S.A氏

「研究」と「開発」の融合で描く、AIキャリアの最前線

Profile
  • Name / S.A
  • Job / データサイエンティスト

AIリサーチエンジニア / 慶應義塾大学 特任助教。アメリカ生まれ。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を卒業後、東京工業大学にて修士、東京大学で博士号を取得。最先端のエレクトロニクス技術と世界的コンテンツを掛け合わせる、国内屈指の大手企業にてリサーチャー兼エンジニアとして5年間、画像認識や自然言語処理のディープラーニング研究開発に従事。現在は大学での研究と並行し、フリーランスとして企業の技術アドバイザリーや開発を牽引しています。

フリーランス・副業を始めたきっかけ

学生時代から、機械学習やAIといった領域を専門にされていたのでしょうか?

学部時代はコンピューターサイエンス全般を広く学びました。大学で研究室を選ぶ際、ディープラーニングのブーム前でしたが、自然言語処理、画像認識、ロボット工学に興味があり、その分野を選びました。結果的に、その後大きく発展した領域となったので、非常に幸運だったと感じています。

再び大学(アカデミア)のポストへ転身された理由は何でしょうか?

博士号(Ph.D.)を取得後、国内大手のグローバルテクノロジー企業に入社しました。そこを選んだのは、多岐にわたる製品開発に加え、特にロボットやAIの研究開発が活発で、自身の興味と合致すると感じたからです。その企業では約5年間、リサーチャー兼エンジニアとして勤務しました。主な業務としては、独自の新作ライブラリの開発や、アニメキャラクターの口の動き(口パク)を音声に合わせて自動生成するディープラーニングの研究開発などに従事しました。

そこでの仕事は刺激的で、潤沢なリソースがある恵まれた環境でした。しかし、企業の研究開発は、どうしても製品への貢献や短期的なビジネス成果に直結するテーマが中心になりがちです。もちろんそれも素晴らしいことですが、私はそれ以上に「技術の本質的な探求」や「より長期的な視点でのリサーチ」に深く時間を費やしたいという強い思いがありました。

アカデミアは、その自由度の高さが魅力です。まだ誰も答えを見つけていない未知の領域に、臆することなく挑戦できる環境です。この「自由な研究環境」を求め、私は転身を決意しました。

フリーランスを始めたきっかけを教えてください。

フリーランスを始めた大きな要因の一つは、特任助教という役職に就いたことで、時間の融通が利くようになったことです。以前のような会社員という立場では、ここまでの柔軟な働き方を実現するのは難しかったのではないかと感じています。

研究室にこもっているだけでは、「理論が実世界でどう求められ、どう実用化されるか」が見えにくくなってしまいます。フリーランスとして実際に企業の開発案件に飛び込むことで、研究内容が補完され、現場を知ることでさらに研究が強化される。そういう「いいループ」を作りたいというイメージがありました。

実際、最近私が研究していた「LLM(大規模言語モデル)のペルソナ」に関する知見が、たまたま企業の現場でも求められていたため、すぐに実務で実践することができました。また、そこで得られた現場ならではのノウハウを、今度は研究へとフィードバックできている実感もあります。

こうして企業の方々と直接ディスカッションしながら仕事をする機会を持つことは、研究者にとっても非常に重要だと感じています。

フリーランスへの不安〜市場の変化 

フリーランスという働き方に踏み出す際、不安や懸念はなかったですか? 

もちろんありました。「仕事を2つやることで、大変さが単に2倍になるだけじゃないか」という懸念はありました。それに加えて、やはり「怪しいところに繋がるのではないか」「頑張っても経歴として認められないのではないか」「3ヶ月ごとの更新というリスク」といった懸念点もありました。

ただ、それらについては、今は改善されてきているという実感があります。日本でも転職が当たり前になってきていることから、フリーランスという働き方に対するチャンスも(制度も)整ってきているように感じます。また、特任助教は有期雇用なので、もし続けられなくなったとしても、フリーランスとして案件を続けていくことで次のキャリアに繋げられると思っています。

当社(Big Data Navi)を選んでいただいた理由は何でしょうか。 

「怪しいところに繋がるのではないか」という不安があったので「信頼できる企業経由」で繋がりたいという思いが強かったです。御社は上場グループの一員でしたし、多くの企業さんとの繋がりもあったので、「ここなら変なことにはならないだろう、大丈夫だろう」と考えました。

実際、自分一人の力ではなかなか繋がることができないような素晴らしい企業さんとマッチングしていただけて、とても満足しています。

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LLM時代の生存戦略

生成AI(生成系AI)の進化について、専門家としてどう捉えていますか?

以前は、文章の細部やプログラムの断片を書かせるなど、部分的な代行が主な使い方でした。しかし最近は、活用の幅が広がってきていて、例えば、自分が何か見落としている情報がないか、より広い視野で調査させ、新たな情報を得るツールとして、情報の網羅性を確認するために使うことが増えました。

実は、私も10個近くのLLMを併用しています。これほど多くの選択肢があると、一つのモデルで期待する結果が得られなくても、他のモデルで試行できる点が非常に健全だと考えています。特定のモデルに依存せず、常に最適なものを選択できるからです。

リサーチワークでは、コードから制御する「システムプロンプト」をバックエンドで活用していますが、通常の対話型で使う際は、皆さんが行っているように、プロンプトを工夫して求める回答に絞り込んでいくという地道な作業も行っています。

今後のAI開発の潮流についてはどう予測されていますか?

巨大なLLMを天文学的な予算と計算資源で構築するのは、GoogleやOpenAIのような大企業の役割だと考えています。個人のリサーチエンジニアとしての焦点は、既存の強力なモデルを活用し、自分自身や目の前の「特定のタスク」に合わせていかにカスタマイズできるか、という点に移っています。

個人や小規模チームが、予算と計算環境の制約内で、いかに独自の特化型モデルを実現するか。この「カスタマイズ」こそが、今後の重要なトレンドになると確信しています。

技術革新が激しいAI領域において、今後どのようなスキルが重要になるとお考えですか。

細かいコーディング自体は生成AI(LLM)に任せられる時代になりました。私自身も、用途に応じて10種類以上のLLMを使い分けながら、常に実験的にプロダクト開発に活かしています。

だからこそ、これからは「いかに全体像を俯瞰するか」「自分から何を提案できるか」というサーベイ能力と構想力が重要になると考えています。

これからフリーランスを目指す方や、若手研究者の方々へアドバイス

米国や韓国に比べて、日本はまだAI分野での「トップ」が決まりきっていない、チャンスの多い市場だと感じています。

フリーランスは、正社員よりも報酬面でメリットがあることが多いですし、何より実用的な技術を磨く絶好の機会です。視野を狭めず、フリーランスを含めた多様な選択肢を検討し、自分のキャリアをカスタマイズしてほしいと思います。

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