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AI人材は高収入?AIエンジニアの平均年収・給料事情

機械学習・ディープラーニングなどの技術を扱うAIエンジニアは、人工知能(AI)分野で将来が注目される職業です。そのうえ高給や好待遇が期待できるとなれば、ITエンジニア・プログラマーに限らずキャリアチェンジを考えている方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、AIエンジニアの市場価値と待遇について紹介するとともに、日本国内や海外でのAI人材の年収例や転職・就職での給与相場など解説します。

AIエンジニアの市場価値と待遇

テクノロジーの発展とともに注目の集まる人工知能(AI)ですが、それを専門にするエンジニアの数が足りないということが世界の技術界で喫緊の課題となっています。ITエンジニアとは異なり、統計学や機械学習、深層学習に関するスキルが必要となるAIエンジニアは絶対数が完全に不足しているようです。

さらにITエンジニアと同じようにプログラミングの知識も必要とされますから、AIエンジニアとしてのスキルを持った人は世界中から引く手あまたという状況と言っていいでしょう。そのため、待遇面で飛び抜けた好条件が提示されることも珍しくありません。

2019年現在では日本国内より海外での待遇が桁違いに良くなっています。海外で働くためには生活の基盤を海外に移す必要も出てきますが、そうした条件を勘案しても海外企業のほうが良いと考える人も少なくないようです。

一方、国内企業も待遇面での向上が見られ始めています。AIエンジニアとして活躍の場を求める人は、先行きをよく見極めるべきだと言えるでしょう。

AI人材は100万人の需要に対して70万人が不足

AIを活用してビジネスを展開して行こうと思うと、優秀な技術者が必要なのは言うまでもありません。そして、ディープラーニングやビッグデータの分析に代表される、AI関連の新しい技術を身につけた技術者はまだまだ数が足りていないのです。

2018年段階において、世界全体でAIエンジニアの必要数は100万人と言われています。それどころか、統計によっては数百万人の数字を挙げている分析もあるぐらいです。

一方、実際に活動しているAIエンジニアの数は2018年段階で30万人程度と、少なくとも70万人が不足している状況なのです。

世界規模でAI人材の獲得競争が過熱

AIエンジニアの絶対数が不足している状況において、AIの活用を考える企業の間で人材の争奪戦が行われるのは当然の結果と言えるでしょう。AI自体は今後どこまで裾野を広げて行くか測りきれない段階ですので、エンジニアが破格の待遇で迎えられることも多くなっています。

海外企業では給与だけでなく、株式によるインセンティブを与えている企業も見られるのです。一方、いわゆる基幹系のITエンジニアについてはこのように極端な例は少ないようです。

海外のAIエンジニアの平均年収

海外においてはもともと年功序列制の給与体系があまり一般的でないこともあって、技術のある人には高額な給料が支払われることも珍しくありません。そこに加えてAIエンジニアの大幅な不足という条件が重なったため、日本に比べて驚くほど高額な給料が提示されることも多いようです。

さらにアメリカのように雇用の流動性が高い国においては、システムの刷新などで高い能力を持つAIエンジニアが必要な際に、破格の待遇を提示して雇用することもあります。

そして、一連のプロジェクトが終わったらそのエンジニアは会社から去り、新たな活躍の舞台を求めて移動するということも行われるのです。

米国でAI研究者の年収は30万~50万ドル

アメリカにおいて、博士号を取得したAIエンジニアの一般的な年収は、新聞による2017年10月の調査では約30万~50万ドル(当時のレートで約3300万円~5500万円)だと報じられています。

一方、その数値はあくまで平均的なAIエンジニアのものであって、優秀な人材であれば数百万ドルの報酬が提示されるとしています。

さらに、その分野で名前を知られるぐらいのレベルの技術者であれば、数千万ドルの報酬に加えてストックオプションも手に入れていると言うことです。

シリコンバレーなどでは平均3300万円、新卒で2000万円超も

アメリカの有名経済誌の2017年の記事によると、シリコンバレーを含むエリアにおいて、AI分野に含まれる自動運転技術者などの年収平均は29.5万ドル、約3300万円だということでした。

