K.M氏

数学の博士課程からフリーランスAIエンジニアへ。 「意思決定の余白」を残す自由な働き方

Profile
  • Name / K.M
  • Job / AIエンジニア

大学院で数学(統計学)の博士課程を専攻。その後、学習塾の立ち上げ・講師(個人事業主・法人)を経て、フリーランスのAIエンジニアへ転身。

C++やPythonを軸に、TensorFlowやPyTorchによるNW構築、画像・音声解析、アルゴリズム構築が得意。BERTでのイベント名分類やMobileNetV3による服装分類の実装経験に加え、画像領域分割、スペクトルデータ成分分離、株価予測など、数理的アプローチを要する高難度課題で豊富な実績があり、エージェントを介して参画したプロジェクトを長期にわたり支援し続けています。

フリーランスを始めたきっかけ

フリーランスとしてどのような業務に従事されていますか?

フリーランスとしては、約8年間で30件以上、企業からのAI・機械学習関連の受託開発に従事してきました。画像処理・時系列データ処理・自然言語処理などを扱い、文献調査からモデル実装・学習・精度検証、システムへの組み込みまで一貫して担当することが多いです。現在も製造業・小売業向けに、画像認識やLLM・AIエージェントを活用したシステム開発に携わっています。

AIエンジニアとしてのお仕事を始められたのはいつ頃ですか?

大学院の博士課程が終わる26〜27歳頃です。当時は知人の紹介メインで案件を受けていました。

卒業時は一度アカデミアを離れ、個人事業主として塾講師を始めたのですが、そこからいくつかの失敗を経て最終的にフリーランスエンジニアへ本格シフトしました。

その「いくつかの失敗」について、具体的に教えていただけますか?

最初の友人周り(研究室の同期など5人ほど)の数学塾は、法人格を持たない形で運営していましたが、講師報酬の扱いや費用負担が特定のメンバーに偏り、対立が生じて続けられなくなりました。その勢いで法人化して独立した学習塾も、単価設定の低さと家賃・人件費といった固定費の重さから十分な粗利を確保できず、約2年で撤退しました。

撤退の判断にはかなり迷いがありましたが、この経験を通じてキャッシュ管理や粗利構造への理解が深まり、現在のエンジニア業務にもつながっています。

フリーランスとして独立するというのは、周囲(アカデミア)では一般的なのでしょうか。

博士課程にいる人は、非常勤講師などの大学周りの仕事(副業)をしていることが多いので、いわゆる一般の副業をやっている人はあまりいません。

そもそも学位(博士号)を取るのが簡単ではなく、論文が査読を通るか(アクセプトされるか)どうかは運の要素もありますし、精神的にも金銭的にも厳しい環境に置かれがちです。結局、博士課程に入った人の半分くらいは途中で出て就職したり、学校の先生になったりします。

社会人経験がない状態から個人事業主として案件を取って稼働するのはハードルが高いと思われがちですが、研究自体がスケジュールを組んで進めるプロジェクトのようなものなので、それができる人であればフリーランスとしてもやっていけると思います。

体力に合わせた「距離感」と「余白」のコントロール

正社員とフリーランスの働き方の違いについて、どう考えていますか?

まず大前提として、私はとにかく体力がないので、多分週5日フルタイムで働くことが物理的にできないんです。そのため、そうした枠にはまれない場合は、外に出てフリーランスとしてやるしかないなという感覚です。

フリーランスは、責任や実際の扱いとしてもプロパー(正社員)の方に比べて「軽い」という側面がありますが、それが自分の立ち位置として合うかどうかがポイントだと思います。

もちろん、会社組織になっている方が、事務、経費、法務の手続きなどの面であらゆる効率が良いですし、フリーランスは自分を守るために契約書の雑務などもすべて自分でやらなければいけないという大変さはあります。

雑務も自分でやるとなると、かえって大変なようにも思えますが……?

スケジュールのコントロール次第ですね。例えば週に2日だけ案件で埋めておいて、残りの週2日は休みにしたり事務作業に使ったり、それともさらに案件を入れてお金を稼ぐのかを、自分で選べる「余白」として取っておくんです。1年間ずっと週5日で回し続けることは私にはできないので、このようにフレキシブルに稼働を組むことで回しています。

フリーランスの「自由」とはどういうものだと思いますか?

一言で言えば、「距離をとっておけること」です。組織の中に入ると色々と距離が詰まってきて、「やらなきゃいけないこと」が出てきます。それができなければ異動か辞めるかという話になってしまいますが、適切な距離を取っていれば、自分の意志でやめる(距離を置く)ことができます。そうした「意思決定をする余白を残すための自由」が自分にとっての自由ですね。

エージェントの活用のメリット

エージェントを活用する一番のメリットはどこにあると感じますか?

まず、「営業」が嫌いな人は多いと思いますし、素人がやってうまくいくものでもありません。そこを代行してもらえるのはかなり大きいです。

また、個人が一般の企業(大企業など)と直接契約を結ぶのは、与信の問題などもあり厳しいと思います。そうした本来はお付き合いできないような企業から案件を持ってきてもらい、自分の理想の業務部分にしっかり集中できる環境を作れることが大きなメリットだと思います。

エージェントを登録・選定するにあたって、どのような点を意識されましたか?

当時はネット検索で引っかかったところから3社ほど登録したのですが、まず「ちゃんと動いていること」ですね。登録フォームを埋めて申請したのに連絡が来ないようなところもある中で、御社はちゃんと動いている安心感がありました。

あとは「独自性」です。AIやデータサイエンスをメインに扱われているという点で、登録させていただきました。

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技術のキャッチアップと実務でのAI活用法

普段、生成AIをどのように活用されていますか?

「どのくらい使って、どういう形で利用します」という取り決めはコミュニケーションを取った上で使っています。

機密情報などを出さないレベルに抽象化して、こういう問題を抱えているという内容を投げ、アイデア出しをさせます。それをもとに設計まで進め、その設計をコーディングツールに持って行って実際にプログラムを作らせてから、お客さんのデータが絡む残りのコアな部分は自分で組んで仕上げるという形を取っています。

技術力のアップデートやキャッチアップはどのように行っていますか?

どちらかというと「アカデミアとの繋がり」から入ってくることが多いです。研究集会に参加すると面白そうなアイデアが出ていたりします。

正直、研究集会で話を聞いた程度ではよく分からないので、そこで出てきたフレーズを持って帰り、生成AIに「こういうフレーズのこういう発表があったが、どういう意味か?」と問いかけると、それっぽい回答が返ってくるので、それをもとに自分で調べる自学習の形を取ることが多いです。

これからフリーランスを目指す方や、若手研究者の方々へアドバイス

フリーランスを目指す方にお伝えしたいのは、「キャッシュ管理」と「粗利構造の理解」を早めに持っておくことの大切さです。そしてビジネスにおいて「撤退判断」は、感情も絡むため理屈通りにはいかないものです。だからこそ、撤退についての自分なりの判断基準や目安をあらかじめ持っておくことをおすすめします。

また、アカデミアに残るか迷っている若手研究者の方の気持ちは、私自身も通ってきた道なのでよく分かります。ただ、結果としてアカデミアに残れなかった・残らなかったとしても、それがすべてであり、最終的に「それぞれあるべきところに落ち着くものだ」と感じています。

研究者として培った「抽象的に物事を考える力」は、エンジニア業務において「要件と実装がうまく噛み合わない場面で、仕様側を適切に調整・再定義する」といった判断にとても活きています。研究で得た思考の体力は、フリーランスのエンジニアとしても直接役立つ大きな武器になります。

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