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機械学習エンジニア案件の単価は?フリーランス求人動向

機械学習(Machine Learning:ML)の開発需要が増加するなか、AI・人工知能の開発やシステム実装を担当する「機械学習エンジニア(MLエンジニア)」に注目が集まっています。ディープラーニング(Deep Learning:DL)を含むAI技術は、フリーエンジニア案件のなかでも先端分野として人気が続いており、まさに機械学習の仕事を探しているという方も多いのではないでしょうか。

AI・機械学習の分野でも、業務委託契約を結びプロジェクト毎に案件に参加するフリーエンジニアは多く活躍しています。そんな機械学習エンジニア求人を探す際に気になるポイントとして「案件の単価相場」や「フリーランスとして独立可能なのか」などがあげられます。

今回の記事では、機械学習エンジニア案件の求人動向と機械学習の単価相場を解説します。独立やキャリアチェンジをお考えの方向けに、案件への参画に必要なスキル、未経験から機械学習エンジニアの仕事を請けるための基礎知識についても紹介します。

機械学習エンジニアのフリーランス求人動向

機械学習エンジニアは、AI技術の発展とともに社会におけるニーズが非常に高まっている職種です。正社員もフリーランスも求人需要は年々高まっています。ただし、転職希望者の絶対数は限られており、正社員採用の難易度は高く、自社エンジニアの育成にはコストや時間がかかります。そのため、大手企業やAI開発の受託企業、スタートアップなどを中心にフリーランスの機械学習エンジニアを積極的に受け入れている状況です。

実際のフリーランス求人:機械学習エンジニアの求人・案件一覧

機械学習エンジニアのフリーランス案件で募集のある仕事内容は、機械学習を利用したプロダクトの設計・開発から、サービス改善や機能追加、ビッグデータ解析によるビジネス上の予測や推定、異常検知、チャットボットやレコメンドシステムの開発などさまざまです。そのため、さまざまな案件に携わりたいエンジニアや経験を積みたいエンジニアに向いているといえるでしょう。

機械学習やディープラーニングの案件で大規模な開発プロジェクトに参画するフリーランスも多く、プロジェクトマネジメント(PM)やコンサルタント、アーキテクトなどAI分野の上流工程に関する求人ニーズもあります。

機械学習エンジニアはプロジェクトベースで活動することから、フリーランスとして働くにはもってこいの仕事といえます。ただし、実務では高度なスキルが必要とされ、要件を満たすエンジニアは希少です。そのため、フリーランスの機械学習エンジニアの求人数は常時高い水準を維持しており、報酬水準も高めとなっているのです。

機械学習エンジニア案件の単価相場

以上で見てきたように、機械学習エンジニアは非常に市場価値の高い職種です。そのことはフリーランス求人の相場単価からも確認することが可能です。月の報酬単価は作業時間によって左右されますが、一般的な機械学習エンジニアの単価相場は、週に5日常駐して月に140から180時間勤務した場合に、60万円から80万円程度です。単価が80万円の場合、年収に換算すると1,000万円を超えてくることになるため、いかに高収入を得られる仕事であるかが分かるのではないでしょうか。

経験豊富なシニアレベルの機械学習エンジニアやプロジェクトマネージャーなどの案件では月の単価が150万円といった求人もあり、経験を経てフリーランスとして独立した場合は年収2000~3000万円を目指すことも可能です。

以下では、機械学習エンジニア案件の仕事の進め方についてみていきましょう。

機械学習のワークフロー

機械学習エンジニアとして仕事をするためには、その基本的なワークフローを理解しておく必要があります。ここでは、その各プロセスについて見ておくことにします。機械学習においてまず行うべきことは、必要なデータを準備するということです。そのうえで、予測モデルを作成し、モデルの評価を行った後に、本番環境に実装することで一連のワークフローが完了することになるのです。

以下では、この各プロセスについてもう少し詳しく見ていくことにします。

データ準備

機械学習ワークフローの最初のフェーズでは、データの探索を行いながらデータを準備します。AIで解決したい問題からどのようなデータが必要かを検討し、実際にデータを収集して分析します。自社でデータを保有している場合は、データベースなどからデータを抽出して収集します。必要に応じて第三者が提供するデータセットを利用したり、Webスクレイピングでインターネット上からデータを取得する場合もあるでしょう。

収集したデータを分析する際は、生のデータに目をとおして傾向を把握したり、グラフなどに可視化することで特徴やパターンをみつけ、アプローチの方向性を決めていきます。データの管理が行き届いていない案件では、データの収集・蓄積・加工といったAIにデータを読み込ませるまでの一連の流れについても開発の必要があります。