シリコンバレーがあるカリフォルニア州の世帯年収は、中央値で6.5万ドル弱なのでAIエンジニアはその4.5倍を超える年収を得ていることになります。

それでも技術者不足は深刻なようで、新卒に対して日本円換算で2000万円を超える年収を提示している企業もあるようです。

中国のAI関連企業で働くトップ卒業生の年収

中国でもAIエンジニアの給料は高騰しています。中国の技術系求人サイト、100offer.comを見るとAI関連企業で働いている新卒のトップクラスで30万~60万人民元の年収を得ているようです。

日本円に換算すると2019年10月上旬のレートで約450万円~900万円になります。そこから3年から5年程度の経験を積んでチームリーダーになると、年収で150万人民元(約2250万円)ぐらいの収入を得ています。

中国では2014年から2018年の間でこの業界の給与水準が倍増したと言いますから、今後も伸び続ける可能性があります。

AI人材の給料・年収例

アメリカのシリコンバレーであっても、AIを扱えるエンジニアの数が少ないため、報酬の高騰は続いているようです。もちろんAIを学んだ人であれば誰でもいいというわけではありません。

基本的にはPh.D.(博士号)の取得が求められることが多く、さらに高い報酬を得るためにはAI分野での実績が求められることもあります。

報酬については中国もかなりの勢いで高騰してきていますが、やはりアメリカの勢いが目立つようです。

オラクルは600万ドル(6億円超)を提示

データベースソフトウェアで知られる、世界第3位のソフトウェア企業のオラクルは、優秀なAIエンジニアを獲得するために600万ドルという報酬を提示しました。2018年のことです。

この報酬には自社株も含まれているということですが、日本円にしておよそ6億円を大幅に超える報酬の提示はニュースにもなりました。

このケースでは特定の候補者がいたそうですが、オラクルはこの報酬の提示によってこの候補者を他社から移籍させることに成功したと報じられています。

ファーウェイは新卒に年収3000万円

携帯電話で有名な中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の、2019年新卒社員の給料に関する情報が、社員の実名入りで中国メディアに報じられました。それによると最も優秀な社員8人はいずれも博士で、年俸は最高201万人民元(約3000万円)から、最低でも89.6万人民元(約1340万円)です。

ファーウェイも技術者の離職率の高さに悩む企業の一つで、こうした好待遇で優秀な社員のつなぎとめを図っているのかも知れません。

グーグルの自動運転車開発部門のリーダーは137億円

AIエンジニアの中でも最も高額な報酬を得ているのは、AIプロジェクトを率いた経験のあるリーダーです。例えばグーグルの自動運転車開発部門のリーダーであった人が、退職時に技術を盗んだとして起訴された事件がありました。

グーグルによると、この人はグーグル在職中の約10年間に1億2000万ドル(約137億円)の報酬を手にしたそうです。年平均でも13億円以上ですから、高額報酬が普通のAI業界の中でも、突出していると言えるかも知れません。

日本のAIエンジニアの平均年収

振り返って日本のAIエンジニアの待遇を見ると、アメリカなどに比べて立ち遅れている感は否めません。それでも大手ではかなり思い切った改革が行われ始めているようです。

2019年現在AIエンジニアの待遇は、基幹系技術者のものとそれほど大きな差は見られませんが、大手企業ではかなり思い切った改善を行う動きが見られます。

今後、日本も中国やアメリカのようにAIエンジニアの待遇が大きく変化する可能性があります。

AI人材の平均年収は約651万円

2016年に日本国内の求人について行われた調査によると、AIエンジニアで約666万円、AIアナリストで約639万円となり、AI人材の平均値は約651万円であったと報告されています。

これは民間企業に勤める社会人の平均年収の1.5倍を超える高水準ですが、ここまでに見てきた海外のAIエンジニアの年収とは文字通り桁違いに低いレベルです。

これでは人材の確保が難しくなることが予想されるため、大手を中心に金額レベルでの待遇改善が進められています。

年収2000万円のAIエンジニアはいる? 年収は高い?安い?

