶えるのはかなり厳しいです。次の仕事を見つけるまでのつなぎ資金の手当も必要になります。

そうした時に役に立つのが経営セーフティ共済です。これに加入していると、万が一取引先が倒産した場合、それまでに支払った掛金の10倍までの金額が無担保無保証で借りられます。

この共済の掛金は全額必要経費に算入できるので節税にも役立ちますし、40か月以上契約が継続していれば、途中解約しても掛金は全額戻ってきます。

フリーランスエンジニアの売上アップ方法

節約も大事ですが、まずは売上を増やして仕事の土台を強くすることが大切です。一説によると、フリーランスエンジニアは会社員としての給料の2倍の売上を確保してはじめて会社員並みの手取りが確保できるとも言われています。

取引先の確保

売上に必要なのはしっかりした取引先です。取引先というものはそう簡単に見つかるものではありません。

一度縁があって仕事をしたのなら、クオリティの高い仕事をして、クライアントの方から長く付き合いたいと思ってもらえるようにしないといけません。

営業力の向上

仕事を得てくるには営業力が大切です。プレゼン能力や契約に繋げる能力はもちろん必要ですが、意外に重要なのはクライアントの質を見極める能力です。

残念なことに、クライアントの中には非常識なほど安い金額で仕事を押し付けてくるところも珍しくありません。それをいかに的確に見抜くかという目を養いましょう。

スキルの向上

スキルはどんなにあっても邪魔にはなりません。ひとつのジャンルを掘り下げるのも大切ですが、できれば複数のジャンルに渡ってのスキルを磨くと仕事が安定します。

動きの激しい世の中ですから、いつ取引先の業界そのものが傾いたり、方向性を変えたりするか分かりません。そんな時でも、自分の持つ複数のスキルで対応できるようにすれば心強いでしょう。

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