モデル作成

このフェーズでは、準備したデータをもとに機械学習モデルを作成します。最初に、機械学習で使用する手法や学習方法、アルゴリズムなどを決め、それにあわせてAIで解析するデータを準備します。収集したデータをAIにそのまま与えても精度を出すことは難しいため、前処理と呼ばれるデータ加工処理が必要です。

前処理では、データに含まれるエラーや異常値の排除、欠損値の補完をおこなうデータクレンジング(データクリーニング)や学習に利用するデータセットの準備をおこないます。学習しやすいようにデータを整形する処理のほか、正規化や標準化といった精度向上のために行う処理もあります。

評価

機械学習モデルが準備できたら、その評価を行うためにモデルのトレーニングを行っていきます。これはハイパーパラメーターを調節することでその最適な数値を見つけ出すというプロセスです。そのように調節されたモデルにデータを入力して得られる結果が、予め推測していたものとなるかどうかを繰り返し評価することによって、最適なモデルを作り上げていくというわけです。

最初から目標とする精度を出せることは少なく、学習データを準備しなおしたりアルゴリズムを変更するなど前のフェーズに遡って調整を行うこともよくあります。

実装

このようにして作られた最適なモデルは、最終的に本番環境に実装することによってはじめて使用可能となります。その際、主にクラウドを用いたサーバーを準備しておき、Web APIとしてモデルを呼び出せるようにしたうえでクライアントに引き渡すというやり方が一般的に行われています。

機械学習エンジニア案件の参画に必要なスキル

ここからは、フリーランスの機械学習エンジニアとして働くうえでどのような開発スキルが必要とされるのかについて見ていくことにしましょう。具体的なものとしては、プログラミング、データベース・データ基盤の知識、SQLでのデータ抽出・加工、クラウドの知識などが重要なスキルとなりますので、一つずつ順番に説明することにします。

プログラミング

まず一つ目のプログラミングというのは、コンピュータ言語を用いてプログラムコードを作成し、一定のアルゴリズムに基づいて演算ができるようなプログラムを構築することをいいます。プログラミングに使われるコンピュータ言語には、JavaやRubyなど様々なものが存在するのですが、機械学習においては特にPythonという言語を使いこなせるようになることが重要となります。

データベース・データ基盤のスキル

優秀なAIを開発するためには、AIに学ばせるデータを効率的に収集して処理するためのデータエンジニアリング力が求められます。そのため、機械学習エンジニアにはデータベース・データ基盤の設計・開発・運用の知識が必要不可欠となるのです。データベースと一言でいっても、その形式はテーブル型、階層型、ネットワーク型など様々です。

そのため、データベースに関する十分な知識を備えたうえで、それらのメリットやデメリットを的確に理解し、開発しようとしているAIに最適なデータ処理の仕組みを作り上げることが機械学習エンジニアには求められるというわけです。

SQLでのデータ抽出・加工

SQLというのはデータベース言語の一つで、その規格は国際標準化機構(ISO)によって標準化されています。前述したとおり機械学習エンジニアにとってデータ処理の力は必須のため、SQLは必須のスキルです。大規模データを扱った経験を身に着けておけば、さまざまなシーンで活躍することができるようになります。

また、AI開発にはデータ基盤が不可欠であるため、NoSQLなどのデータベースを使いこなして、適切にデータを抽出したり、加工できるようになっておくことは機械学習エンジニアにとって必須であると言っても過言ではありません。

クラウド・インフラのスキル

機械学習を行うためには、ビッグデータの解析が不可欠であり、そのような大量のデータを処理するためにAWSやGCPなどクラウド基盤を活用する案件も増えています。クラウド上でのデータ処理や分散処理、仮想化技術などクラウドコンピューティングサービスを使いこなせるようになっておくことが必要です。

案件によってはオンプレミスのサーバー上で機械学習の環境を構築することもあるため、GPUでの構成なども習得しておくとよいでしょう。

未経験で機械学習エンジニアになることはできる?

全くの未経験でIT関連の知識・技術のない人が機械学習エンジニアになるのは難しいです。クライアントとなる企業が求めているのは、即戦力として仕事を受注してくれるエンジニアとなっています。案件の内容によっては、経験の浅いエンジニアが受注できるものもありますが、機械学習に関する最低限の知識・技術は求められます。

ただし、これまでAI以外の分野であってもエンジニアとして活躍してきた経験があれば、仕事を受注できる可能性はあります。分野は違ったとしても、システム開発スキルを習得したエンジニアが機械学習の仕事を受注してきたケースは少なくありません。

また、IT関連の開発経験が半年以上ある人を対象としたスクールもあります。このようなスクールでは、機械学習の実務が未経験でも専門知識・技術を教えてくれるほか、将来的にはフリーランスエンジニアとして仕事を受注できるレベルになることも可能です。