日本である程度高額の報酬を提示しているものとして、AI研究開発エンジニアに月給125万円を提示している例がありました。

仮にボーナスが4か月分出るとしたら、年収2000万円相当と言うことになります。自動運転関連では大手部品メーカーで45歳の標準モデルとして固定給年1150万円と言う例もあります。

一般的な年収としては高額と言えますが、AIエンジニアとしてはそれほどでもないかも知れません。

給与制度の改革に乗り出す企業も

アメリカなどに優秀な人材を持っていかれるという現象が懸念されることから、給与制度の大幅な改革に乗り出している企業もあります。

基本は能力給を優先した考え方です。企業によっては新卒で1000万円以上という待遇を提示している例もあります。

日本はもともと文系優位の給与体系が強かったのですが、AIの急速な進展によって理系優位に切り替わるかも知れないと見られています。

人材の引き抜きを警戒

各企業が最も警戒しているのは人材の引き抜きです。技術系の人材についてはAI関連だけでなく、クラウドコンピューティングのエンジニアについても熾烈な採用競争が行われています。

ですから、自社で獲得しているエンジニアを他の企業に狙われないよう待遇面で引き止めを行う企業も増えているのです。

先に紹介したオラクルの例のように、欲しい人材には億単位の年収を提示してくる可能性も実際の事例として存在しているので、人材の確保は各企業にとって非常に重要な課題になっているのです。

NTTはスター研究者に年1億円

NTTはシリコンバレーに3つの研究所を設け先端研究に乗り出しますが、その発表の場で研究者の報酬はアメリカの水準に合わせると言っています。エキスパートの中でもスター級の研究者には1億円以上の報酬を出す可能性を示唆しているわけです。

もちろん、米国においては1億円程度の年収では十分ではないかも知れませんが、これまでの日本企業の報酬に対する意識を覆すものとして注目できるでしょう。

年功型からジョブ型へ

富士通では待遇を仕事の内容や役割などで決定する、ジョブ型人事制度を海外拠点で採用しています。国内では年功型の給与体系も一部に残っていますが、2019年度中には本部長クラスから給与制度の年功部分をなくして行くと発表しました。そして、2020年度以降順次拡大し、富士通本体全部に拡大する予定だということです。

新卒採用もAI人材は優遇

もちろん技術者としての実績を積んだ人材も重要ですが、新卒採用においてもAI人材は重視されていますし、待遇も他の職種より大きく優遇されています。アメリカの一部ではAI人材に学歴は求めないと言う方向性があるようです。

しかし実際に採用されて活躍している人のほとんどが修士以上であることから、能力だけで採用しても同じ結果になるので学歴を求めていないだけだという評価もあります。

日本でも大学院修了は重要な要素になっています。AI人材として新卒採用を目指す場合、できれば博士課程を修了しておくほうが良いでしょう。

ソニーは初年度の年収最高が730万円

ソニーでは大学院修了の新卒採用で、AI分野の人材を求めるために年収最高を730万円に引き上げると2019年6月に発表しています。それまでが560万円でしたので、約30%のアップになります。2019年の新入社員も大卒で2万円アップの月額25万円、大学院修了で2.5万円アップの月額28万円に7月から引き上げられました。

同時に仕事の内容や評価によって新入社員が主任クラスに抜擢される制度も始まっています。2020年度からは入社試験などの結果で、入社時から上位の等級が与えられるような制度も検討していると言うことです。

NECは研究職を対象に、1000万円を

NECでは2019年10月に人事制度が改定され、新入社員でも1000万円以上の年収が得られるようになりました。既存の優秀なエンジニアたちに対して、賃金水準の見直しが行われている可能性もあります。これはNECの著名なエンジニアの一人が、チームを引き連れて新会社を立ち上げたことがきっかけになったと言います。

新会社の立ち上げはカーブアウトと言う、NECとの関係を保ちつつ独立する方式が取られました。これによって、スタートアップではできない営業や、大企業では動きにくい事業を行えるようにしたようです。NECはこれに続く人材の確保も視野に入れて人事制度を改定したのかも知れません。

DeNA「AIスペシャリストコース」

DeNAは2017年にエンジニア職AIスペシャリストコースを設けました。同社の新卒エンジニアが年収500万円ベースであるのに対して、最低でも年収600万円、最高で1000万円と言う待遇を提示しています。もちろんそれだけ採用には厳しい条件があります。少なくとも学生時代に国際会議に論文を通していることが最低条件になるようです。

それに加えて仕事において先頭を走れるような人となりが求められると言うことです。論文発表のような具体的な条件が示されているのは、就職を目指す人にとっては分かりやすいと言えるでしょう。

AI人材になるために機械学習のスキルを習得しよう

AI人材になるためにはさまざまなスキルが必要ですが、AIに関連する「機械学習」のスキルは不可欠だと言えます。しかしながら独学で機械学習のスキルを習得するのはハードルが高いというのも事実です。

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