35歳以下のプログラミング経験者には、機械学習・ディープラーニング講座が全額無料で受講できる「AIジョブカレPRO」もおすすめです。

機械学習エンジニアに必要な知識

では次に、機械学習エンジニアとしての案件に参画するためにはどういった知識が必要とされるのかについても見ておくことにしましょう。特に重要となってくるのは、数学や統計、機械学習およびディープラーニングについての知識となりますので、それぞれがどういったものであるかについて以降で触れておくことにします。

数学や統計の知識

機械学習に用いられるアルゴリズムは、確率を基にして構築されているテクノロジーです。そのため、確率の基礎となる数学や統計学といった学問の知識は、機械学習についてのプログラミングなどを行うエンジニアにとっては必要不可欠のものであると言えます。大学の高等数学で習うような高度な知識までは必須ではありませんが、機械学習エンジニアとして仕事をしたいのであれば、少なくとも高校の理系数学で学習する程度の知識は頭に入れておいた方がよいでしょう。

機械学習の知識

数学や統計学の知識と並んで、解析に関する知識も身に着けておく必要があります。膨大なデータ群を解析することによって、一定の法則性を見つけ出すというのが機械学習の基本的な作業となるため、データのパターンや精度などを解析することができるスキルがないと機械学習エンジニアとして大成することは難しいのです。

ディープラーニングの知識

さらにディープラーニングについての知識もエンジニアには必要です。ここでディープラーニングというのは、ニュートラルネットワークと呼ばれる回線を使って、自動で人工頭脳にデータを分析させたり、学習させたりすることをいいます。これを使いこなすことができないと、参画できる案件の幅が狭まってしまいます。

環境構築

機械学習に従事するためには環境構築についてのスキルを習得することも必要となります。もっともよく用いられるコンピュータ言語であるPythonを使った機械学習に適した環境はJupyter NotebookとAnacondaですので、ここではこの二つについて説明することにします。

Jupyter Notebook

まず一つ目のJupyter Notebookというのは、プログラムを実行して得られた結果を記録しつつプログラミングを行うことができるツールで、ブラウザ上で実行することができるようになっています。データの分析や、研究開発を行う専門機関などで用いられることの多い環境です。

Anaconda

二つ目のAnacondaというのは、Pythonのパッケージで、Pythonの本体と、Pythonにおいて頻繁に用いられるライブラリがセットになっているものです。これをインストールすることによって、本体に加えてライブラリについても同時にインストールすることができるため、簡単なプロセスで環境を構築することができるようになります。

機械学習の案件で利用するライブラリ

機械学習においてはライブラリが必須となりますが、良く用いられるライブラリにはどういったものがあるのでしょうか。

scikit-learn

まず一つ目のライブラリは、scikit-learnです。これは、Pythonの機械学習ライブラリで、オープンソースとして公開されているため、誰でも無料で使うことが可能です。多数の機械学習用のアルゴリズムが搭載されており、シンプルなコーディングによってそれらを利用することができるため、インストールするだけで簡単に機械学習を始めることができるようになります。そのため、機械学習の初心者にとっても使いやすいライブラリであるということができるでしょう。

TensorFlow

二つ目のTensorFlowも、scikit-learnと同じくオープンソースとして公開されていますが、こちらはGoogleが開発したライブラリとなっています。機械学習だけでなく、数値解析やディープラーニングにも対応していることから、使い勝手がよいのが特徴です。また、データフローグラフを用いたライブラリであることから、複雑なネットワークであってもシンプルに記述することが可能となっています。

Chainer

三つ目のChainerは、日本のスタートアップ企業であるPreferred Networks(PFN、プリファードネットワークス)が主体となり開発を進めているライブラリです。柔軟性、直感的、高機能という3項目を特徴として掲げており、Pythonを用いた柔軟な記述によって学習させることができるようになっています。

機械学習エンジニア案件の今後の動向

最後に、AI(人工知能)は将来的には社会のあらゆる場面で用いられるようになる可能性を秘めた、高度なテクノロジーの一つです。そのため、それを使いこなすことができる機械学習エンジニアを必要とする案件やプロジェクトは、今後も増えることはあっても減ることはまずないでしょう。そのため、機械学習を利用した開発に携わるエンジニアのキャリアを形成しておけば、将来的にも食い扶持に困ることはないはずです。

キャリアの方向性としては、ディープラーニング(Deep Learning)技術が利用される案件が増えてきているため、画像処理や音声処理、自然言語処理など特定分野の経験を積み専門性を高めていくことや、機械学習を実装するシステム開発のプロジェクトマネージャーやコンサルタントなど上流工程を手掛けていくことなどが考えられます。

AI分野はテクノロジーの進歩や技術の移り変わりが早い領域のため、最新動向の把握や技術的なトレンドを読み取ることも重要です。その点でフリーランスであってもスキルアップや実績作りは重要といえるでしょう。

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